大宮妄想小説、BLです。

ご理解のある方のみ、どうぞ。

苦手な方、不快に感じる方はご遠慮下さい。

 

 

 




↓第一話は、こちら♪


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

智side

 

 

 

「お釣りあげるんで

俺とデートしてくださいっ!」

 

 

 

 

 

これまでの、25年余りの人生。

 

本気で好きな人なんて

特にいなかった俺が。

 

咄嗟の勢いで発した

一世一代の口説き文句は。

 

黒歴史の1ページに入れてもいいくらい

何ともしょうもないもんだった。

 

 

 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「……あの、それって。

200円で、デートしようってことですか?」

 

 

 

 

 

少しの沈黙の後。

 

キャラメル色の綺麗な瞳に

俺を映したまんま。

 

まん丸の手のひらに

200円のお釣りを乗せて

返ってきた返事で、ようやく気付く。

 

 

 

 

 

俺、今。

 

トンデモナク馬鹿なことを

言ってねーか。

 

 

 

 

 

「………………え、」

 

 

 

 

 

………やべ。

 

やっちゃった。

 

 

 

 

 

「あ…じゃなくて…えっと…」

 

 

 

 

 

あぁ、俺のバカ。

 

なんでよりにもよって

今日お札出さなかったんだよ。

 

 

 

 

 

って、いや違うバカか俺そうじゃねーだろそういう問題じゃねーだろ。

 

 

 

 

 

「いや…今のは…咄嗟に…っていうか…

じゃなくて…えっと…」

 

 

 

 

 

しでかした失態に

脳内が大パニックなせいで。

 

まともな思考も、言葉も浮かばない。

 

 

 

 

 

「………ぇ………っと………」

 

「…………………」

 

「…………………すんません。

いや…なんもないです…」

 

 

 

 

 

サイアクだ。

 

サイアクもサイアク。

人生の終わりだ。

 

失礼極まりない言葉を吐いた上に

いたたまれなくなって、逃げるとか。

 

どんだけかっこわりーんだよ。

 

 

 

 

 

……こんなことなら。

 

 

 

せめて、今日の前髪。

 

やっぱり。

ちゃんと褒めときゃ良かった。

 

 

 

 

 

尻尾を巻いて逃げるように。

 

肩を竦め、小さくなって

くるりと後ろを振り向き、急いで店から出ようとしたら。

 

 

 

ま、待って下さい!と。

慌てふためいた声に、引き留められた。

 

 

 

 

 

「いや…200円で…っていうのは…

ちょっと…俺も…あの…

イマイチ……飲み込めなかったからで……」

 

 

 

 

 

そりゃそうだ。

金払うからデートしようなんて。

 

そりゃあ引くわ。ドン引きだわ。

 

 

 

 

 

「大丈夫なんで…忘れて下さい。」

 

「……あ、いや……じゃなくて……」

 

「ほんと…すみませ「…い、行きましょう!!!」

 

 

 

 

 

…………………へ?

 

 

 

 

 

「……いま、なんて?」

 

「で、デート……行きましょう///」

 

 

 

 

 

いつもなら

ホワイトチョコレートの何十倍も

真っ白なはずの頬が。

 

なんだか。

桃色に染まってるように見えて。

 

 

 

思わずドキ…っと。

 

胸が、甘く高鳴る。

 

 

 

 

「デート…連れてって下さい///」

 

 

 

 

 

……これは、夢か?

 

 

 

 

 

それとも、あれか?

幻覚か?いや、それとも幻聴になんのか?

 

いや実はこれは夢で

もう少ししたら、目が覚めたりして。

 

 

 

 

 

試しに、指で自分の頬を

ぎゅうぎゅう、つねってみる。

 

 

 

 

 

痛い。めっちゃ痛い。

 

 

 

 

 

「…あの、でも。

後から”やっぱり”…って。

取り消しとか交換とか…不可ですけど///

それでも…いいですか?///」

 

 

 

 

 

照れ隠しみたいに。

 

俺の大好きな

キャラメル色の瞳を、少し伏せて

小さく言われた一言に。

 

 

 

壊れた機械みたいに。

何十回も。

 

バカみたいにひたすら、首を縦に振り続けた。