
映画ではないのですが
時間的にも
内容的にも、
しっかりと映画並みのボリュームがあるので
こちらに書くことにしました。
基本
一話完結ですし。
仕掛人 梅安といえば
池波正太郎の生み出した人気キャラで
いままで
映画で萬屋錦之介
ドラマで
緒方拳
渡辺謙
そしなぜか観たくない
岸谷五郎
今日紹介する梅安は
小林桂樹。
昔の東宝の
多彩なジャンル
悲劇から喜劇から特撮から
訳のわからない映画まで
とにかく
深刻な難しい役でも、
親しみ安い
分かりやすい
普通の人物に仕立て上げ
普通のお客に分かりやすく演じる。
映画が娯楽の王者であった頃を
象徴するような役者さんです。
表は善良な鍼医師
裏では悪に鉄槌、いや鉄鍼をくらわす殺し屋
まるで
小林桂樹のために作られたような役である。
とはいえ
池波正太郎の必殺や仕掛人シリーズは
いい意味で
ワンパターン、
大体、話のパターンは決まっていて
へたをすると
水戸黄門のように
安定と安心を欲する
老人たちだけが楽しむ
物語になってしまう。
必殺も
初期のころは
どこかにどす黒い人間の欲望の殺意を秘めていたが
長く続くに従って
舅と女房にいびられながら
殺しの瞬間にだけ輝く・・という
世の親父だけが喜ぶパターンに
没してしまった。
この梅安シリーズは
他の作品と比べて
あまり多く作られなかったせいもあり
初期の雰囲気は継続していた。
その中でも
今回紹介する物語は
特に
ダークである。
迷い箸・・という副題の通り
梅安も
相棒の彦次郎も迷ってます。
ヒーローの迷いと言うのは
つまりは正義を行う・・という名目での
殺し・・の迷い。
それは
世の東西を問わず
最近の
「ダークナイト」まで
共通であります。
さらには
悪を悪と決めるときの
善と悪の境界線
自分が
正義で
あったとしても
たとえ
相手が悪であったとしても
殺す・・という行為に違いはない。
そうなってくると
もう
正義の味方・・という概念自体が
ぶれていく。
まず
自分の殺し・・の陰で
泣いている人がいるかもしれない・・
たとえ悪の存在であっても
人の子であり
親でもあるかもしれない・・。
そう言って
相棒の彦次郎が、
しばらく仕掛け(殺し)はやらない・と言いだす。
そして
梅安も、
自分の中にあるトラウマを告白する。
それは
自分を捨てた
極めて母性の薄い、
母親に対する
言いようもない感情。
つまりは
母親の中にある女・・に対する怒り。
梅安は言う。
「女を殺したら地獄だよ」
それは
女に惚れて
女の中の本当の女に触れたら
地獄だよ・・とも聞こえる。
結局は
彦次郎も
そして
梅安も
嫌がっていた女に
仕掛けるはめとなる。
物語の性格上
殺す相手は
欲ぼけした典型的な悪で
殺されて当然・・という存在として表現されるが
そもそも
欲を持って行動するのは悪なのか?
そもそも
母というのは女であってはいけいなのか・・という
問題まで行くと、
もう物語は成り立たなくなる。
梅安を演じる小林桂樹も、
彦次郎を演じる田村高廣も、
その言いようもない迷いを
全身で
そして
眼で表現する。
どうせ俺たちもロクな死に方しねえよ・・
正義を行う殺し屋たちが
そう自虐的に呟いた瞬間から
正義の味方は物語の中から
消滅していった。
物語。
梅安は音羽の半右衛門(中村又五郎)から
紀伊家広敷用人・川村甚左衛門(久富惟晴)の仕掛を引き受ける。
川村は紀伊家御用達の料理茶屋「橘屋忠兵衛」の女房・お梶(池波志乃)と通じていた。
そしてお梶は大坂から戻ってきた小杉十五郎(柴俊夫)が、
大阪の元締・白子屋菊右衛門から受けた仕掛の相手だった。
梅安は小杉を仕掛の道へ引き入れまいとするが……。


