ボクサーはとてもプロと呼べる収入ではないことはすでに書いた。

もちろん、勘違いしたまま始める人も多いだろう。

けどやはり、少しすれば普通気付く。

それでもなお、ボクサーはリングに上がる。

自らの命さえかけて。


何故なのか?


その理由は、人それぞれだろう。

それを表現するには、またさらに人それぞれだろうけれど。


夢?

そう言えば間違いはないが。


是非、今一瞬、自分の答もしくは推測を考えてみてほしい。


ボクサーが戦う理由を、あなたは何と答えますか?


自分なりにそれを表現するとするならそれは。


金には替えられない。

トロフィー、表彰状、チャンピオンベルトさえも、形に残る記念品でしかない。

人それぞれ、すごいという人もいれば認めない人もいる。


しかし本当に価値あるものこそ、形には出来ないんじゃないか。

人の意見で決められるものではないんじゃないか。


「すごい」っていう人にすら、聞いてみたい。

あなたにその価値本当に分かりますかと。


人知れず、ひたすら耐えてきた思いもあった。

そういうもの全てを、別に人に分かってもらおうと思わなくていい。


自分が、分かっていればいい。

自分しか、最終的には分からない。


そしてそれは、確固たる自尊心となる。

それは、自分で勝手に作り出した見栄やプライドとは根本的に違う。

それは、人に傷つけられることがない。

それは、人に認めてもらうものでも、まして分かってもらうものでもない。

それは、年月と共に色褪せたりもしない。

けれどそれは、人に言う、ましてや誇るべきことではない。


それを俺は。

「心の勲章」と呼ぶ。


おそらくほとんどのボクサーが飢えて求めているもの。

文字通り筆舌に尽くし難い思いをしながら得たいもの。

ボクサーの本当の報酬。

それを表現すると、心の勲章に行き着くのだ。
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