2008年10月26日(日) 15時19分55秒

「モダンタイムス」 伊坂幸太郎 2008-121

テーマ:--伊坂幸太郎
久しぶりの読前感想なき読後感想、「購入本」の登場です。

案の定、伊坂幸太郎氏の最新刊「モダンタイムス」。
読了しました。

amazonリンク
モダンタイムス (Morning NOVELS)/伊坂 幸太郎
¥1,785
Amazon.co.jp
出版元
講談社
初版刊行年月
2008/10
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:4点 
装丁:5点

あらすじ
漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品最長1200枚。検索から、監視が始まる。漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品 最長1200枚!

岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇気はあるか?」
五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」
渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」
大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」
井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」

<<紀伊国屋Bookwebより抜粋>>



あらすじにもありますが、週刊誌に連載されていたものを単行本化したようです。
氏のあとがきにもあるように、それを意識した物語の展開であって、普段より「収束感」をきっちり描く氏の作品の中では極めて「より収束感のある作品」であると感じました。
刻んでくるんですね、連載だから。

同じモチーフ・テーマで長編書き下ろしであったのであれば、まったく作品としての色合いが違うんじゃないかと思ったりもしました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


本書は既刊の「魔王(所収されているのは「魔王」と「呼吸」という2編の中編)」の正統な続編です。
続編でありますが、(たぶん)そこから50年あまり後の世界、前作の主人公であり、安藤潤也(「呼吸」)が「影」として登場する世界です。


なので、本書単独でも十分楽しめる作品となっています。
また、本書を読んでから、前作(しかも「呼吸」→「魔王」と時代を遡るように)を読んでも、まったく違う世界が見えて面白いんじゃないかと思いました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さて、本文の感想です。
今までの作品に見られる、物語全体の「疾走感」や、登場人物の間で交わされる「小気味よい対話」、それから「お洒落な地文」は残しつつ、前述したように、より鮮明に物語性を強調した作品です。

「検索から監視が始まる」。

本帯にあるとおり、あるシステム開発会社の社員である渡辺拓海が、ただただ引き受けた仕事によって事件に巻き込まれるという物語です。
同僚・先輩・友人・恐妻、そして過去の事件・安藤商会など。様々な人、いろんなものがないまぜになって物語を牽引し、それぞれがきっちりと役割を持って展開していきます。

謎解きの要素もあり、読み手を飽きさせることはありません。
やっぱりこのあたりはうまい
ですよね。
苦労の末に、ヒントを見つけて、真実に近づくという快感を読み手は登場人物と一緒に味わえるようになっています。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


また、本書においては多少のグロテスクな描写があります。
この辺りも新機軸として大いに賞賛します。
人の痛みのようなもの、そういったものは今までの作品ではあまり見られなかったので、新鮮であり、今後も期待できます。(決してそういうのが好きなわけではありませんが)


ただ、ラストあたりの政治家・永島丈の告白から、物語が急に色あせたように見えてしまったのも事実です。
どこにラストを持っていくかという点においては、やはり「連載小説の責任」のようなものがあったのではと思いました。
もっとあいまいに終わらせてもよかったんじゃないかなと思うのです。
それこそ本書でとある登場人物が言っていた「そういうもの」になってしまったような気がしました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ともはれ、ゴールデンスランバーで本屋大賞を受賞した氏の作品が、リアルタイムで購入に読めるということに感謝しなければなりません。
次の作品にももちろん期待します。

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2008年01月24日(木) 00時19分02秒

「魔王」 伊坂幸太郎 2008-009

テーマ:--伊坂幸太郎
伊坂幸太郎氏「魔王」読了しました。

再読です。

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伊坂 幸太郎
魔王
出版元
講談社
初版刊行年月
2005/10
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
23点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
未来にあるのは、青空なのか、荒野なのか――。政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。人々の心をわし掴みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、長い考察の果てに、兄は答を導き出し、弟の直感と呼応する。世の中の流れに立ち向かおうとした兄弟の物語。 <<紀伊国屋BOOKWebより抜粋>>



本が刊行される前にエソラで読んじゃったんですね。

「魔王」はこちら「エソラ VOL.1 2004.12」
「呼吸」はこちら「エソラ VOL.2 2005.7」

で、今回、最新作「ゴールデンスランバー」を読んだことで、ふと(「魔王」を読みたいな(ちゃんと単行本で))と思ったわけです。(きっと、こういう気持ちになったかたは、他にもいるんじゃないかと思ったりして。)

で、読んでみました。

「面白かった」です。

すごく純粋に。


やっぱり「魔王」「呼吸」と順序良く、切れ目なく読むことで、はっきりと物語の世界が見えてきます。

人の言葉を操れる兄・安藤(苗字だったですね)と、くじ運が強い弟・潤也対極性と連続性。
その両方の物語に存在し、物語の媒介役として存在感を持つ詩織・マスター・原の存在。
そして、圧倒的な存在感の犬養

