2009年04月07日(火) 21時22分26秒

「残される者たちへ」 小路幸也 2009-028

テーマ:--小路幸也
小路幸也氏「残される者たちへ」読了しました。

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残される者たちへ/小路 幸也
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
小学館
初版刊行年月
2008/12
著者/編者
小路幸也
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
この世界は、まだこうして美しいままにある。デザイン事務所を経営する川方準一のもとに、同窓会の通知が届く。準一の通った小学校の子供たちは、ほぼ全員が〈方葉野団地〉の子供だった。準一は、親友だったという押田明人に会場で声をかけられるが、彼のことを何も思い出せない。他の人間はすべて覚えているのに。悩む準一は、団地の幼なじみで精神科医の藤間美香に相談する。美香は、〈方葉野団地〉に住む中学生、芳野みつきの診療も行っていた。みつきは、自分を庇って死んだ母親の記憶を見るようになったという。記憶のずれと団地の存在に関係があると見た準一と美香は、団地の探索に乗り出した。二人は〈方葉野団地〉で、想像もしなかった“のこされるもの”に遭遇する…。<<Amazonより抜粋>>


高度成長期に建てられた「団地」。
その「団地」の今にクローズアップし、そこから出てゆく者と残された者の物語が展開されていきます。

主要登場人物視点の三人称が切り替わります。
相変わらずのジュブナイル系も挟み込まれております。
切り替わりのテンポが良いので、読み始めればぐいぐいと行くのですが、一方で、ファンタジーな要素も入り込んでいるため、世界観を知るにはちょっと時間がかかるかも知れません。

読み続けて、ふと思ったのですが、こういう団地(集合団地)って、いろんなところにあったな~と。
やっぱり真ん中に公園があって、その公園で遊んだ記憶もあるけれど、なんだか「よそ者」扱いされていた気がするな~と思いました。

私自身は子供の頃、小さな一戸建てに住み、学校からも近い場所にあったので「遊び場」といえば校庭だったりしたのですけど、たまにこういった団地の公園にも足を運んだ記憶があります。

そういう団地の世界に住む人々が、憂う世界というものをひしひしと感じました。

読み終わって、タイトルを読み返すと、タイトル自体が、もう一つ別の意味を持つことに気がつかされます。

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2009年02月07日(土) 22時23分23秒

「空へ向かう花」 小路幸也 2009-012

テーマ:--小路幸也
小路幸也氏「空へ向かう花」読了しました。

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空へ向かう花/小路 幸也
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
講談社
初版刊行年月
2008/09
著者/編者
少路幸也
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
ハルとカホは違う小学校に通う、六年生。接点などなかったふたりが、運命のいたずらによって引き寄せられる。心に傷を負った少年、少女、そして彼らを見守る大人たち。それぞれが懸命に、前を向いて歩いていく―。 <<Amazonより抜粋>>


良い小説でした。
あらすじにあるとおり、ハルとカホの物語です。
物語の展開としては主人公格であるハルとカホ、それから彼らと関係する大人2人(キッペイ・イザ)の視点で、進行します。
なかなか面白かったのは、章のタイトルが、「○○と●●(彼らの一人称表現と、登場人物の呼び名)」となっている点。

例えば、「わたしと、ハル」・「俺と、イザさん」・「私と、坊主」といった具合。
このような構成で物語が進んでいきます。

氏の得意とする「ジュブナイル系」と思いきや、主人公格である2人の子供が背負うものはあまりにも大きいです。関係する大人たちにも「耐えることができない」であろう大きなものを背負いながら、彼ら2人はあくまでも子供として、素直にそして純粋に生きていく。
そういった物語です。

ハルが背負い続けてしまった(その後も背負い続けるであろう)ことについて、詳細が触れられなかった点については賛否両論があるかもしれませんが、私自身は好きでした。

最後の最後に、イザの過去も明らかになり、主たる登場人物ではキッペイだけが比較的「まっとうな人生」を送っているように見えますが、読み手は彼の視点になりかわって、感情移入することができるので、非常に良い位置にあると思いました。
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2008年08月21日(木) 21時18分36秒

