最近、設置例が増えているホームドア。
これは転落事故を未然に防止できることから、大手私鉄やJRなどでの採用例が増えていますが、最初期の東京メトロ南北線のフルスクリーンタイプのものを別とすれば、多くが腰高のゲート型のものとなっています。
しかし、こうしたホームドア(ホームゲート)は、車両の扉の数と位置が一致していないと設置・稼働させることができないという問題があります。その問題を克服するためには、車両を全て入れ替える必要があります。実際に車両を入れ替えたのが東京メトロ日比谷線、横浜市営地下鉄ブルーライン、JR大阪環状線などであり、また東急田園都市線やJR山手線などでは、扉位置が他社と異なる多扉車を退役させています。
勿論、現実問題として「車両の扉の数と位置を全て統一できない」という事業者もあります。そのような事業者では、ゲート型のホームドアは使えません(使えなくはないが、東急田園都市線宮前平駅のように、ホームドアと車両との間に隙間を作る必要が生じる)。
ではどうするか。
そこで、そのような事業者・路線に対する切り札とされたのが、「昇降式ホーム柵」つまり「ロープ式ホームドア」です。これは、格闘技などのリングのようなロープを張り、そのロープが列車の発着とともに上下するというもので、これなら扉の数・位置が異なる車両でも対応可能となります。
このような「ロープ式ホームドア」が大阪駅の一部のホームに設置されているというので、見てまいりました。
こちらは4扉車専用のようだ
このホームは4扉車の発着専用のようで、通常のゲート型のものが設置されています。
このホームの反対側、新快速・快速が発着するホームには、このような「ロープ式ホームドア」が。
列車が来ないときはこのように下りている
筐体の間に、ロープが5本渡されているのがお分かりになりますでしょうか。5本だと、ボクシングのリングよりも1本多いことになります。
こんな感じでロープが下りている。
5本のロープ
これが列車が到着すると、このようにロープが上昇します。
筐体から突き出たコーナー柱に注目
列車が到着すると、ロープが上昇するのですが、そのとき筐体から柱が突き出し、それがロープごと上昇していきます。上がった5本のロープは、下りているときよりも狭い間隔で頭上に上がり、お客が乗降できるようになります。このあたりは、以前あった拝島駅のロープ式ホームドアと同じメカニズムです(下記関連記事参照)。
突き出たコーナー柱を別角度から2点。あえてノーキャプションで。
これ、完全に拝島駅のそれと同じです。
このような「ロープ式ホームドア」は、大阪駅の他、JRだと成田空港駅に設置されているとのこと。他方、近鉄では同じ「昇降式」でも、ホームの中に埋没させる方式を考えているとのこと。つまり列車が到着すると衝立が沈み、発車間際に衝立が上がるという構造になるようです。ロープでも実現できそうですが、そうなるとロープが沈む溝に足を引っかけて転倒する危険があり、やはり衝立のような形状にならざるを得ないのではないかと思われます。
以前東急田園都市線のつきみ野駅で試験的に採用されたものの、その後はあまり普及しなかった「ロープ式ホームドア」。扉の数・位置が異なる車両が混在する路線においては、確かに「切り札」とも言えますが、問題点は視覚障碍者がホームドアの端を感知しにくいことと、車両の扉位置を感知しにくいこと。そういう点で限界はあるものの、ゲート型よりも筐体が軽量化されているというメリットもあり、そのあたりをどのように判断するかが、他事業者で普及するかどうかの鍵となりそうです。
最後に、当記事のタイトルは、プロレスで関節技をかけられたなどの選手が脱出するためにロープを掴む「ロープエスケープ」(これがあると相手選手は技を解かなければならず、解かないと反則とされる)からもじりました。
◇関連記事
(拝島駅に設置されたロープ式ホームドアに関する記事)
(東急田園都市線つきみ野駅に試験的に設置されたロープ式ホームドアに関する記事)
※ 現在は撤去され、通常のゲート型のホームドアが設置されています