なんというか、物語のスピード感が澱みないのですね。
それでいて「魔王」の焦燥感と「呼吸」の厭世観
それぞれの色合いが、スピード感に変化をもたらしているわけです。

よくよく考えてみれば、兄弟という点において「重力ピエロ」を彷彿させ、
過去と未来という物語の構造において「アヒルと鴨・・・」を印象づけていたりします。

が、

やっぱり、それまでの伊坂作品とは明らかに一線が引かれた作品なのだと感じました。

ファシズム・全体主義・憲法9条・権力・アメリカバッシング その他、この物語を彩るキーワードだけでも異色な感じを受けますが、それよりも、やっぱり「内なる怒り」みたいなものが沸々としてくる作品なんだと思いました。

どこにもぶつけることができない、得体の知れないものへの”怒り”。そして恐怖。

兄にとって、それは「全体主義」であり、弟のとっては「兄の死」そのものだったりするのかなと思いました。

また、今回、通して読めて改めて思ったのは、この作品は「綺麗」だなという点。
「呼吸」の猛禽類の定点観測のシーンなどは、とても清清しさを感じ入りました。

伊坂作品の中でも異色の作品でありながら、しっかり「伊坂色」も見えているといった、2度お得な作品だと思いました。

さりげなく「死神の精度」とリンクしている辺りも、再読して、再認識。
こうなると、「死神の精度」も再読したくなっちゃいます。

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2007年12月02日(日) 18時21分36秒

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎 2007-140

テーマ:--伊坂幸太郎
お馴染み、読前感想なき読後感想

購入本、伊坂幸太郎氏「ゴールデンスランバー」読了しました。

今までの伊坂作品にはない「映画っぽさ」があります。
もちろん今までどおりの伊坂作品であったりもしますが。

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伊坂 幸太郎
ゴールデンスランバー
出版元
新潮社
初版刊行年月
2007/11
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:5点 
読了感:4点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:4点 
意外性:5点 
装丁:3点

あらすじ
冴えわたる伏線、印象深い会話、時間を操る構成力……すべての要素が最強の、伊坂小説の集大成!!仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。同じ頃、元宅配ドライバーの青柳は、旧友に「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と促される。折しも現れた警官は、あっさりと拳銃を発砲した。どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ。この巨大な陰謀から、果たして逃げ切ることはできるのか?<<新潮社より抜粋>>



がっつりエンターテイメント作品です。良くも悪くも「仙台で起こるハリウッド映画」です。

冤罪の物語といえば、そのまんまなのですが、その事件性にせよ、見え隠れする黒幕せよ、巨大過ぎるほど巨大であることが本作品のポイントです。

このシチュエーションでのテーマは、「勝てるはずのない相手にどのように戦いを挑むか?」。そして、読み手の意識は自然に「この物語の収束はどこに向かうのか?」という点に集中されていきます。

章立てにも工夫が見られます。

「第一部 事件のはじまり」、つづく「第二部 事件の視聴者」では、事件の傍観者たるべき登場人物(実は重要人物)が事件の起きた瞬間と続く逃走劇とその終焉(らしき瞬間)を俯瞰します。

物語はその後一気に20年後となり「第三部 事件から二十年後」。ここでは読み手は、この事件が20年後となっても「未解決」であることを知り、同時に不可解な事後について情報を得ます。

そして「第四部 事件」。本作品のメインコンテンツですが、ここで主人公の「逃げる男」青柳と、第一部に登場した樋口晴子の目線で事件が語られていきます。

最後に「第五部 事件から三ヶ月後」では、事件直後の物語が語られていき、物語に一つの収束が見られます。

これら「章立て」の並び一つとっても、伊坂氏が思うエンターテイメント作品への拘りが滲み出ていると感じました。

また、もはや伏線の張り方に関しては、芸術的とも呼べる伊坂作品なのですが、今回も気持ちよいくらいに綺麗にまとまります。例えば、物語の序盤から終盤あたりまで登場する「病院」での一幕は、登場人物の言葉や行動が、重なり合う・すれ違う・を繰り返し、物語を進めていきます。また、青柳や樋口がたびたび思い出す大学時代の思い出は、この逃亡劇において、とても重要な展開を推し進めてくれるものがあります。

このような「場の伏線」「過去からの伏線」を惜しげもなく使い切るあたりは、(おぉ、伊坂作品じゃん)と安心して思えるのです。そうそう、これだけは書いておきたいので、書きますが、伊坂作品には「伏線に無駄がない」のです。

これがなんとも心地よいのですね。

今までの伊坂作品にはない、ラスト展開だったりもしますが、無理やり大円団でなかったのが逆に救いかもしれません。

ちなみに、読了後に「第三部 事件から二十年後」を再読してもらうと、「あれ?森田??」と思ったりして、このあたりもなんともニクイ作品です。

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2007年02月09日(金) 20時48分14秒

「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎 2007-018

テーマ:--伊坂幸太郎
久しぶりの更新です。
そして、久しぶり(?)の購入本
伊坂幸太郎の新作と言えば、購入本でございます。

どこかでこの本が発売されたことを知り、先週金曜日の会社の帰りに、飲み会を断わり、買ってしまいました。
そして、その夜中に読み終わっちゃいました。

(・・・ということで、読了して1週間が立ちました。)