「21 twenty one」 小路 幸也 2008-089

テーマ:--小路幸也
小路幸也氏「21 twenty one」読了しました。
なんというか、やられましたね。

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21twenty one/小路 幸也
¥1,575
Amazon.co.jp
出版元
幻冬舎
初版刊行年月
2008/06
著者/編者
小路幸也
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
中学校入学の日、担任になった先生が僕たちにこう言った。「ここにいる21人が今日から卒業までの仲間です。そして、なんと21世紀に、21歳になる仲間です」なんでもない、他愛もない、ただの偶然。でもその偶然が重なって集まった仲間が21人いる。その事実が僕たちに強烈な連帯感をもたらした。21世紀に、21歳になる21人。僕たちは“21”というもので繋がれた仲間。21・21・21。“twenty one”だ。そして、ずっと変わらない仲間だと、無邪気に信じていた…。なぜ自ら死を選んだ?僕たちに何も告げず。特別な絆で結ばれていると信じていた人を突然喪ったとき、胸に込み上げる思いをどうすればいいんだろう…。大きな注目を集める著者が“生きていく意味”を深く問いかける感動作。


(あ~そういえば小路氏はこんな感じの文体だったな~)と思い出しました。

『ジュブナイル文体』

ついこの間読んだ「モーニング 」では気がつかなかったのですけどね。

あらすじは、上のあらすじの通りです。

一種異様なくらい固い絆を持つクラスメートの一人が自殺をしてしまったところから、その「死」を通じて、その関係をもう一つレベルアップするようなそんな感じの物語です。

特徴は、自殺してしまったクラスメートの原因を皆が自分のせいだと告白するところ。
同じシチュエーションであるならば、少なからずこういった感覚になるのか
と思ったりしました。

フォーカスが当たっているのは「死に向き合うもの達」であり、彼らの胸中とかそれぞれの相関関係とかで、ある種の感動のようなものもあります。

冒頭の「やられました」はそういうことなわけです。

ただ、こと読了後にこうやって思い返しながら感想を書いていると、どうにも「やっぱ異様だよなあの関係」とか思っちゃうわけです。
決して依存し合っているわけではないのですが、どこか奥底で結びつくような関係。

私自身の人生にこんな感じあるかしらんと思い、ないよなと思い、それはそれで残念だよなと思いきや、別にそれでも生きてるじゃんとか思うわけです。
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2008年08月06日(水) 21時58分29秒

「モーニング」 小路幸也 2008-081

テーマ:--小路幸也
小路幸也氏「モーニング」読了しました。

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モーニング Mourning/小路 幸也
¥1,680
Amazon.co.jp
出版元
実業之日本社
初版刊行年月
2008/03
著者/編者
小路幸也
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
あの人のためにしたことを、後悔したことなんか、ない――。大学時代の親友である河東真吾の訃報に接した私。葬儀のため福岡に集まったのは、同じ大学でバンドを組み、四年間一つ屋根の下で共同生活を送った淳平、ヒトシ、ワリョウ。葬儀を終え、それぞれの家へ、仕事へ戻ろうとしたとき、今は俳優となった淳平が言った。「この車で一人で帰って、自殺する」。何故? しかもこんなタイミングで?思いとどまらせるために、私たちは明日の仕事を放り投げ、レンタカーで一緒に東京まで向かう決意をする。「自殺の理由を思い出してくれたら、やめる」。淳平のその言葉に、二十数年前のあの日々へと遡行するロングドライブが始まった。それは同時に、懐しい思い出話だけでは終わらない、鍵をかけ心の奥底に沈めた出来事をも浮上させることになっていくが……。



