「クチュクチュバーン」 吉村萬壱 2007-031 | 流石奇屋~書評の間

「クチュクチュバーン」 吉村萬壱 2007-031

吉村萬壱のデビュー作「クチュクチュバーン」読了しました。

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吉村 萬壱
クチュクチュバーン
出版元
文藝春秋
初版刊行年月
2002/02
著者/編者
吉村萬壱
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:2点 
ぐいぐい:5点 
キャラ立ち:4点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
ある日突然、世界のすべてが変わる。蜘蛛女、巨女、シマウマ男に犬人間…地球規模で新たな「進化」が始まる。究極のグローバリゼーション?新しい人類の始まり?「巨大な塊がクチュクチュと身をよじらせて、バーンと爆発する」。小説界を震撼させた、芥川賞作家、驚異の文学界新人賞受賞作。<<Amazonより抜粋>>



冒頭の母子の話あたりを、読み進めていくと、既視感のようなものにとらわれしまいまして、よくよく考えてみたら、書評以前・若かりし頃に借り出している本であることを思い出しました。
しかも、そのときは、最後まで読むことができなかったという事実までも思い出しまして、で、今回の読了となったわけです。
ま、若かりしころの私と今の私の違いってことではないのですが、最近、この手の小説をちゃんと読めるようになったな~と自画自賛しちゃいます。

ということで、本文。
表題作「クチュクチュバーン」と「人間離れ」の2編が所収されています。
「変態しつづける人類の物語」と「異生物による襲来の物語」

どちらも圧倒的な小説世界であり、端的に表すならば「地獄絵図」のような物語です。
あらすじだけ読むと、なんだかユーモア含みの物語と思われがちですが、きっちり裏切ってくれます。

2作共通して、そこにあるのは、変異し続ける人間と、そんな人間達の生への固執。
生き続けるという最大の欲望を、これでもかこれでもかと読み手に訴えかけ続けています。

この世界を作り上げられることのできる、吉村氏のイマジネーションと、またそれをちゃんと文章化できる吉村氏の筆致に脱帽してしまいます。
要するに、この発想って、起きがけにすっかり忘れてしまう、得体の知れない夢のようですからね。

万人には、決してオススメできませんが、「この作品を、この人には読んでもらいたい」って人が周りに一人でもいれば、それは幸せなことだな~と思っちゃったりもします。