小田急の「ロマンスカー」、7000形に不具合が発生して運用を離脱した話は、以前から他の鉄道趣味系ブログで取り上げられていますが、その後10000形も、さらには長野電鉄へ移籍した1000形「ゆけむり」までも運用を停止されました。

ロマンスカーにいったい何が起こったのでしょうか?


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↑の写真、1枚目は7000形、2枚目が10000形ですが、いずれも「前面展望・連接構造」という共通点があります。車齢ですが、前者が昭和55(1980)~58(1983)年の製造で概ね27~30年経過しており、老朽化が指摘されています。後者は昭和62(1987)年の製造ですから、LSEよりはまだ新しいですが、床が高いためバリアフリーへの対応ができず、そのため退役を余儀なくされています。既に4編成中2編成が廃車となり、その中から4連を2本組成して長野電鉄に移籍し、「ゆけむり」の愛称で観光客や地元利用者に好評を博していました。


それが、突然の不具合による運用離脱ですからね。そりゃ驚きますよ。


運用離脱の会社側からの公式なお知らせです↓


特急ロマンスカー・LSE(7000形)、HiSE(10000形)の車両変更について

特急ロマンスカー・LSE(7000形)、HiSE(10000形)につきましては、点検の結果、車両の一部に不具合が発見されたため、当面の間、運転を休止し、他の車両に変更いたします。

これに伴い、すでにLSE(7000形)、HiSE(10000形)の特急券をご予約・ご購入のお客さまにおかれましては、座席が変更となる場合がございますので、
ご乗車の際には駅係員または乗務員までお申し出ください。

お客さまに大変ご迷惑をお掛けいたしますことを、深くお詫び申しあげます。
なお、ご不明な点は下記までお問い合わせくださいますようお願い申しあげます。
※その他一部のロマンスカーも車両が変更になる場合があります。

お問い合わせ先
小田急線各駅窓口
小田急お客さまセンター 
03-3481-0066
ガイダンス4番「その他のご案内」(9:00~19:00)


小田急公式ページ より)


これは運用離脱直後に出た発表でもあるためか、「不具合」の具体的な内容は明らかになっていません。

しかし、新聞報道によると、「連結部に傷」という、かなりショッキングな内容が報道されています。

ロマンスカー連結部に傷 小田急、5編成の運転休止


小田急電鉄(東京都)の特急ロマンスカーの2車種で、車両の連結部分の金属に複数の傷が見つかり、同社は計5編成の運転を休止した。長野電鉄(長野市)が使用する同型車両の2編成も検査のため運転を中止した。両社は別の車両で代替し、運行ダイヤへの影響はないという。国土交通省は小田急に原因調査を指示した。



国交省や両社によると、傷が見つかったのは小田急の7000形LSEの3編成と、10000形HiSEの2編成。いずれも、車両の連結部分の下部に台車(連接台車)が設置されている。

カーブなどで台車と車両の連結部分の金属柱がこすれる構造上の問題があった可能性や、20~30年前に運行を始めたので金属の老朽化が生じた可能性などがあり、原因を調べている。傷の長さは最大で7.5センチで、深さは正確に計測できていない。同省は、「傷が深ければ走行に危険が生じる恐れもある」と指摘する。

小田急によると、傷が見つかった部分は、日常的な点検の対象でなく、今後、点検個所の見直しも検討する。復旧には少なくとも1カ月以上かかる見通しだ。長野電鉄は2005年8月、小田急から10000形2編成を譲渡され、特急「ゆけむり」として運転している。

この2車種は運転席が2階にあり、前方の見晴らしがよい先頭車両の展望席や赤い塗装が人気。


asahi.com より)


この新聞報道が出た後、小田急では公式には「不具合」の具体的な内容をつまびらかにはしていません。

このような小田急の姿勢はどうなのかと思います。

今のところ、「車両の連結部分の金属(の)複数の傷」が何によって発生したのかまでは分かりませんが、もしこれが経年による金属疲労、あるいはそもそも連接車としての構造上の問題にあるとするなら、現在運行を継続しているVSEは大丈夫なんでしょうか。


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こちらは大丈夫?


