Lurked Gloom 13 | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

ある時は嵐情報。またある時は櫻葉妄想小説。自由に生きております。
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これまでのお話

Lurked Gloom【1】

【11】 【12】






[8月XX日 土曜日 21:00 Side.S]



都内のバー、フロアの最奥にある個室。

松潤に呼び出された俺は、一歩一歩がこんなに重くにも感じるんだなと妙なところに感心しながら、決戦の地に向かう武士の気持ちで歩を進める。




「お待たせ。」




個室の中、雅紀がいるかもしれないと覚悟していたけれど、そこにいたのは松潤ひとりで、心の隅でホッとする。
実は雅紀がいたのでは、平常心を保てるか自信がなかった。


まずは乾杯をして、当たり障りのない話を交わす。


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「・・・でさ。相葉くんの事なんだけど。」


ドクン。

来た、と思った。



「翔さん、何か聞きたいこと、ある?」



何だよ、ソレ。俺に言わせんのかよ。


発言する代わりにグラスに残ったビールを、喉を鳴らしてグビグビと飲み干す。



「・・・っ、え?」



聞き取れなかった風を装いながら空のグラスをテーブルに置き、松潤を見ると、彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべた後、口を開いた。


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「翔さんさ、最近相葉くんと会ってる?」



「・・・まぁ、それなりに?」



「じゃあ質問変える。最近、相葉くんのハダカ見た?」




新しいグラスに水割りを作り、空のビールと置き換えてくれながら松潤が覗き込む。




「ハァッ?なんだよ、それ」




なかなか核心に触れようとしない松潤にイライラした気持ちを隠さずにぶつける。




「ふふふふっ、まぁそんな怖い顔しないでよ。あの人さ、今、カラダ作ってんの。知ってた?」



「カラダって・・・ブラストで?」




思いがけない話の流れに、カラン、と音を立てて松潤の作った水割りでのどを潤し、クールダウンする。




「うん。相葉くんさ、ジム以外にも、DVD見ながら出来るからって、腹筋しに今ウチに通ってんだよ。」



「・・・。」



「こないだ、ほら、先週の火曜日?収録の後、相葉くんが誕生日にってマシン買ってくれてさ。ハワイに行くまでは自由に使わせるって条件で。

今日あたりも、来たんじゃないかな?・・・つうか、あの人、変なとこで頑固だからさ。パッと見て気付いてもらえるくらいになるまで翔さんに内緒にしておきたいんだ、って。言ってたよ。」


「火曜・・・」

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「そう、火曜日。中目のマンションにさ、サンプル揃えたトコがあって、相葉くんと一汗かいて決めてきたんだよ。」



「一汗かいて・・・」



「そこシャワーも完備でさ。」




「じゃああいつが持ってたキーって・・・」



「あぁ、オレんとこの。」




そういうことか・・・全てに合点がいく。



「・・・・・。」



それ以上、言葉が出なかった。
ただ、自分の思い込みがずいぶん的外れだったということが、どうしようもなく恥ずかしく思えた。




そうなると、グラスに残る酒もがもどかしく、脳裏に浮かぶのは雅紀の顔ばかりで・・・


あんなに雅紀の笑顔が好きでそれを護ると誓っていたはずなのに・・・



『どしたの?こんなとこで・・・風邪ひいちゃうよ?何にもかけないで・・・』

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そう言った雅紀が不安そうな顔をして近寄ってきたのを分かってて、わざと起き上がって遠く座った。



そうしないと、キスをしてそのまま力任せに乱暴に組み敷いてしまいそうだった。



疑いの気持ちから力ずくで雅紀を抱いて、傷つけてしまいそうだった。



もしも雅紀が気持ちを殺して俺と一緒にいるのなら無理して付き合わせたくなどないと思っていたんだ。






でも、違った。完全に俺が勝手に思い込んで、考え込んでいただけだった。



雅紀の事を信じきれなかった自分が許せなかった。





「ゴメン、翔さん。オレまさかこんな風になると思ってなくて。すげえ軽い気持ちで、オレが相葉くんに、翔さんに内緒にしたらって言ったんだ。相葉くんは悪くないんだよ。」

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「うん、分かってる。話してくれてありがとな。俺、目ェ覚めたわ。松潤もアイツも悪くねぇよ。・・・悪ィ、俺もう行くわ。」


「うん・・・ホント、ごめん。」


「いいって。マジで。大丈夫だから、気にしないで?」





店を出た俺は頭ン中、雅紀の事でいっぱいで



つかまらないタクシーを待つよりも早く



早く雅紀のもとに行きたくて



携帯のコールを聞きながら走り始めていた


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...to be continued
LurkedGloom14