5月下旬特選映画【17】★映画のMIKATA「ブラックハット』★映画をMITAKA | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。




冒頭に映画に関する話題を一つ。下の写真は、TOHOのある街の映画館の無人の券売機です。まあ、イニシャルコストの費用はかかるものの、切符を売る人件費は大幅にカットできるので、何年後かに元を取り戻せるのだろうーね。TOHO系の映画館は私の知る限り皆導入しています。ただ、私は敢えてクレームを二つ付けたい。一つは、機械の周辺は光がスポットで点灯しているのですが、それでも手元がとても薄暗いです…。私は登録カードを差し込み、料金はクレジットで払っています。が、手元が暗いので入場券を取ると安心して、カードを取り忘れることが数回ありました…。観察すると天井から手元を照らすスポットライトがないのです。同じTOHO系でも天井からライトが明るく照らしている映画館もあるのですがーね!ここには無いのです、なんどクレームを書いても、マネージャーに苦情を言っても改善されません…!もう一つは、券売機の前にポールと帯のようなロープが、迷路のように十重二十重に仕切られています。これは混雑した時に一列に並ぶための、整理の行列用帯です。ところが、人が疎らでもこのテープは張られたままです。テープの間をぐるぐる周りながら券売機に辿り着きます…。まるで迷路で遊んでみたいです。時々この煩わしいポールとテープを蹴り倒したくなります。率直に行ってこんなの止めてほしいです…、何とかしてよ!





5月下旬の特選映画をアップロードします。今回8本を映画館で観賞、今月5月は通算で13本を観賞しました。選んだ特選映画1本は、サイバー犯罪の傑作『ブラック・ハット』を選びました。もう一本邦画の、≪女と男≫の家族関係と近代の婚姻制度を軽妙洒脱に問う人間ドラマ『駆込み女と駆出し男』にしようかと迷いましたが、ポレミークで現代的な問題«サイバーテロ»を描いた『ブラックハット』に決めました。およそ、官邸屋上にドローンを発見して上へ下へ大騒ぎし、国会議事堂や首相官邸、最高裁判所、皇居など、国の重要施設の敷地と周辺約300メートル以内の上空を飛行禁止区域とする規制を立法化しようと慌てている日本です。日本の原発もハッカーの侵入が予想できるのに、危機管理は大丈夫なのかね…?恐ろしい悠長さよりも、危機感のなさが恥ずかしいですーね。


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ブルックリンのマフィアのボス・ショーン(エド・ハリス)と、少年の頃より不良仲間で右腕の殺し屋ジミー・コンロン(リーアム・ニーソン)が主役で、リムジンで客待ちしていたた運転手の彼の息子は、事件に巻き込まれ命を狙われる。1本目は、息子を救うためにボスの息子を殺し、一線を越えてボスを殺すハードアクション映画『ラン・オールナイト』(ジャウマ・コレット=セラ監督)でした。


リーアム・ニーソン演じる元CIA工作員の主役ブライアン・ミルズの人気シリーズ「96時間(2008年)、「96時間/リベンジ」(20124年)、「96時間/レクイエム」(20144年)のハードアクションには、続編・続族編ながら一貫したストーリと妻や娘たち家族の配役も統一性とまとまりがあり、単に拳銃と暴力と格闘だけに終わらない、それなりの面白さがありました。が、どうもシリーズから逸脱したこのアクション映画は、確かに家族愛がどれも根底に流れていましたが、ただただ激しいアクションだけに終わっている気もしました。単純なバイオレンスとアクションだけのリニーアム・ニーソンには魅力がないです。

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2本目は、江戸幕府公認の縁切寺「東慶寺」を舞台に、複雑な事情を抱えた訳あり女たちー、お吟(満島ひかり)や鉄練りのじょご(戸田恵梨香)ーから男女の複雑な事情を聞き取る御用宿・柏屋の三代目柏谷源兵衛(樹木希林)や、そこに居候する戯作者兼医者見習いの信次郎(大泉洋)と、東慶寺尼僧で豊臣秀頼の娘・法秀尼(陽月華)たちが、人生の再出発のために女たちを導く、「女と男」の家族制度と近代の婚姻制度をラジカルに、軽妙洒脱に問う人間ドラマ駆込み女と駆出し男』(原田眞人監督)でした。