まぁ、あらすじの通りです。
あらすじを読んで、魅力的だな・読みたいなと思うのであれば読んでみていただいて良いと思います。

小路氏の文体は誰にでも馴染めますし、特段「奇をてらったこと」を望んでいない限りにおいて、この「あらすじ」の通りであるのだと思います。

中身に少々触れますが、共通の友人を事故で亡くしてしまった「今」と、自殺の原因とされる「20数年前」が交互に構成されています。
個人的にはちゃんと章立てしてもらえると、良かったなと思いますが、それほど違和感はありませんでした。

一瞬「謎解き要素」があるのですが、それはあくまでもエッセンスの要素でして、どちらかと言えば「20数年前」の青春時代の懐かしい物語のような感触を受けます。

そういう意味では、別段「今」の物語がなくても良いと思うかも知れませんが、物語のスタート自体を「今」とすることで、この主題となる物語が「過去」のものであるというノスタルジックな小技要素もあるわけですね。

まだまだ主人公達の歳ではないのですが、きっかけがなければ思い出すことがない時代であり、きっかけさえあればいくらでも思い出せる時代ってのは誰にも在るような気がします。

そういうことを思わせる作品でした。

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2007年07月06日(金) 22時09分53秒

「シー・ラブズ・ユー」 小路幸也 2007-077

テーマ:--小路幸也
東京バンドワゴン 」の2作目です。
今回も、古き良き大家族ドラマ風で、読ませてもらいました。

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小路 幸也
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン
出版元
集英社
初版刊行年月
2007/05
著者/編者
小路幸也
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
下町で古書店を営む四世代ワケあり大家族が、古本と共に舞い込む謎を解決します。泣いて、笑って、いろんな愛に気づいたとき…きっと家に帰りたくなる、下町ラブ&ピース小説。<<紀伊国屋BOOKWebより抜粋>>


前作と同様、四季毎に章立てされていて、一話完結型でありつつ、時系列として、大きな流れの物語もあります。

語り手はこれまた、前作同様に亡くなってしまっているサチさん。
このやさしい語り口の、サチさん目線で語られるので、結果的にいわゆる3人称「神の目線」で物語が進行してきます。
この手法は、(意外に面白いな~)と2作目で気がつきました。

さっきから「前作同様」「前作同様」と連呼してみますが、たとえば前作の後編、もしくは「分厚い一冊」でもまったく違和感のない作品であり、このことは、ちゃんと前作「東京バンドワゴン」を読了してから読んだ方が、話が繋がることを意味しています。

堀田家に巻き起こる事件。
とはいえ、この事件というほど、生々しいものでもなく、どちらかといえば、一般的な出来事に集約されるような事柄ばかりです。
それでいて、ちょっとほろっとさせちゃうところもあったりして、言うなれば「適度な温度の物語」なのです。

悪い人は、まぁいません。
古き良き下町の大家族である「堀田家騒動記」、このいわゆる「堀田家騒動記」は、登場人物が成長し、あるものには子供ができ、あるものは再婚しても続けていけちゃうようなシリーズだと思いました。

「ムー一族」テイストの「渡る世間は鬼ばかり」的進行といったところですね。

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2007年06月29日(金) 02時07分27秒

「東京公園」 小路幸也 2007-074

テーマ:--小路幸也
東京バンドワゴンで家族小説という新境地を見つけた小路氏の作品「東京公園」読了しました。
これまた氏の得意ジャンルである「やさしい物語」でございます。

安心できます。

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小路 幸也
東京公園
出版元
新潮社
初版刊行年月
2006/10
著者/編者
小路幸也
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」―くつろぐ親子の写真を撮ることを趣味にしている大学生の圭司は、ある日偶然出会った男から奇妙な頼み事をされる。バイト感覚で引き受けた圭司だが、いつのまにかファインダーを通して、話したこともない美しい被写体に恋をしている自分に気づく…。すれ違ったり、ぶつかったり、絡まったりしながらも暖かい光を浴びて芽吹く、柔らかな恋の物語。 <<Amazonより抜粋>>



