私には石橋真幸を引き止める資格など全くなかった。
彼にこれ以上「頑張ろうよ」と言う勇気がなかった。
間近でその努力、練習量を見ていたから。

「練習はこれからも楽しむ程度に続けていきます。
僕はこのジムが好きなんで。
だから、佐藤さんのことはこれからもサポートしていきます。
まだまだ頑張ってくださいよ」
「うん、わかった」


さみしくなるね……
この日、私はツイッターで2回つぶやいた。

会長からは「そんなに答えを急がなくても、怪我が治るまでゆっくり考えたらどうだ?」と言われたらしい。
私は「本人が辞めると言っているのだから、もう辞めさせてあげましょう」という気持ちだった。
でも、ジム内で唯一、石橋を引き止められるのだとしたら、小森会長ただ一人だと思った。
試合前のミットで毎日、生身の体で選手の技を受け続け、共にボロボロになって試合に臨み、試合中も選手に負けないくらい汗だくになって叫び続け、指示を送る小森会長ただ一人、なのである。


ジムのプロ選手の名札のところに「石橋真幸」の名前は残されたままだった。
私はこのときも「早く外して、もう解放してあげてください」という気持ちだった。
思い返してみると、小森会長と佐藤嘉洋の、このときの気持ちが違うのは当然のように思えた。
会長自身も現役生活のときに腕の骨折が続き、
満足のいく結果を残すことができなかった。
目標としていた日本タイトルも、あと一歩のところで斎藤京二にKO負けし、獲ることができなかった。

反対に、私は充分に選手生活を全うしている。
もういつ引退しても良い、という満足感のある試合もいくつか経験している。

多分この差だったのだ。

石橋はもちろん、前者の小森会長と似た気持ちであろう。
「DEEPKICK」も「ナゴヤキック」もあと一歩のところでタイトルを逃し、
怪我に泣かされ、勝ったり負けたりしてきたライバルの多くが、
よその団体でタイトルホルダーになっている。

2012年12月初旬。

退院後の初練習で名古屋JKファクトリーに来たとき、
石橋はプロのところに自分の名札があったことを嬉しく感じたという。
そして、現役引退を決めた人間が、
骨折したままの足で上半身のウェイトトレーニングをしている。
その姿に私は首を傾げた。

なぜ、そこまで自分を追い込んで鍛えられるのだ?
オマエはつい一ヶ月弱前に、足をへし折っているんだぞ。

一昔前の世代だと引退したあとは、
ジムにも顔を見せずに消えて行く人たちがほとんどだった。
だから、私は彼の顔を見れるだけでも嬉しかった。
私でさえ嬉しかったのだから、会長はもっと嬉しかったことだろう。
毎日来ていた人間が、ある日からぱったりと来なくなる。
そのような連中をキツい言葉で罵倒していても、そういうときの会長はいつも寂しげだ。
石橋が元気な顔(いや、まったく元気な体ではないが……)をジムに見せてくれたことで、ジムの雰囲気は間違いなく明るくなったんだ。

辛い気持ちを抑えて、努めて明るく振舞ってくれてありがとう。

続く

石橋真幸、執念の復活劇①
石橋真幸、執念の復活劇②
石橋真幸、執念の復活劇③
石橋真幸、執念の復活劇④
石橋真幸、執念の復活劇⑤
石橋真幸、執念の復活劇⑥

明るく生こまい
佐藤嘉洋

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試合直前情報
公開練習&インタビュー動画


2014年3月23日(日)
名古屋国際会議場イベントホール
セミファイナル第10試合
佐藤嘉洋vsペットマンコン
開始15:00 
大会終了予定19:00
私は多分18時以降?

VIP席40,000円(打ち上げパーテイー・パンフレットつき)
SRS席20,000円
RS席13,000円
S席7,000円
A席5,000円

佐藤嘉洋応援シート締め切りました!!
それなりのご応募ありがとうございました!!
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佐藤嘉洋が講談社から作家デビュー。
処女作
『悩める男子に捧げる 1001のローキック』
販売中。
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