ゆっくり堪能したいけど、ぐいぐい読んじゃう作品、「フィッシュストーリー」読了しました。

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伊坂 幸太郎
フィッシュストーリー
出版元
新潮社
初版刊行年月
2007/01
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:4点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
あの作品に登場した脇役達の日常は? 人気の高い「あの人」が、今度は主役に! デビュー第1短編から最新書き下ろし(150枚!)まで、小気味よい会話と伏線の妙が冴える伊坂ワールドの饗宴。<<Amazonより抜粋>>



長さの違う4つの中短編が所収されています。
巻末を見ると、初出が2001年3月から書き下ろし作品まで揃っています。

この4編、登場人物は若干重なりますが、単独の物語です。
そういった意味では、伊坂氏にとっては初(?)の「純粋な中短編集」といった感じです。

前述したとおり、おおよそ5年の間に発表もしくは書き下ろされた作品群ですので、作品のトーンとか、ちょっとしたトリックの取り込み方などがちょっとずつ違います。

で、まぁ、あらすじにもあるとおり「あの作品に登場した脇役達の日常」も描かれており、既に過去の作品を読了された方には、堪らん作品群だったりもします。

まぁ例えるならば、
”物凄く大好きなアーチストがいて、そのアーチストのまったく年代の違う過去の音源が見つかって、レコード会社がそれをかき集めてひとつのアルバムにした。”といった感じですね。

ここでのポイントは”物凄く大好きなアーチスト”ってところです。

それでは各中短編それぞれのちょっとだけ感想です。
ここから先は、意図的に伊坂本愛読の方向けに・・・

「動物園のエンジン」

「ラッシュライフ」に登場した河原崎の父親と「オーデュボン・・・」の伊藤がチョイ役で登場します。
とある動物園に狼の前に寝そべる男が居て、その男にまつわるミステリを河原崎が中心に、解いていきます。
謎解きとはいえ、それほど深刻なものでもなく、ただの会話に近いものですが、ここで交わされる会話自体がとても「伊坂」な感じがして好感触でした。
また、物語全体にもちょっとしか仕掛けがあり、この辺りも初期作品の匂いがしてきます。


「サクリファイス」

「ラッシュライフ」その他で主人公より活躍しているあの黒崎が登場です。また画廊の佐々岡もチョイ役で登場。
とある村に伝わる「生け贄」を主題に、そこに隠された謎を黒崎が解いていくといった作品。
比較的ストレートな謎解きメインの作品ですが、黒崎の徹底したクールなキャラクターと牧歌的な村の雰囲気のアンバランスさが印象的でした。
そういえば黒崎って「死神の精度」の千葉キャラとかぶっていたりしてますね。


「フィッシュストーリー」

タイトル作です。
これは良かったです。
後述します。


「ポテチ」

書き下ろし作品。
再び黒埼登場です。
とはいえ、この作品での黒崎は、どちらかといえば脇役。
主人公は陽気な泥棒の今村と、彼と同棲している大西。
陽気な今村に隠された過去は何か?といった物語であり、物語の鍵は黒崎が握っていたりします。
脇にいるくせに、美味しいところを持っていくわけです。
そんなこんなありながら、実はこの作品の特出すべきポイントは”今村の母”。
このキャラクターは良いですね。
長編ものだったら、まちがいなく助演女優賞候補でした。


ということで、タイトル作の「フィッシュストーリー」なのですが、個人的には飛び抜けて良いと思いました。
詳細はあえて伏せますが、伊坂版「風が吹けば桶屋が儲かる」的作品(ちょっと微妙に違うんですけどね)。
個人的にも「過去・現在・未来」といった時間軸を扱った作品は好きなのですが、この概念を取り入れると、これほど伊坂作品は広がるのか~と実感しました。

絶妙な偶然と、絶妙な展開。

やや大袈裟ではありますが、この物語だけで、小宇宙を創り出してしまったといった感じですね。
ちょっとだけ内容に触れちゃいますが、あの「フィッシュストーリ」の作者自身の物語は(あえて)語られないといったところも微妙にポイントだったりします。(実は、後々この作家自身の物語が作品になったりするんじゃないの~と思いつつ。)

できれば過去の作品を読了されてから手にして欲しい本ですが、こちらを先に読んでから既刊作品を読んでみてもおつかもね~などと思いつつ、そういった方がいらっしゃるのであれば、是非感想をお聞かせください。

