二人、一瞬の呼吸ですれ違う
闇の市の杖が光り
同時に
二歩の市も仕込杖も鞘を離れている。
二歩の市が倒れる。
が、ややあって
闇の市も・・。
どこからか静かに、桜の花が舞い降りてくる。
夜目には、それが雪のように見える。
と、倒れていた女が、静かに身体を起こす
くの市「死ぬことでしか、たどり着けない場所があるんです。
・・・・夢の世界。男の人はそこに行きたいのです。
でも、そこへ行き着くためには、どうしても一度は
・・・死ななくてはならないんです」
女、フラリと立つ。血まみれである。
くの市「あの人が好きでした。
・・・だからあたしの手で死なせてあげたんです。
死にたがっていました。
・・・だからこの手で殺したんです」
蹌踉(そうろう)として・・・
(足がよろめくさま)
くの市「花が散り
また咲くように・・・
女は死に・・
また咲くのです」
振りかえり
くの市「女は桜・・・日本です!」
