№122 「水の迷宮」 石持浅海 | 流石奇屋~書評の間
2005年11月10日(木) 23時23分48秒

№122 「水の迷宮」 石持浅海

テーマ:--石持浅海
石持 浅海
水の迷宮

2005年8月の月刊『後感』 では堂々4位を取得した「BG、あるいは死せるカイニス」 の石持氏の2冊目です。
「BG・・・」では異世界の中での特異な設定のなかで、特異であるが故のミステリを読ませてもらい、それなりに面白かったのです。

で、本作。
結局のところ、本帯にあるとおり「胸を打つ感動と美しい謎。」なわけで、きっちりとした殺人ミステリでありながらハッピーエンドという、犯人を含む登場人物が全員立派な人だという、で、「そんな都合良く話がすすんでしまったいいのん」と、そんな作品です。
ちなみにAmazonでは相当評判悪いようですが、ミステリ自体はそれほど悪くありません。
ご都合主義を、圧倒的に容認できる方なら、感動すらできる作品です。

夢を実現に導くために。事件の謎を解く鍵は、三年前に片山が見た夢。
三年前、不慮の死を遂げた片山の命日に事件は起きた。首都圏の人気スポット・羽田国際環境水族館に届いた一通のメール。そして、展示生物を狙った攻撃が始まった。姿なき犯人の意図は何か?自衛策を講じる職員たちの努力を嘲笑うかのように、殺人事件が起きた!――すべての謎が解き明かされたとき、胸を打つ感動があなたを襲う。<<Amazonより抜粋>>


本書のミステリは、大きく3つあります。
①3年前の片山の死の謎
②3年後(現在)に起こる、展示生物を狙った攻撃の謎とその犯人
③その展示生物を狙った攻撃の中で起こる、殺人事件の真意とその犯人

で、探偵役である「深澤」が、脅迫される水槽の順序②や、殺人事件の見立て③が、①の事件を想起させ、あるヒントをきっかけに事件の解決に導きます。
そして②も③も解決し、えいやと①まで解決し、感動をし、なんなら、水族館職員が一丸となってある事業を立ち上げるに至ります。まさに「えいえいおー」なわけです。

・・・ここまで、この感想を読み続けていただき、「?」と不思議に思った方は、まずはお読みいただきたいところです。そして、(あ、「えいえいおー」だ。)と思っていただければ良いわけです。

決して勇気付けられるほどの感動ではないのですが、こんなミステリーもめずらしいなぁと思いました。だいたいにしてこの手のラストで幸せになるのは、「被害者周辺」か、「(同情票を得て)加害者周辺」か、最近流行りの「全員、不幸(要するに非救済)」のはずですが、本作は、登場人物が全員(犯人も、もしかしたら被害者すらも)が、最終的にみんな幸せだったりする訳です。

・・・このあたりも読んでいただければ、事情は理解いただけるはずです。

で、めずらしい作品だなぁと思う反面、最後の最後に一言だけ言わせてもらえば、解決部分は物凄く不自然なのです。

言われもない「違和感」の正体は、探偵役の深澤が、心理まで踏み込んだ解決をしてしまっている点であり、その心理事情を深澤自身が語ることにより、罪悪をすべて許してしまおうという主旨が、はっきり伝わってしまうことなのでしょう。

「死人に口なし」とはよく言ったもので、そりゃまぁ、殺人事件の被害者の心理描写を、本人に成り代わって発言することまではまだしも、そこにいる犯人の心理まで説明することはないだろと思うわけです。
超絶した探偵だという評価ができちゃいますが、そういったメタ要素があるわけでもないので、これまた相当の違和感があったのです。そこが残念。

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