本日、参議院外交防衛委員会で質問に立ち、次の諸項目について質問・議論した。
<日航123便墜落事故に関するフェイク情報>
青山透子氏の著作「日航123便墜落事件 隠された遺体」、「日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る」等、河出書房新社から出された7冊の書籍は、当該事故は海上自衛隊のミサイル発射訓練とそれに対する123便機長(海上自衛隊出身)の協力が原因であり、自衛隊はその証拠隠滅を図ったとの憶測に基づいて書かれている。
問題点は次の通り。
①これらの書籍がノンフィクション作品とされていること
②本屋大賞ノンフィクション部門の最終選考に残るほど売れており、その内容がYou Tubeを通じて現在も拡散し続けていること
以上の点を踏まえ、次の質問をした。
質問1
事故原因の調査を担当した国土交通省と加害者とされている防衛省・自衛隊の見解は?
当該書籍の内容が事実と異なるのであれば、防衛省・自衛隊、そして123便機長への侮辱や名誉棄損にあたるのではないか?
答弁1
①事故原因は、修理ミスによる機体後部圧力隔壁の損傷である。(国土交通副大臣)
②自衛隊の事故原因への関与等は断じて無い。自衛隊の名誉を守るには、明確な否定と正確な情報の発信が非常に重要(防衛大臣)
質問2
当該書籍の影響を受けたと思われる慰霊碑が御巣鷹山に建立され、その碑文には「自衛隊とN総理に意図的に殺害された乗客」、「加害者はN総理と自衛隊幕僚長」と書かれている。この様な状況を放置して良いのか?
答弁2
碑文の内容は全くの事実無根であり、大変遺憾。自衛隊を貶める言説の流布を防ぐには、明確な否定と正確な情報の発信が重要。この様な情報は「偽情報」である。(防衛大臣)
質問3
現在の状況は、もはや発言だけでは収拾できない。国民からの信頼無くして自衛隊は動けない。
問題の慰霊碑の建立者に直接意見するなど、実際の行動が必要ではないか?
答弁3
佐藤議員の指摘を踏まえ、今後しっかり対応していく。(防衛大臣)
質問4
当該書籍が全国学校図書館協議会という公益社団法人の推薦図書に選ばれている。選定要領に杜撰さは無いのか?
子供達が当該書籍の内容をあたかも事実としてそのまま受け入れてしまう可能性があるが、是正すべきではないのか?
答弁4
文部科学省としては、個別具体的に選定に関与してはいないが、学校図書は児童生徒の健全な教養の育成に資する必要があると考えている。文部科学省は当該団体を所管していないが、佐藤議員の懸念事項について、防衛省の動向を踏まえながら、当該団体に伝えていく。
(文部科学副大臣)
<災害派遣された自衛隊車両の有料道路使用要領について>
災害派遣で出動した自衛隊車両は、関連書類を1台につき1部ずつ、高速道路出口の一般レーンで料金所係員に提出しなければならない。
緊急事態なのに、書類の準備にも、インターチェンジの通過にも時間がかかり過ぎるうえ、DXのご時世ながらETCレーンやスマート・インターチェンジを利用できない。
場合によっては、使用実績を道路管理会社に提出する必要があり、そのために控えを取って置かねばならない。
質問1
防衛出動時にも、自衛隊車両は同じ要領を求められる。是正の必要があるのではないか?
とくに、国土交通省がリードして是正すべきではないか?
答弁1
①不都合な要領であり、円滑・迅速なインターチェンジの通過のために効率化を関係省庁に要望していく。(防衛大臣)
②佐藤議員の指摘の通り。国土交通省として、改善にしっかり取り組んでいく。(国土交通副大臣)
警察や消防の車両も自衛隊と同様の要領である。国民の命を守るために、是非とも改善していただきたい。
<国公立大に在籍する外国人副学長および中国国家留学基金管理委員会(CSC)奨学金制度の留学生について>
質問1
国公立大の外国人副学長の人数は?
答弁1
国立大12名、公立大3名(令和6年5月1日現在)であるが、国籍等の詳細な経歴については網羅的に把握していない。(文部科学副大臣)
質問2
中国の国家情報法や国防動員法は日本国内在住の中国国民にも適用される。また、中国籍の副学長の中には、中国国防7校出身者、人民解放軍関係者との共同研究者、さらには中国の地方政府関係機関・大学との兼職者もいる。
中国籍の研究者による技術流出を法務省や文部科学省で防ぐことは可能か?
答弁2
外国人の違法行為について外部からの情報提供等があれば、要注意外国人リストに掲載する等して対応している。(法務省)
技術流出の可能性について、佐藤は以前から問題にしているが、いまだに大学や研究機関の自主性に任せるしかないというのが現状である。
質問3
CSC奨学金制度の留学生の中でも、「国家建設高水平大学公派研究生項目」(博士号取得が目的)で国公立大学が受け入れている人数は?
答弁3
文部科学省として網羅的に把握してはいない。なお、留学生に対する技術情報の提供については、学内審査を厳重にしている。(文部科学省)
CSC奨学金制度の留学生には、帰国後に特定分野の研究に従事する義務や留学中の研究内容の定期報告義務が課されるなど、技術流出について怪しい部分がある。
また、国立大学18校、私立大学は少なくとも5校がCSC奨学金制度の留学生を受け入れ、一部の大学はCSCと協定を結んでいる。
質問4
学内審査をされる側(留学生)だけでなく、する側(副学長)にも中国籍の人物がおり、国家情報法や国防動員法が日本国内の中国人にも適用される状況では、文部省や法務省だけでなく政府全体で技術流出防止に取り組む必要がある。
内閣府国家安全保障局の見解は?
答弁4
技術流出防止の重要性は認識している。技術流出防止について不断に取り組みの見直し・検討を進め、経済安全保障の観点から関係省庁等と連携して必要な取り組みを推進していく。(内閣府)
中国では軍民融合が進んでおり、CSC奨学金制度は「中国には無い先端技術を身につけて来い」という制度なので、日本政府としてしっかり対応していかなくてはならない。
<トランプ関税について>
質問1
トランプ大統領は、相互関税を発動した14時間後に「相互関税の90日間停止」を表明した。あまりにも場当たり的ではないか?
答弁1
90日間停止を前向きに捉え、米国政府に関税措置の見直しを強く求めていく。(外務大臣)
今後、トランプ外交に対抗していくには、工業分野だけではなく、農業分野でも対応が必要である。関税ばかりではなく、日本の内需拡大による米国農産品の輸入増で米国の貿易赤字を減らす方策もある。消費税減税も視野に政府は真剣に考えるべきであり、消費税減税によって日本の内需を拡大することも交渉カードの一つになる。
それに対し、外務大臣からは「様々な国内の状況を見ながら適切な政策判断をする」との答弁があった。
以上、4つの主要な項目について質問・議論をしたが、とくに最初の項目に関しては自衛隊出身者として看過し得ない。
フェイク情報によって、自衛隊が貶められ、国民からの信頼が失われるなどという事態があってはならない。