まず最初に、言いますが、この文章は、僕にはめずらしくネタバレします。
そうしなければ、この映画のすばらしくを紹介しきれないので・・。
最近、なんか映画の本筋とは関係ないところで、
その映画のよさを紹介するという変化球を続けていたので、
この映画のレビューは、本筋を真っ向から取り上げて、そのすばらしさを紹介したい。
もちろん、おまけ画像もある。
まずこの映画のファーストシーンは、もう娯楽映画の見本である。
雪が降り積もるなかをふたりの男がくる。
そこは、核ミサイルの発射基地。
ふたりの兵隊は、いつものようにコンピューターの前に座り、いつも通りの業務をこなそうとする。
そこに、突然、緊急指令。
命令はシンプルだ。
核ミサイルの発射スイッチを押せ!!
その極端な命令に、
ひとりがひびって躊躇した。
「もう一度、本部に問い合わせよう」
しかし、もうひとりは取り合わない。
「これは疑う余地のない、正式な命令だ」
ふたりが、同時にキーを回さなければ、核ミサイルは発射しない。
しかし、ひとりは、キーをまわすのを拒絶する。どうしても信じられない。
もう一度、確認を・・。
「できない・・」
そんな男に、もうひとりの男が銃を向けた。
「キーに手をかけろ!」
そこに、タイトルが出る。
「WarGames」
シーンは、代わって、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の会議室。
ここで、さっきの発射基地のシーンが、兵士たちの意識を確かめるためのシュミレーションであることがわかる。発射のキーをまわさなかった兵士があまりにも多かった。
これではどうしようもない。
そしてNORADの核戦略システムをも管理する人工知能コンピュータ「ウォーパー」が、人間の手の介在しない完全コンピュータ化されてしまう。
なんて見事な、シナリオだろう。
これで、説明が一番、難しい、人工知能コンピュータ「ウォーパー」に人間の手が一切、介在しない状態になる過程というのを、簡単にやってのけてしまった。
それも極めて、サスペンスな展開によって・・。
これが僕がよくレビューに書く、物語を止めないで、難しいことを説明するテクニック。
これを劇場で観た時は、あまりの見事さに、のけぞってしまった。

さて、このコンピューターに不正アクセスするマシュー・ブロデリック演じる高校生。
これが無邪気で楽しい。
無料で電話をかけるテクニックを使い、さまざまなゲームが楽しめるホストコンピュータ「ジョシュア」に接続する。しかし、これがNORADの核戦略システムをも管理する人工知能コンピュータ「ウォーパー」だったのだ。
そこにある、いろいろなゲーム、つまり戦争シュミレーションの中から、アメリカ合衆国とソビエト連邦(現ロシア連邦)との核戦争をシミュレーションするゲーム「世界全面核戦争」を見つけ、クラスメイトのジェニファー(アリー・シーディ)とはじめる。
ゲームと思っているのでふたりは、めちゃくちゃやる。
無邪気にめちゃくちゃな攻撃をかける。
それがリアルタイムで、北アメリカ航空宇宙防衛司令部に伝わって大騒ぎになる・・という対比が、本当にうまい。
母親から、ゴミを出せといわれてコンピューターを切った途端に
防衛司令部の巨大なモニターが消える。
唖然とするバリー・コービン演じるベリンジャー将軍の顔が楽しい。
やがて、それが単なるシュミレーションとわかるが、すでにコンピューターは戦争をはじめていた。
ここでファーストシーンの人間の介在しない状態というのが効いてくる。
冗談が、遊びが、本気になり、とんでもないことになっていく・・。
この辺のシナリオの呼吸を読み取り、演出するジョンバダムがすばらしい。
いくらシナリオが見事にサスペンスでも、演出に腕がないと、本当につまらない画面になってしまう。
人間の介在を拒絶して全面核戦争に突入していくコンピューターをとめるために、
隠棲中だった開発者のフォルケン(ジョン・ウッド)が、最後に、彼とやったゲームが
わざと引き分けにして、これを何度もコンピューターにシュミレートさせた。
何度も何度も・・。
やがてコンピューターが、迷いだす。
そのときの表現がすごい。
映画館で観ていた時、この画面一杯に明滅するモニターの迫力に圧倒された。
ただそのシーンにとても細かい演出がある。
明滅するモニターの前を、かならず人間が歩いているのだ。
モニターの巨大さを表現するために・・。
バダムというひとは、こういう細かいところが、本当にちゃんとしているのだ。
結局、核戦争は回避されるのだが、
実は、まあ、アメリカ映画にはよくあるのだが、
この映画には、もうひとつのラストがあった。
つまり核戦争を止められなかった・・というラスト。
ただ僕は、回避されるというラストのほうがよかったと思う。
「チェスでもやりませんか?」
いいセリフだ。
さて、おまけ画像だが、この映画でジャック・ベリンジャー将軍を演じたバリー・コービンというひとの、ファンサイトがあった。これがすごい。
こんな画像が、ぞろぞろあるのだ。
それも出演作すべてに・・。
これは、イースウッドの「ダーティファイター 燃えよ鉄拳」
やはり持つべきものは、熱心で芸の細かいファンである。