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2006年05月14日(日) 15時38分28秒

「陽気なギャングの日常と襲撃」 伊坂幸太郎 2006-061

テーマ:--伊坂幸太郎

もうお馴染みですけど、読前感想なき読後感想
すなわち、購入本でございます。

昨年12月に実施した、極めて個人的な2005年第1回「流石奇屋」本の大賞 「最優秀作品賞」受賞作であり、昨年7月に実施した、極めて個人的な「伊坂ランキング」 で、堂々3位をおさめ、そして何より、私が初めて出会った「伊坂本」である近日映画公開 で話題集中の「陽気なギャングが世界を回す」 の続編でございます。

・・・

前作の長い前フリも終わりまして、早速「日常と襲撃」を読了いたしました。
いやいや、やっぱりこの陽気な4人のことを愛している自分を再認識しました。

”おもしろかったです。キャラクターOK!。展開OK!。そして何より「会話」がOK!。”
とは、前作の書評でのコメントですが、加えて今回は、
”連鎖OK!!”ってことです。

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伊坂 幸太郎
陽気なギャングの日常と襲撃―長編サスペンス
出版元
祥伝社
初版刊行年月
2006/05
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:5点 
意外性:4点 
装丁:4点

あらすじ
人間嘘発見器成瀬(なるせ)が遭遇した刃物男騒動、演説の達人響野(きょうの)は「幻の女」を探し、正確無比な“体内時計”の持ち主雪子(ゆきこ)は謎の招待券(チケット)の真意を追う。そして天才スリの久遠(くおん)は殴打される中年男に――史上最強の天才強盗(ギャング)4人組が巻き込まれたバラバラな事件(トラブル)。だが、華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な 連鎖を始め…。絶品のプロット、会話、伏線が織りなす軽快サスペンス! <<本背表紙より抜粋>>


■伊坂氏真骨頂の「連鎖」連発!!

本書のあとがきにもございますが、元々、本作は、4人の銀行強盗を中心に、毎回主人公を変えた短編だったようですが、刊行にあたって大きく改稿し、長編の一部としたようです。
よくよく思ってみれば、この”連鎖大作戦”(といって良いのでしょうか?)は、伊坂氏にとっては真骨頂であり、当然ながら、4つの短編らしきものと、後半の「社長令嬢誘拐事件」は、無駄なくきっちり連鎖しております。
「ラッシュライフ」で顕著に見せた、各々の物語をつなぐ、伏線の数々。
加えて、前作との連鎖も忘れず盛り込まれており、さながら、これは、緻密に仕組まれた「らくごの語」のような世界だったりします。
この辺り、決して推理小説ではないのですが、前作の読み手としては、「次は、どんな話と連鎖するんだろう」という物語の展開とは別の楽しみ方が得られるので、なんだかお得な感じがいたします。

■魅力はやっぱり「キャラ」ですかね

前作同様、テンポの良い軽快な会話や、4人の絶妙なバランス、それからちょっと抜けた悪役に、強烈なサブキャラ達。登場人物一人一人が、もれなく魅力的です。

■忘れてはならない「広辞苑」引用

各章の冒頭にある「広辞苑」引用。
これは、前作と同様ですが、パワーダウンしておりません。
私は特に「訪問」・「検討」・「念の為」・「人間」が気に入りました。

■実は、ちょっと強引な展開だったりするけども

ちょっと、物語の展開自体が、やや強引なところもありますが、その辺は、主人公達が、「陽気なギャング」という、言わば「元々、ルール違反な存在」なわけでして、許してしまいましょう。
その方が楽しめますしね。

■最後に、これをきっかけに伊坂本を読もうと思われている方々へ

きっと、前作も映画になったりして、読者が増えることとは思います。
映画化され、それぞれの配役が、固定のイメージとして読んでしまうのは、ご愛嬌とは思いますが、本書を読む前は、必ず原作「陽気なギャングが世界を回す」を読んでいただきたいと思います。
そして、「おぉぉ」と思った方は、その他伊坂氏作品にどっぷりはまっていただきたいと思います。

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2006年03月30日(木) 21時09分31秒

「終末のフール」 伊坂幸太郎 2006-039

テーマ:--伊坂幸太郎
はい、読前感想なき読後感想。すなわち購入本です。

もちろん伊坂氏の最新刊「終末のフール」読了しました。
フルオーダーのスーツに袖を通した様なフィット感と、このシチュエーションという着想に改めて脱帽した連作短編集です。
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伊坂 幸太郎
終末のフール
出版元
集英社
初版刊行年月
2006/03
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
24点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:5点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:3点

あらすじ
あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。<<Amazonより抜粋>>


本書は、小説「すばる」に04年2月~05年11月に発表された、タイトルが
「終末のフール」
「太陽のシール」
「篭城のビール」
「冬眠のガール」
「鋼鉄のウール」
「天体のヨール」
「演劇のオール」
「深海のポール」