冒頭に記載のとおり、本当に「やさしい物語」という印象を受けました。
主人公の圭司にはじまり、同居人のヒロ、幼馴染の富永(女性)、血の繋がらない姉である咲美に、人妻の百合香。
もう登場人物全員が(これでもか~)ってくらい、みんな良い人ばかり。
主人公の圭司なんて、公園で勝手に家族の写真を撮り始めても、訝しがる人がいないというくらい、全身「ほんわかオーラー」が出ているというくらいです。

で、大抵が晴れた日の公園と圭司宅が舞台という、これまた、(これでもか~)ってくらいの「ほんわか小説」です。

ストーリ自体は、案の定(ま、誰かが悪さをする気配もなく)、あっさりしていますが、物語そのものを牽引するテーマというのが、「何故、依頼人の初島さんは、自分の妻と子供の写真を撮ってくれるよう圭司に頼んだのか?」が主軸で、伏線として「それなりにモテモテの優男(主人公)」は、それなりにどんな決着をつけようというのか?というものであり、その辺りも「やわらかいな~」と思う原因だったりします。

全編に渡る「ほんわか」。
読んでいて、ふと思いましたが、このストーリラインで、どこかの章だけ括り出しても十分短編(もちろんほんわか雰囲気を味わうという種の短編ですが)として成り立つなと思いました。

総じて、やさしくて・ほんわかしていて・やわらかい小説ってことです。

ただ、圭司の一人称で語られる地文が、たまに「○○なんだ。」と読み手問いかけ風になるところは、どうにもジュブナイルな感じがして勿体無かったりしました。
しっかりしているのにね、彼。

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2007年02月11日(日) 22時03分07秒

「東京バンドワゴン」 小路幸也 2007-020

テーマ:--小路幸也

小路幸也氏「東京バンドワゴン」読了しました。
「ムー」とか「ムー一族」あたりがギリギリリアルタイム(眠くても起きて見ていた世代)で視聴していた私にとっては、ちょっとノスタルジックな大家族の物語でした。

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小路 幸也
東京バンドワゴン
出版元
集英社
初版刊行年月
2006/04
著者/編者
小路幸也
総評
22点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。 <<Amazonより抜粋>>



東京バンドワゴンという古本屋の3代目店主であり、大家族の長である堀田勘一(79歳)の亡くなった妻、サチの語りで物語が進みます。
このサチさんの語りが、なんとも丁寧で、それでいて聡明な語り口なので、とてもゆったりした感覚になりました。

物語自体は大きく春夏秋冬の4つに区切られますが、それぞれのパートでも複数の話が進行します。
例えば、春の章では、百科事典が現れたり消えたりする不思議な現象が起こりつつ、近所で、変質者騒動があったりします。
また、離婚して家に戻ってきた藍子とアトリエを持つマードックの話が絡んできたりします。

一つの話に収束しているわけではなく、あくまでも掘田家のバタバタしたそれでいて人情に溢れる時節を語るといった作品になっています。
そういった意味では、主人公は特定の人ではなく、堀田家全員と付き合いのある人々といったところでしょうか?

印象的だったのは、各章に必ず挿入されている食事のひとコマ。
誰が何を話しているか分らない会話が怒涛のように描かれていますが、大家族ってこんな感じなんでしょうね。
と、感慨深くなりました。

子供の頃に毎年やっていた親戚一同が集まった「新年会」を思い出しました。
確かに、みんな勝手にしゃべるし、誰と誰の会話ってことじゃないんですよね。
その雰囲気です。

また、良いアクセントとして登場するのは、勘一の息子である我南人(がなと)。
60歳にしてロックンローラーな彼は、「LOVE」「LOVE」言いながら、堀田家の騒動をそれなりに、良い感じに持っていきます。
物語の大きな流れは、我南人と愛人の子であり、一緒に住んでいる青(あお)の結婚までの話となりますが、ここでも我南人が粋な計らいをします。

