自衛隊による東京と大阪での大規模接種センターでは、7月末現在約100万回の接種回数を超えた。9月25日頃まで、現態勢を維持しながら運営を行っているが、現場に多くの負担が出ているのも事実だ。本来任務への影響や秋の災害対応等にも備えながらのワクチン接種。延長の是非を今月末までには決める必要がある。政府と与党との議論も必要だ。

 

大規模接種センターに多くの自衛隊医療関係者が取られているために、自衛隊員へのワクチン接種が遅れている現実もある。7月末時点で、2回接種した隊員は25万人中わずか3.8万人。英空母打撃群との共同訓練時においても、米英軍はワクチン接種済み、一方自衛隊員は未接種、或いは1回のみの接種。艦艇内は密なので特に感染対策が必要であり、実際、韓国艦艇内でのクラスター、英空母打撃群内での感染も報告されている。

 

自衛隊員へのワクチン優先接種は、自民党国防部会でも、危機管理上、決議を行ったが、政府には受け入れられなかった経緯がある。熱海市での災害派遣において、警察や消防はワクチンを最低でも1回接種した者が派遣されていたが、自衛隊は現場派遣隊員約400名中、1割の約40名が1回接種したのみ。6月下旬から始まった職域接種では、約100カ所の接種場所を申請したが、認められたのは36カ所のみ。8月9日以降、残りの申請箇所が承認され接種が開始される模様だ。米軍等では、軍はワクチン接種の優先順位が高く、在日米軍はもちろん、そこで働く日本人従業員も接種は早い。

 

今回のワクチン接種は地方自治体が接種権限を持っている枠組みの為、警察や消防は自治体の長の判断でワクチン接種できても、自衛隊や海保等の危機管理に当たる国家公務員の接種は遅れた。この問題は、3回目接種も議論される中、次の課題として残る重要な問題だ。国家の危機管理意識が問われる問題でもある。

 

最後に、東京五輪支援に全国から派遣されている隊員が帰隊する前に、PCR検査を受けてもらえるよう防衛省に強く要望した。約8500人の隊員が支援要員として参加しているが、実際に新型コロナ感染者も発生し、濃厚接触候補者も隔離された事態に発展した。地方から首都圏に来て1ヶ月以上、緊急事態宣言下でプレハブ生活等を強いられている。地方の留守家族にとっては東京等首都圏の感染状況に敏感であることを考えると、留守家族や部隊に懸念なく快く受け入れてもらうために陰性を証明することは必要だ。特に妊娠中の奥様や基礎疾患等を持つ留守家族もいる。少なくとも希望者内はPCR等の検査をすることを強く要望した。

 

その後、防衛省が組織委員会と調整して、自衛隊の支援要員は地元に帰隊前に、全員がPCR検査可能となった。今後も現場の声をしっかりと組織の中枢に伝え改善を図っていく。