○○(漢字2文字で読み4文字)(カタカナ1文字)ール」で統一された全8編の連作短編集です。
例えば「南極のプール」とか「祭壇のベール」とかですね。
で、この統一をしてみちゃったりすることから、なかば無理やりとも言える、それらタイトルの意味は、まさに「言葉あそび」の世界です。
個人的に無理やり感があって好きなのは、「天体のヨール」です。
声に出して読めば、そのままなのですが、(長音いらないでしょ!!)と。
(ヨールって、そういうことなの?!)と、一人で突っ込んでしまいました。

以前、「砂漠 」の書評の中で、”(伊坂作品は)『完成された世界』に対して負荷をかけ、その影響で起こる絶妙なズレ感を、シニカルに表現している”などと偉そうに表していたのですが、本書は、まさにそれの究極版。
「小惑星衝突(かもしれない)⇒世界の崩壊」という、これ以上にない負荷をかけております。
世界が崩壊する(かもしれない)という状況は、人から希望と理性を奪い、絶望と不安を与えます。
この負荷の規模ってのが今までの作品との大きな違いです。
ここまでくると、その負荷にどう立ち向かいそして解決しようとするかではなく、どう共存していくかってことになるわけです。

で、この巨大な負荷に対する反動が収まりかけた(いわゆる小康状態)ってところの瞬間を物語りにしているというひねくれたシチュエーションもだいぶ好感触でした。
そんな状況だのに、相変わらずのほのぼのとした文体と、「せっかくなのだから、何かを成し遂げよう」とする人たちの物語なのです。
この「せっかくなのだから」の相手が「小惑星の衝突するから」ってのを忘れてしまうほど、例えば「引越しが決まったから」とかでも十分当てはまるほどのほのぼのさと、この物語の3年後を起こってしまう現実に、「ある種の悲しみ」や、「どうしようもないやるせなさ」があったりするわけです。

8つの物語は、仙台のヒルズタウンという場所を共有していて、いわゆる「短編間連携」が随所にあります。
個人的には、ほぼ全物語に登場するスーパーマーケットを開店しているキャプテンが良かったですね。

P.S
ま、ググルと一発で出てくるので、ご存知のこととは思いますが、プチ情報を2つ。

★プチ情報1:集英社のHPに「終末のフール」の専用ページ が出来上がっています。
演劇のオールの創作秘話だけが今のところ見つかりません。

★プチ情報2:
集英社女性誌ポータルサイトs-woman.netに伊坂幸太郎氏のインタビュー が掲載されています。(全4回らしい)できれば読了後に訪問いただければ良いと思います。

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2005年12月11日(日) 16時44分30秒

№135 「砂漠」 伊坂幸太郎

テーマ:--伊坂幸太郎

「死神の精度」「ネコソギラジカル」に続き3冊目の「読前感想のなき読後感想」。

すなわち購入本です。
しかも発売日(12/10)の翌日に、読後感想を更新するのは、当然ながら、まったくもって史上初

イレギュラーにイレギュラーを重ねた伊坂幸太郎氏最新刊の「砂漠」です。

読了しました。
で、読了して、しみじみと(あぁ、いろいろな本に浮気をしていたけれど、結局のところ今の私には『伊坂本』なのだよなぁ)と感慨深くなりました。(1回目)

相変わらずですが、面白い
良い意味で裏切られました。ふんふん。

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伊坂 幸太郎
砂漠

出版元
実業之日本社
初版刊行年月
2005/12
著者/編者
伊坂幸太郎
総評
25点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:5点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:5点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ

麻雀、合コン、バイトetc……普通のキャンパスライフを送りながら、「その気になれば俺たちだって、何かできるんじゃないか」と考え、もがく5人の学生たち。社会という「砂漠」に巣立つ前の「オアシス」で、あっという間に過ぎゆく日々を送る若者群像を活写。<<Amazonより抜粋>>


物語は、鳥瞰型(周りにあまり関心を示さず、物事を見下している)の『北村(男)』 の視点で語られます。
冒頭、大学に入学したばかりの春に行われたクラスメートとの親睦会で、今風な軽いノリの『鳥井(男)』、美人であるが極めてクールな『東堂(女)』、おとなしいけど何故か超能力者の『南(女)』、そして、なんとも表現しようのない熱い男の『西嶋(男)』と出会います。

この男3名・女2名の大学生が、巻き込まれ(もしくは作り出し)ちゃう物語です。
有り体に言えば、本帯にもあるとおり、青春(群像)小説ということです。

読み始めてしばらくは、だいぶ昔にテレビドラマにもなった「あすなろ白書」的感触を持ちました。
この感触が今までの伊坂氏の物語と一線を画していると思ったのも事実です。

今までの伊坂作品は、どちらかと言えば、『完成された世界』に対して負荷をかけ、その影響で起こる絶妙なズレ感を、シニカルに表現していたのですが、この「砂漠」は、大学生視点の若者達の物語で、言わば『未完成な世界(成長する世界)』。
未完成な世界とは、ズレ感をも許容する世界なわけなので、この世界をどのように料理していくのか?という期待もありつつ、正直、普通の青春小説だったらどうしよう?とか不安に思ったりしました。

