花をうたい、花火に想う


 スイカズラ(忍冬)が好きだ。華奢な管状の花や蕊、芳香、漢字の風合いがいい。幼いころから見慣れているせいで、親近感もある。

 花の咲き始めは真白で、後に黄変する。黄白の花々が混在して咲き乱れるので、金銀花の別称がある。水引きを連想させ、めでたさを振り撒くような印象もある。つる性で、手入れの悪い垣根などにしばしば絡みつき、忍冬に覆われた庭の屋敷には、孤翳が漂いがちだ。

 末子(まっし)嫁し陋屋ひそり金銀花   (ひとみ)

 先日の素人句会で詠んだ一句。

 作句の意図は、老親に対し、喜びに寂しさも加われど、ことほがれるべきことじゃないですか、という力付け。

 末っ子の結婚という祝儀を、金銀の花に象徴させ、嫁がせた親の寂しさを、ひっそりとした陋屋という言い回しで掬い取ろうとしてみた。

 句会で披露したら、不評である。わびしさが、これでもかと重なる調子が鼻につくらしい。慮外だったのは、スイカズラの花を、知らない人さえいたこと。「金銀花=忍冬」についても知らない方がいる。

 「爺婆ばかりの素人句会だから仕方ない」と、心の中で苦笑い。でも、凝り過ぎた句だとは反省。思い込みが強いとダメと、肝に銘じた。

 六月の兼題は「花火」。妻逝きて一年余り、これを材にして投句。

 遺されしアルバム束ぬ遠花火   (ひとみ)

 


 

 点を入れてくださった(褒めてくださった)方もあったが、「束ぬ」には批判も出た。いわく、「束ねてしまっちゃ、かわいそうじゃないの」。帰宅後、思い返してみて一句。

 想い出を忘るなと友麦の秋   (ひとみ)

 亡妻にかわり、句友らに首肯、黙謝。

 スイカズラについては、二度採り上げた山田案山子さんのHPをご覧いただけるとありがたい。案山子さんにサンクス。