心の温まる作品を提供し続ける、小路氏の作品にとって「大家族」とは、とても定石通りのテーマなのかもしれません。
ちなみに、こういった「大家族」ってのがテーマの作品で意外に少ないですね。

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2007年01月02日(火) 01時46分52秒

「キサトア」 小路幸也 2007-001

テーマ:--小路幸也
2006年の最後はトカジ本でしたが、2007年の最初は小路氏でございます。(あまり意味なし)
ということで、「キサトア」読了しました。

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小路 幸也
キサトア
出版元
理論社
初版刊行年月
2006/06
著者/編者
小路幸也
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
少年アーチはふたごの妹と父親の4人家族。病気で色の識別ができないが、物づくりが得意。海辺の町に越してきて5年、家族は平和に暮していた。やがてアーチはコンクールに挑むことに…。風がはこんでくる、爽やかな物語。 <<Amazonより抜粋>>


主人公である少年アーチの一人称で進む物語です。
小路氏お得意のジュブナイル系ですが、それほど”わざとらしさ”はありません。

スタジオジブリ作品の原作になりそうな作品です。
「家族」とか「町」とか「主人公を含む魅力的な登場人物」とか「風」とか「不思議さ」とか・・・
ちょっと一昔前のジブリな感じがするのです。

世の中には自然と同化することのできる「エキスパート」という存在や、世界のアーチストがマッチ棒工芸を競い合う「マッチタワーコンクール」や、<泣き双子岩の伝説>など。
意外に、この世界観は好きです
もちろんファンタジーなのですが、どこか、ヨーロッパあたりの古き良き海沿いの町を思い浮かべました。

また、物語自体は、ある事件が起きた翌年の1年間が描かれており、事件そのものに焦点がないところあたりが、アーチと家族(と仲間達)が過ごすであろうとある町の長い時間の一部分を切り取られたようなような「さりげなさ」があります。
このような時間軸を見せてくれる作品というのは、実はあんまり見つかることがなく、”しっかりとした世界観”と”魅力的な登場人物”の両方が必要だったりします。

そういった意味で、この作品は「非常に奥の深い」作品といえるでしょう。
正直、この世界観と登場人物による続編も期待しちゃいますが、一方で、このままこの一作で、世界観を閉じ込めるのも良いなぁと思ってしまいます。
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2005年12月28日(水) 02時28分39秒

№142 「ホームタウン」 小路幸也

テーマ:--小路幸也
小路幸也氏の最新作。小路氏特有の語りかける「~なんだ」口調は健在。

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小路 幸也
ホームタウン
出版元
幻冬舎
初版刊行年月
2005/08
著者/編者
小路幸也
総評
19点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
北海道・札幌の百貨店で働く行島柾人のもとへ、妹の木実から数年ぶりに手紙が届いた。柾人と木実は両親を不幸な経緯で亡くした過去があり、以来付き合いは疎遠のものとなっている。手紙は結婚するという連絡だった。妹の結婚を素直に喜ぶ柾人だったが、式も間近になって木実と婚約者の青山がほぼ同時に失踪する。危機を感じ取った柾人は、二人を探し出すため決して戻ることのなかった故郷へ向かう。<<本帯より>>

めずらしくミステリータッチです。
と書いた途端に、(あっ小路氏ってメフィスト賞受賞者だったね)と思いました。

とにかく小路氏の作品に共通して言えるのは、「やさしい文体」なのでしょうね。
こればっかりは正直、好き嫌いが分かれます。私は普通です。嫌いでもなければ好きでもないです。
ただ、あらすじにあるような内容だったら、ヘタをすればハードボイルドだったり、実際内容も主人公の柾人が、職権乱用ばりに右往左往するし、おまけに「カクさん」なんていう、そちら方面では超有名人がそばに居たりして、まったくもって状況は「ハードボイルド」なのだけれども、この文体で書かれると、本帯にあるとおり、まさに「青春ロードノベル」だったりするのです。この辺りは大きな特徴です。