で、結局のところ、ちゃんと料理してもらったというのが読後の感想です。
このあたり伊坂氏、裏切りません。
春・夏・秋・冬、と四季の名を章とした4編は、それぞれに、大きな収束すべき物語が存在し、それをそれぞれに5人の若者達の個性を十分に引き立たせて、きっちり収束させます。
その中で、前章の物語を引き継いだ形で、きっちり登場人物が成長し、成長した姿として次の物語もまた、きっちり収束させてしちゃうわけです。

とても新鮮だったのは、語り手である「北村」自身の成長が、地文としてありありと語られ、読み手自身も成長した気持ちとなってしまうことでした。

さらに物語の全体に鎮座する、「大きな物語(”俺のプレジデントマン”とか”麻雀”とか”恋愛”とか)」をも、5人以外の登場人物ひっくるめて、華麗に収束しちゃったりするもんだから・・・

やるじゃん!新境地じゃん!伊坂!!って感じなのです
(注:決して知り合いではありませんが、同い年なのであえて、暴挙的コメントしちゃいます。)

同心円がいくつもあって、ひとつずつ塗りつぶしてみると、最終的に円そのものが見えないくらい大きくなっている感じなのです。(ちょっとだけ時系列ミステリー要素もあったりしてね)

・・・

(やや、興奮気味なので小休止)

・・・

タイトルの「砂漠」は、ダブルミーニングを持っています。
一つは、熱い男である西嶋(この西嶋、語り口から何から、極めてお気に入りです。)が初対面で、無責任なクラスメートに熱く語る「その気になれば、砂漠にだって雪を降らせる」の砂漠。
もう一つは、重要な登場人物である「鳩麦(!?)さん」が、語る「社会という砂漠」。

大学生やら学生時代やらの多感な時代に、意識する「心の砂漠」って非常に重要だし、一方、我々読み手とっても、個々人に意味を持つ「心の砂漠」を意識することが大事だったりするなぁと思いました。

無理やりまとめてしまいましたが、とにかく、しみじみと(あぁ、いろいろな本に浮気をしていたけれど、結局のところ、今の私には『伊坂本』なのだよなぁ)と感慨深くなりました。(2回目)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ブログで本書をご紹介している方々(やや手抜き版。すみません)

疑い得ない地点への着地を目指して さん
http://blog.goo.ne.jp/niji-purple/e/f5fc82a811f4c2798e88dbd97f239fd6
愛読随想 さん
http://blog.livedoor.jp/manatee_book/archives/50259760.html
お気楽堂 さん
http://mujikota.blog36.fc2.com/blog-entry-19.html
存在の耐えられない軽さ さん
http://blogs.yahoo.co.jp/jinfrusciante/19675693.html

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2005年07月14日(木) 22時54分32秒

「死神の精度」 伊坂幸太郎

テーマ:--伊坂幸太郎
伊坂 幸太郎
死神の精度

読前感想のない読後感想。
そう。これはちゃんと購入してみました。

当ブログは「図書館から借りた本を紹介する」というルールを勝手に作っていましたが、見事に破っちゃいます。
(ちなみに今までも書籍は購入していましたが、あえてこの書評の間でご紹介していなかったりします)
(さらにちなみに、「ルールは破るためにある。」といったのは、実際に存在した標準化を進めた某部長の談です。←決して美談ではない)


何でこんな簡単にルールを破れちゃうのかというと、伊坂作品は、このブログには切っても切れない作品群だからです。
なんせ、このブログを立ち上げたことで知ることができ、ほぼ毎月1冊ずつ読了し、ほぼ月刊「後感」では、現時点で5ヶ月連続一位だったりするのですから・・・。
で、ようやく先日既出伊坂作品をコンプリートし、新刊待ちとなった矢先の「死神の精度」なわけですから。

・・・

で、ようやく言い訳も終わったところで、本文。

・・・

6つの中編。
登場するのは死神と「死ぬ予定を持つ者達(以下、「対象者」)」。そんな彼らの7日間の不可思議な物語。死神は対象者に対して「可」と「見送り」の権限を持ち、死ぬ予定日の最後の7日間を共に過ごし決定を下す。そこで見られる様々な物語。


伊坂氏の新境地である「シニカル路線」の本書。いいですね千葉。

死神である「千葉」と対象者の的外れな会話が大変面白く、また死神自身が語り手である以上、我々とは違う視点の地文であったりするので、とてもシニカルなのです。
個人的に好きなのは、「旅路を死神」での死神と対象者森岡との掛け合い。
ターミネーターⅡばりの微妙な死神のボケに絶妙なツッコミを入れる森岡の掛け合いは、ある種、ちゃんとした漫才を見ているかのようでした。

