大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

 

今作は、こちらの続編となっています↓

 

オメガバース設定という

独特な世界観のお話になっているので

上記のお話から読んで頂いた方がいいかもです♡

 

ちなみに、今回も

平井大「MIRROR MIRROR」が

イメージソングになります♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







和也side



「ね…。」

「ん?」

「今日は…なに描くの?」

「んー…和也にはさ、何に見える?」





とある昼下がり。



いつものように
大野さんのアトリエで。

大野さんの隣りに座って。



いつものように。
ゆったりと。

真っ白なパレットに筆を躍らせ
カラフルな世界を創り出していく
大野さんだけの世界を、二人で眺める。





「んー…風?(笑)」

「へぇ…それおもしれぇな。」

「え、違うの?(汗)」

「絵に違うとか合ってるとか

そんなんねぇよ。」





和也が
そう見えたらね。

それはもう。
それが当たりになんの。





いつだって。なんだって。
俺がどんな答えを返したって。

智はいつも
そう返事して。

鼻歌交じりで
俺の答えを、受け止めてくれる。





「んー…風だったらさ。
なんかもちっと、いろんな色欲しいな。」


「え…風なのに?」

「だってさ、風っつったって。
いろんな強さの風があんじゃん?」


「……………」

「きっと、風もさ。
それぞれ、みんな名前があって。
”俺はこうだー!”…って、言ってる気ぃするんだよね。」






あの日から。
少しだけ、月日が流れ。



今では、すっかり。
俺の日常の中に。

暇な時は、大野さんのアトリエで
大野さんが没頭して描いている絵を
隣りで眺めるという習慣が、加わっている。





何色も色を混ぜて
深みのある色を創り出していく
魔法みたいなパレット。

アリより小さいんじゃないかって思うくらい
細かな模様を生み出していくペン先。

何もかもが
絵画の世界に触れたことのない俺には
とても新鮮で。

毎日、毎日。
大野さんの隣りに座って。

大野さんが創り出す
色鮮やかな世界に没頭する。





「……大野さんって
ホントに絵が好きなんだ。」


「………え、なんで。」

「だって、絵を描いてる時だけは真剣で
しっかり目が覚めてるし(笑)」


「うっせぇな(笑)」

「それに、目の奥が“楽しい”って
キラキラ光ってるじゃん?」


「……………」

「ホントに、絵が好きだから。
こんなに豊かな世界を作り出せるんだな、って。
大野さん見てればさ、よく分かる。」


「…………初めて、言われた。」

「……ぇ?」

「“好きだから”描けるんだって…。
初めて、言われた。」


「………え、違った?」

「………うんにゃ。
そう。俺、好きだから描いてんの。」


「…………………」

「“才能があるから”……じゃなくてさ。」

「…………………」

「“好き”だから…描いてんの。」





少年みたいに。
キラキラ目を輝かせて。

嬉しそうに、ふにゃ…っと目尻を下げて
柔らかく笑う大野さんに。



今日もまた、胸の奥底で。

”好き”の気持ちが
ひぃひぃと、甘く高鳴る。





「今日は…さ。
ちっとだけ、さみぃな。」


「ん…そう?
部屋から上着持ってこよっか?」


「…んん。いい。」





こうしたらさ
ちょうどいいから。



そう言って。
そ…っと、重ねられる手に。

心臓がバクバクして。
なぜか、涙が零れそうになって。



苦しくなる胸を
ん…っと息を止めて、誤魔化す。





「大野さ〜ん、和也さ〜ん、
風磨がおやつにって、ケーキ買ってきましたぁ♪」






駆け足気味の足音と一緒に。

廊下の方から
最近、新たに入った三人の使用人の一人である
やまの声が聞こえてきて。

二人で顔を見合わせて
ふふ…って笑った。





「……あいつ。
おやつ買ってきすぎじゃね?(笑)」


「絶対、今日も
ゆっちに怒られてるよね(笑)」


「ほんっとアイツ、めげねぇよな(笑)」

「でもさ。
大野さんは結構、嬉しいでしょ(笑)」


「バレてたか(笑)」





じゃ、行くか…って。

重ねられていた手を
ぎゅっと握って。

立ち上がるのを助けてくれる
その大きな手に、甘えた。