井上ひさしが晩年に力を注いで書いた時代小説「東慶寺花だより」が原作なので、ストーリはよくできています。信次郎役の大泉洋の軽口と芝居かがったセリフと口上も流石ですねー。ただね、私は原作小説読んでないので何とも批評しようがないのですが、原田眞人の脚本では妾のお吟の旦那で、日本橋唐物問屋の堀切屋三郎衛門(堤真一)、実は元大泥棒が鳥居耀蔵の捕り物から逃げおおせて托鉢僧侶になって再び臨終間際のお吟の近くに現れる堀切屋の顛末がやや曖昧ですかーね、と感じました。


司馬遼太郎が「明治と明治人とは何かー」の答え小説で描いたとするならば、井上ひさしは「昭和とは何か、昭和の土台を形成したものは何かー」を問い続けた作家ではないのかな、と私は思っています。この小説「東慶寺花だより」は背景の時代は江戸でも、近代の結婚制度の中での男と女の関係を描いるのではないのかーな…。私は、鎌倉の駆け込み寺「東慶寺」を訪ねたくなりました。


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3本目は、杉浦日向子の漫画「百日紅」を原作に、未だ正体が謎に包まれた浮世絵師・葛飾北斎(声・重豊)と、北斎を父に持つ23才の娘のお栄(声・杏)、後の葛飾応為の親子を主人公に、江戸に生きる町人達の生活模様と風俗、江戸庶民に絶大に愛された浮世絵の世界を描いたアニメ百日紅』(原恵一 監督。丸尾みほ脚本)でした。


北斎の人物像よりも、原作者の杉浦日向子の方が関心があります。晩年、テレビのトーク番組でよく和服姿の杉浦日向子をよく見かけたが、江戸風俗と江戸の庶民の人情を描かせたら天下一品の漫画を描く。落語・銭湯・蕎麦が無類に好きで饒舌な風流人であり、葛飾北斎に勝るとも劣らぬ奇人でもあったー。両国橋を渡る江戸町人の売り声、町並を歩く活気溢れる江戸町人の人の波、移りゆく四季の自然と風景がアニメの中に満ち満ちていましたー。≪百日紅≫と葛飾北斎がどのように結びつくのか、浅学非才な私にはよくわからなかったが、このサルスベリの花を«ざわざわと咲き…»と表現していました。


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4本目は、完全に人間が情報管理された近未来社会の古い教会に閉じこもるコンピューター技師・コーへン(クリストフ・ヴァルツ)は、ただ只管に「ゼ

ロの定理」の解明に挑むコンピュータ社会の寓話的映画ゼロの未来』(テリー・ギリアム監督)でした。


伏線の人生の目的を告げる電話のベルと、売春婦のようなケバイ女・ベインスリー(メラニー・ティエリー)の登場、会社の社長の息子でコンピューターエンジニアのボブ(ルーカス・ヘッジズ)の出現も、なにか唐突過ぎて支離滅裂の映画でした。私はこの難解な映画を、奇をてらった駄作と判断しました。コンピュータによる管理化された未来社会を表現したかったら、もっと別の映像表現があろうかと思いました…!だから、今年の「つまらんい駄作」ワーストワン映画に指定したいです。


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5本目は、いつの間にかネットワークに不法侵入され、香港の原子炉が破壊され、同じハッカーの仕業で先物市場で大豆が引き金になってアメリカの金融市場も操作され、7600万㌦の被害を受ける、コンピーター社会におけるサイバー犯罪の傑作映画『ブラックハット』(マイケル・マン 監督)でした。


マイケル・マン監督は、この映画制作のヒントを、複雑に設計されているだけでなく、兵器化までされているコード«マルウェア(破壊工作ソフト/コード)»が発見された「スタックスネット」事件が元になっている、と言いますー。それが発見された時はすでにイランの核施設であるウラン濃縮工場が不正侵入されていたというサイバー犯罪事件を基に制作されたようです。これにより、約8400台の遠心分離機の全てが稼働不能に陥るという恐ろしい現実の事態にまで発展した…恐ろしい事実がありまし