また、あえて死神という役割自体を、お役所風に設定し、死神自体を愛すべき偏愛キャラクターとすることで、ファンタジーの中にもやっぱりシニカルに描ききっています。
仕事として割り切った「死神業務」を真面目にこなす偏愛キャラであるからこそ、少しだけ垣間見える「人情(死神なので死神情)」を、より深く感じ入ることができちゃいます。

そして、今までの伊坂作品との大きな違いは、それぞれの中編が、それほど収束しない点。
で、そんな終わり方にも納得感がある点。

これは、前述したシニカル風な視点・語り口になので、気にならなかったんでしょう。
対象者の周りで起こる物事を淡々と第3者的視点で語り、彼の中では「仕事を終わらせること」こそが、物語の終了であり、我々読み手の物語の終了であるはずはないので、ようするに「致し方なし」なわけです。

物語のテーマ自体は決して軽いものでありませんが、あまりにも軽~く読めてしまったのは、作者のシニカル路線にどっぷり楽しませてもらったからか、まだまだ私自身が「死」に対するリアリティーがない若僧なのか、どっちなのでしょうか?(たぶん両方)



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PS:読了後のたのしみ
①さてさて恒例の他作品リンクですが、今回もばっちりでした。「旅路を死神」にて「重力ピエロ」から大物ゲストが登場します。この大物ゲスト、死神と妙に波長が合い、対象者森岡が、双方に絶妙なツッコミをしております。
②一貫したテーマでありながら、それぞれが単独の物語である「死神の精度」ですが、今回はその中編内リンクがございます。詳細は控えますが、ちゃんと最初から読んでもらえれば、「ほお(死神の口癖)」と思います。


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2005年06月05日(日) 22時31分20秒

「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎

テーマ:--伊坂幸太郎



著者: 伊坂 幸太郎
タイトル: アヒルと鴨のコインロッカー

遂に完遂。現時点での伊坂コンプリート。
最後の一冊は「アヒルと鴨のコインロッカー」です。

鮮やかで・面白く
切なくて・考えさせられる作品でした。

 大学入学のために仙台に引越してきた椎名は、隣の住人から突然「一緒に本屋を襲わないか?」と持ち掛けられます。彼の標的は、たった一冊の広辞苑。―― 一方、ブータン人留学生と付き合っているペットショップの店員・琴美は、ふとしたきっかけから動物を虐待する連中と嫌な関わりと持ってしまいます。このふたつの物語は、どこでどのようにして結びつくのか?<<東京創元者(発行元)HPより抜粋>>

椎名の物語が「現在」であり、琴美の物語が「2年前」となっています。
それぞれに重なり合う人物を登場させることで、この物語が地続きになっていることが、しばらく読み進めると理解できます。そして共通の登場人物が、現在の謎を解き、2年前の事実を語ります。

これまでに読んだ伊坂作品の中では、ミステリ感は、高いと思いました。
今までに慣れてしまったことから、不意に忘れていたものを思い出してしまった感じです。
そういった意味でもお得な一冊だったりします。
だって、最近読んだ伊坂本の印象から「騙される」なんて思っておらず、全然、構えず読んでしまい、物語が進むにつれて、(あぁぁそういえば、この本はミステリだったんだ~。そうか、そうか!!)となるわけです。
はい、見事に騙されるわけです。この辺りは、ちゃんとしたミステリより気持ち良かったりします。

そして、今回も見事な収束の美。
この物語の収束の仕方は、読み手の自由な感覚に委ねつつも、ある程度の強制感もあり、個人的には好きな部類です。先のミステリ的要素もあって、ちょっとビックリしたりしますが、散在したピースはきっちりはまります。前半に語られる物語ほど、ラスト間際に収束するあたりは、読み手の琴線をくすぐります。

登場人物もそれぞれ、いちいち、魅力的です。
だいたいにして伊坂本は、
・極めて普通の人達(大抵は狂言回しとなる役)
・極めて強烈な人達(大抵は普通の人達を振り回す役)
・極めて達観の人達(大抵は物語の謎を解くことを許される役)
・極めて風景な人達(大抵は前半に登場し、後半にちょっとだけ役割を持つ役)
・圧倒的に悪い人達(大抵は最初から悪い印象を与え、最後まで悪い役)
が登場しますが、本書も漏らさず登場し、それぞれの役割を完全にこなします。
そして、漏らさず収束します。

本書には、切ないラストが描かれています。
伊坂本にしては意趣なラストかもしれませんが、個人的には気に入っています。
人の脆さ・怖さ・儚さを感じます。まさか辞書を奪うために本屋を襲う話という点から、圧倒的な広がりを見せて本書は終わります。

是非、まとまった時間を作って一気にぐいぐい読んでいただきたい作品です。「現在」と「2年前」を交互に読み進めていくことで、鮮やかで面白く、切なくて考えちゃいます。


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PS1:読了後のたのしみ
「現在」と「2年前」のそれぞれの章の冒頭が、類似しています。
例えば・・・