失踪してしまった妹を探すといったメインストリームに、この兄妹の背負った暗い過去があって、その過去をと共に封印した故郷があるといった構造です。
柾人が、その封印した故郷に、妹のために戻ってくるシーンは、久しぶりに実家に戻って、ちょっと散歩していたら、前から見たことある人が歩いてきたくらいの気恥ずかしさがあったりするのでしょうね。
なんとなく共感してしまいます。
(もちろん柾人の場合、事情がまったく違うので「気恥ずかしい」気持ちだけではないとは思いますけど)

この妹の失踪より前に、婚約者の失踪ってのがあって、それぞれに伏線があって、それぞれ謎があります。
この謎を紐解いていくあたりは、ちゃんとミステリーだったり、意外なくらい行動的な登場人物にわくわくしたりします。
それにしても、百貨店の最上階にある「特別室」で、探偵まがいなことをする社員ってのも凄い設定ですね。
この設定のお陰で、妹思いの兄は、ホントに行動的なのです。

この行動的な兄と協力者によって事件(?)は無事解決します。
そして、最終章では、まさに「家族」とか「故郷」とかを思い出させる収束です。

ま、見せるべきして見せたハッピーエンドなのでしょう。こういうのも嫌いではありません。
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2005年09月17日(土) 00時10分25秒

「高く遠く空へ歌ううた」 小路幸也

テーマ:--小路幸也

小路 幸也
高く遠く空へ歌ううた

小路氏のトータル5冊目の読了であり、既読のデビュー作「空を見上げる古い歌を口ずさむ 」の続編的位置づけの作品です。
ジュヴナイル風味の文章で、やさしく物語世界に導いてもらえます。
内容自体はどちらかといえば悲劇的なのですが、なんだか癒される作品です。

「ぼく、また死体を見つけてしまったんです。これで10人目なんです」 なぜか死体の第一発見者になってしまう少年ギーガンは、高くて広い空に囲まれた街で起きる不思議な事件に知らず知らずのうちに巻き込まれていく…。 <<Amazonより>>

前述に「続編的作品」としてはいますが、単純な続編ではなく、正しくは『「空を見上げる古い歌を口ずさむ」で描かれた世界と地続きとなっている別の場所で起こる不可思議な物語』です。
ですので、ギーガンを中心とした主要となる登場人物は、まったく別の街の住人であり、前作を読んでいなくてもそれなりに楽しめる作品になっています。

「春先の十人目」から始まる15章からなる物語の前半は、ギーガンと主要となる登場人物の関わりが丁寧に描かれていて、後半に続く物語の大きな伏線となっています。

小路氏の作品の多くは、こういった「人物の背景」(物語の前提)を描くものが多く、本筋の物語の進行が進むスピードは、通常よりも遅いかもしれません。
ただ、こういった「人物の背景」(物語の前提)を知り、改めて物語が進行することで、イメージがしやすくなったりする訳です。そのような意味では、大変読みやすい作品です。
個人的には、「行間を読む」といった作業も嫌いではないのですが、ここまで丁寧に描かれると、逆にどっぷり甘えてみたくなったりもします。

後半から終わりにかけて、「違い者」と「解す者」と「稀者」といった、前作との続編的世界が広がっていきますが、特段、そこに拘りがなくても、いいのではないかと思いました。
本筋にある「どうして自殺者ばかりでてしまうのか?そこに関わる人とは誰なのか?」といった謎や、続編的世界の堪能というよりは、「悲しい出来事とシンクロするギーガンの変化」の方に、興味がそそられてしまいました。

このあたりの感想は個人差がありますから、やっぱり本書を読む前に前作「空を見上げる古い歌を口ずさむ」を読んでいただいた方よいと思います。
意外に(もしくは意図的に)このあたりは丁寧な物語の前提がありませんので。

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