た。


登場人物はアメリカのFBI捜査官、中国軍の犯罪捜査官でMITでコンピュータを専攻したチェン・ダーワイ(ワン・リーホン) 、彼の大学時代のルームメイトであり、コンピュータ犯罪で14年の刑で刑務所に入っていた天才プログラマーのニコラス・ハサウェイ ー(クリス・ヘムズワース)、後にハザウェイの恋人になる、ダーワイの妹で、コンピュータエンジニアのチェン・リエン (タン・ウェイ )たちが、金融市場を撹乱する正体不明のサイバーテロと武装テロ集を追いかけ、ハッキングの謎と狙いに肉薄していく…。これは迫力がありました。舞台も中国の香港からアメリカのロサンゼルスへ、マレーシア北西部の湾岸地帯、インドネシア、テロリスト集団たちが衛星写真で狙うジャカルタの「錫」の山地域へ移動する、ダイナミックなスケールも魅力です。サイバーテロの最後の狙いは、「錫」の株価相場の操作であったー、という結末はよくできたドラマでした。


6

6本目は、MITの学生ニック(ブレントン・スウェイツ)とジョナス(ボー・ナップ)とニックの恋人ヘイリー(オリヴィア・クック)は、パソコンをハッキングする「ノーマッド」と名乗るハッカーの正体を突き止めようと逆探知して居場所を探るが、不思議な光が接近したとたんに意識を失い、政府の伝染隔離施設

の中にいつの間にか監禁される若者3人の恐怖を

描く『シグナル』(ウィリアム・ユーバンク監督)でした。


施設研究員の黒人(ローレンス・フィッシュバーン)は何も教えず、ただ観察し実験材料にする隔離生活を強いられる。やがて彼らの肉体に起こる何かの異変に気づくー。肉体の手や足の一部分がサイボーグ化されていたのだ。そして、隔離施設の研究員デイモンも宇宙人に改造されたサイボーグでした…。


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7本目は、恋も女の経験もない真面目一方で、肥満で冴えない大学生「鈴木」(松田翔太)がメンツを揃えるために合コンに誘われて、そこで歯科助手マユ(前田敦子)と出会うラブロマンス映画イニシエーション・ラブ』(堤幸彦監督。井上テテ。原作-乾くるみ『イニシエーション・ラブ』)でした。


小太りの役者「鈴木」とマユとの出会いが初心で熱いラブロマンスに熟していくのが「Side-A」のストーリで、就職して静岡から東京本社へ転勤が決まって、マユと会うために東京と静岡を往復する週末遠距離恋愛を続ける松田翔太演ずる「鈴木」が登場するのが「Side-B」のストーリでした。


「イニシエーションラブ」は率直に言って、ナカナカ曲者の作品です。乾くるみという作家をこの作品で私は初めて知りました。一人の女に絡む異時間の二人の男の姿と空間は、一人の男の変身したA面B面の時間が連続しているのかと思いきや、恰もアインシュタインの「時間」が鍵かな…と錯覚を抱かせるシチュエーションとストーリー展開でした。そこが曲者の映画でした…!いやどうしてどうして、二人の同じ「タックン」への二股の「恋」のドラマが平行して、A面からB面に変わるところがトリックでした。ここだけが注目で、それ以外はただのラブロマンス映画でした…。


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8本目は、人間のようにロボットが自身で感じ自分で考える人工知能搭載ロボット「チャッピー」を開発したディオン(デヴ・パテル)は、そのAIロボットを凶悪な犯罪者に奪われ、強盗略奪の犯罪に利用されそうになるロボット映画『チャッピー』(ニール・ブロムカンプ監督)でした。


これまで数々のロボット映画が製作されましたー。私の印象に残る作品は、凶悪な強盗団に攻撃されて瀕死の重傷を負った警官が脳だけを残してサイボーグ化した『ロボコップ』(2014年リメイク版。ジョゼ・パジーリャ監督)の最新版がありました。古くは、ロボットが人間と結婚する『アンドリューDR114』(1999年公開。原作:アイザック・アシモフ『バイセンテニアル・マン』bicentennial Man。クリス・コロンバス監督)や、ロボットの子供を育てる『A・I』(2001年公開。スティーヴン・スピルバーグ 監督。原案:スタンリー・キューブリック。原作:ブライアン・オールディス『スーパートイズ』 )や、ロボットが人間に対して反乱する『アイ・ロボット』(2004年公開。アレックス・プロヤス監督。原典:アイザック・アシモフの短編集『われはロボット』。)などがありました。いづれの作品も人間により近づいたロボットと、人間とロボットの共生関係を描いた『チャッピー』のルーツです。ほかのロボット映画と違う『チャッピー』の唯一の特徴は、もともと警官ロボットが、子供並の頭脳「AI」チップを挿入され、強盗の手先になって現金輸送車を襲う、悪事に手を染めることかなー。