忍冬(スイカズラ)-2
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写真は山田案山子さん提供
 
 小学校高学年のころまで、辞書・辞典を使う習慣はまったくなかった。親たちは戦争で焼け出され、ようやく小さな家を新築したばかり。物資不足の時代で、どこの家でも家財道具は少なく、書籍などわずかしかなかった。

『廣辞林』という国語辞典はあったが、旧字旧仮名の古いもの。わたしは新字新仮名で初等教育を受けた戦後生まれだから、「てふてふ(蝶々)」「ゑのぐ(繪具)」「ゐど(井戸)」「くゎじ(火事)」なんて辞書は、古文書である。

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 二つ上の兄が親にねだり、ようやく新字新仮名の『字海』が我が家に現れた(1950年代末)。しかし国語辞典で漢和辞典ではないから、読めない漢字をひく機能がない。それが不服で「不親切な字典だ」と見当違いの文句を言って抛り出した。

 そのころ、小説などで「忍冬」の文字に出会うと、どんな花なのだろうと思った。だけど、そんな状況にあったから、調べようともしない(上掲写真は近所で私が撮影したもの)。

「花の歳時記_039_忍冬」でも書いたが、スイカズラは実家の北斜面にはびこっていた、冬も枯れない蔦である。あるとき、その名を教わって、ああ、これが「忍冬」。

 「それで、あの小説のあの場面でスイカズラが出て来たんだ」と思ったかどうか…、覚えていない。しかし、芳しい香りの、いい花である。英語では、honeysuckle。山田案山子さんによれば、Japanese honeysuckle とも言うらしい。

 すいかずら思いとどけと頬を埋め  (ひとみ)

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