<<現在 4>>の冒頭
部屋に帰り、空になった段ボール箱を畳んでしまうと、やるべきことは何もなくなった。散々な成績でペナントレースを終えた、中継ぎ投手の次シーズンのように何もなくなってしまった。

<<二年前 4>>の冒頭
翌日、ペットショップへ出向くと、パスケースのことなどどうでも良くなった。とっくに昔に見限ったロックバンドの新譜と同じくらいに、どうでもよくなってしまった。


見たいな感じで、各章毎、対になっています。
これはこれでテクニックなのですが、意外に面白かった。
気がつかなかった方、章の冒頭だけパラパラと読んでみてください。
結構イケマス。

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2005年05月02日(月) 21時15分48秒

「チルドレン」 伊坂幸太郎

テーマ:--伊坂幸太郎
著者: 伊坂 幸太郎
タイトル: チルドレン

読む本読む本が、当ブログの勝手なランキングである月刊『後感』で3ヶ月連続一位 を獲得してしまい、この「書評の間」では05年の上期の大事件とされている伊坂幸太郎氏です。

で、このチルドレン。・・・やってしまいました。
伊坂本の中でも(現時点【*1】で、極めて個人的に)最高傑作です!!
(【*1】:『アヒルと鴨・・・』を残しているので)

登場人物の一人である『陣内』は、伊坂キャラの中で、(極めて個人的に)最優秀主演賞受賞です。
京極作品で有名な『榎木津礼二郎』並みの傍迷惑で、破天荒で、無鉄砲ぶり、そして格好良さなのです。
『The破天荒』陣内万歳!!

主な登場人物(犬)は以下の通りです。
鴨居・・・『陣内』の友人。
永瀬・・・盲目の青年。
優子・・・永瀬の彼女。
ベス・・・永瀬の盲導犬。
武藤・・・『陣内』の仕事上の後輩。
そして『陣内』・・・破天荒。

このチルドレンは5つの物語が構成されています。
それぞれの粗筋と誰が語り部となっているかを簡単に列挙します。

1.「バンク」【鴨居目線】
鴨居が学生時代の話。ふとした偶然から銀行強盗の人質となってしまった鴨居とその友人の『陣内』。同じく人質となってしまった永瀬の推理の元、銀行強盗が起こった本当の理由を知ることとなります。

2.「チルドレン」【武藤目線】
家庭裁判所調査官である武藤と、ある万引き犯人である少年の間で起こる奇跡の物語。厳格な父親から怯える少年の本当の意味を知ります。

3.「レトリーバー」【優子目線】
銀行強盗の人質同士だったこともあり仲良くなった永瀬と陣内。陣内の告白に付き合いされた永瀬と優子とベスは、周りの時間が止まってしまったという陣内の言葉の真意を知ります。

4.「チルドレンⅡ」【武藤目線】
家事事件担当へ異動となった武藤と、少年事件を担当する陣内のそれぞれの仕事。担当の少年を自分のライブへ連れて行こうとする陣内の行動が奇跡を呼びます。

5.「イン」【永瀬目線】
陣内のバイト先であるデパートへ赴く、永瀬と優子とベス。盲目の永瀬は、近づく陣内に異様な雰囲気を察します。

『陣内』以外の登場人物の語りによる、『陣内』に関わる物語が5編。
一つ一つの物語は、今までの既読の物語に比べて日常的です。
なんせ、人が一切亡くなりません。

どこか牧歌的な雰囲気すらある5編の物語ではありますが、ストーリは日常に潜む奇跡の物語であり、根底にあるのは『陣内』その人の生き方や、周りの人間への影響そのものだったりします。
特に偶数編の「陣内社会人編」(と、勝手に命名。ちなみに奇数編は「陣内学生編」です)における陣内の後輩武藤へ対する、破天荒・無鉄砲でありながら愛情のある会話群は、秀逸であり、(こんな上司に私もなりたい。)と思ったりするものでした(年齢的には、時期なもので・・・)。

(チルドレンⅡより。職場の仲間で飲みに行き、昨今の少年犯罪に憤りを感じている、別の中年男性から絡まれた時)
「駄目な奴はどうやったって駄目なんだよ。更正させるなんて、奇跡みたいなものだ」
「それだ」陣内さんがそこで、男に向けて人差し指を突き出した。「そう、それだ」
「そ、それって何だ?」
「俺たちの仕事はそれだよ」
[だから、何なんだ」
「俺たちは奇跡を起こすんだ」
座席の周辺がしんと静まり返った。
「少年の健全な育成とか、平和な家庭生活とか、少年法とか、家事審判法の目的なんて、全部嘘でさ、どうでもいいんだ。俺たちの目的は、奇跡を起こすこと、それだ」
~中略
「俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?」

いやはや極めて個人的には、決して読むことのない『自己啓発本』にでもなってしまいそうな勢いの伊坂本です。

追記:第18回山本周五郎賞(新潮社主催)の候補作になったようです。選考は5月17日。
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