「逆説探偵-13人の申し分なき重罪人」 鳥飼否宇 | 流石奇屋~書評の間

「逆説探偵-13人の申し分なき重罪人」 鳥飼否宇


鳥飼 否宇
逆説探偵―13人の申し分なき重罪人

鳥飼氏の3冊目。

「小説推理」に04年5月から1年間連載された12編と書き下ろしの1編で構成された13の連作短編集。
とにかく1編が短いので読みやすく、13編同じパターンでくるかと思えば、微妙に時間軸が進んでいるので一筋縄ではいかない作品です。

綾鹿警察署・五龍神田刑事が、次々と起こる事件の謎に挑む!事件解決のヒントは、正体不明のホームレス十徳治郎が握る。あまりにも意外で皮肉な12人の真犯人とは!? そして、最後に残る物語最大の謎とは!?・・・。<<本帯より抜粋>>

本書は、各編とも
①不可解な事件が起きる→
②五龍神田刑事が事件を追及する→
③ホームレスのたっちゃんのところに行く→
④隣にいる「じっとく(十徳次郎)」がヒントを与える→
⑤五龍神田刑事が最後まで話を聞かずに、そのヒントから犯人を導く→
⑥上司の谷村(もしくはその配下)がその説を打ち破り真犯人を告発する。

といったパターンが途中まで繰り返されます。

このパターンの面白いところは、⑤で謎の解明ができたはずが、実は⑥という解答が正しいというところなのですが、後半にしたがってこのパターンが崩れていきます。
具体的には④でヒントを与える「じっとく」が失踪し、怪しい探偵が出現するあたりからなのですが、今までは、あわてものの五龍神田刑事の推理が、ぴしゃりと当たり始めるといった趣向です。

それから、身内(例えば前の編まで活躍していた刑事など)の犯行が多いというのも本書の特徴であり、事件に関与している人間が一番の容疑者であるというセオリーをちゃんと守っています。
ただここまでやると「使い捨て感」があって、意外に暴力的なストーリなのかもしれませんが。

そして、この物語の全体の謎は「じっとく」の正体なのですが、このあたりは注意深く読んでいれば気がついちゃいます。

前述しましたが、全体を通じて「ライト感覚な読物」(本帯にもキャッチコピーとして書かれています)ですので、2~3編を寝る前に読むには最適な本です。