「雪中早衙」 菅原道真 | 流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも

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地方在住の翻訳者として9年目になりました。専門は法務・金融から工業技術・環境へと拡がりつつ気儘な英訳の独り旅を続けています。英語だけでなく漢詩・古典また音楽のことなど思うままに綴っています。どうぞお気軽にお越しください。


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日本ではいまだに、年明けに官庁、また会社において、その長が年頭の挨拶をするところがある。古臭い慣習である。

 

昔勤務した東京の会社は、年末年始に有給休暇を併せて取得する者も多く、その時期にかかるイベントが予定されることは無かった。

 

一方でこの長い休暇は、システムの変更作業には好都合で、情報システム部門等で「正月返上」で大きなシステム変更やシステムテストを行っていた。

 

幸いにして正月を返上することは無かったが、大きな荷物を抱えて、満員の帰省列車に乗った当時が懐かしい。

 

以下の菅原道真の詩は、サラリーマンの悲哀を感じさせる。この詩は道真がまだ都にいた頃の作である。

 

・・・・

 

「雪中早衙(そうが)」   菅原道真

 

風送宮鐘繞漏聞     風は宮鐘(きゅうしょう)を送りて暁漏(ぎょうろう)聞こゆ

催行路上雪紛紛     行(こう)を催す路上に雪紛紛たり

稱身着得裘三尺     身に称(かな)ひて着ること得たり裘(かわごろも)三尺

宜口温来酒二分     口に宜(かな)ひて温め来(きた)る酒二分

怪問寒童懐軟絮     怪しびて問う寒童(かんどう)の軟絮(なんじょ)を懐くかと

驚看疲馬蹈浮雲     驚きて看る疲馬(ひば)の浮雲を蹈(ふ)むかと

衙頭未有須臾息     衙頭(がとう)未だ須臾(しばら)くも息(いこ)うこと有らず

呵手千廻著案文     呵手(かしゅ)して千廻(ちたび)案文を著(しる)す

 

(現代語訳)

寒風の中に響いてくる宮中の鐘の音が出仕の時刻を告げ、出勤をせきたてる路上に粉雪が舞っている。

身の丈にぴったり合った三尺の皮衣を着て、口あたりの良い少量の酒で体を暖める。

寒い中でも元気な童子を見ると、軟らかい綿を懐に抱いているのではないかと怪しみ、雪路でもひたむきに働く馬を見ると、浮雲を踏んでいるのではないかと驚いてしまう。

そんな妄想も束の間、どうせ役所に着けば、一時の休憩を取ることも無く、悴(かじか)んだ手を何度も息で暖めつつ、公文書の原稿に取り掛からなければならないのだから。


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