経年による金属疲労であれば、損傷した部分を新造した部品と取り換えることで修繕することが可能ですから、誤解を恐れずに言えばこちらの方が対応がより容易です(ただし点検はこまめに行う必要がある)。また老朽化であれば、とっとと退役させて代替車に取り換えることで事足ります。

これに対して、構造上の問題があったとするなら、ことは整備や部品の取り換えだけでは済みません。なぜなら、連接車・連接構造そのものの安全性の問題になってくるからです。


LSEの先代・NSEは昭和38(1963)年から平成11(1999)年まで、36年間現役で活躍しましたが、このような不具合が発生したという話は聞いたことがありません。さらに初代のSE→SSEにしても、製造初年の昭和32(1957)年から平成3(1991)年までと、やはり34年現役の第一線で活躍してきましたが、こちらも不具合などは発覚しませんでした。もちろん、「不具合が分かっていたけれども表に出さなかっただけだ」と邪推をすることも可能ですが、そのような敵対的な邪推は、とうてい生産的とは思えませんので、ここではあくまで「現在のLSEやHiSEに不具合が見つかった」ことを前提に論じていきます。


その前提でみると、こういうことが考えられるのではないかと思います。

最近小田急の路線では複々線化や高架化がすすめられ、それまでの地べた・土の道床から、(いくらバラストを敷いてあるとはいえ)コンクリートの道床になってしまうため、台車に加わる衝撃がそれまでの地べたの道床よりも大きくなり、その衝撃が継続的に加わることによって、金属疲労が早められたということは言えると思います。現在、JR東日本でも連接構造を有するE331系が長期間稼動していない状態が続いていますが、走り装置の不具合との説もあり、そうだとすると、ほとんどコンクリート道床の京葉線を走行していることで、台車や連接部に設計時の想定以上の負荷がかかっていたのかもしれません。

これに対して、SE車やNSE車が現役だったころは、コンクリート道床の部分が少なかったため、設計時の想定以上の負荷がかからなかったか、かかってもそこまで金属疲労が深刻にならなかったため、無事に現役を全うできたのではないかと思います。

ではVSEが大丈夫なのはどうしてかという疑問がわきますが、これは、VSEは高架のコンクリート道床を走ることを前提に、台車にかかる負荷を計算していたのではないかと思われること、あるいは単純に車齢が若く、そこまでの金属疲労が発生していないということではないかと思います。


もともと、連接式という構造そのものが、2つの車両の連結部分に台車を置き、両方の車両の重量を受けるという、通常のボギー車とはかなり異なった負荷の受け方をしていますので、保守点検もボギー車のそれとは異なる難しさがあるのではないかと思われます。台車点数の減少やカーブでの走行安定性、高速性には一日の長があるといわれる連接式ですが(だからこそヨーロッパの高速列車、TGVとかユーロスターなどは両端の機関車以外を連接構造としている)、台車や車体にかかる負荷の問題は、ことによるとそれまで見過ごされてきたのかもしれません。

そう考えると、小田急が最近新造投入したロマンスカーが、人気の高いVSEではなく、通常のボギー構造のMSEだったことは、ことによると小田急は連接構造そのものに見切りをつけたのではないか? 深読みするとそのようにも取れてしまいます。もっともVSEの場合、デザイナーに対するロイヤリティの関係で、小田急の一存では編成数を増やせないという話も聞いたことがありますので、その点の縛りもあるのかもしれませんが。


現在、小田急ではLSEやHiSEで運行していた列車について、RSEやEXE、MSEでの運行に切り替えたり、EXEやMSE使用列車の場合は分割併合が可能な利点を生かして、6連または4連のミニサイズの編成で運行するなど、対応に追われています。

しかし、管理人は、あえて「LSEやHiSEの早期復帰を望む」とはいいません。なぜなら、もし小手先の改修で運用に復帰させてしまった場合、重大事故につながる懸念を払拭できないからです(かつての日航機墜落事故も、金属疲労に起因する圧力隔壁の修理をきちんと行わず応急的な修理で済ませたため、それが墜落につながったという説がある)。

重大事故になる前にこのような不具合が見つかったことは、まさしく「不幸中の幸い」。小田急にはこれを機会にしっかりと原因を究明してもらい、必要なら代替車の投入なども躊躇することなく行ってほしいものです。