星がとても美しくて、寒いのにわざわざ周り道して帰宅しました。





キーンと張りつめたように寒い夜が私は好きです。





ストーブの暖かい炎の灯りも。





今月は久しぶりのグレコ・ライヴがあります。





そのためのプログラムをずっと考えていました。




東京における私のホームグラウンドのようなライヴハウスでもあり、私にとって実験の場でもあります。





それは、ここでしか出さない曲があるから。





実験というと、私はデビューの直後、定期的に行っていたライヴがあります。





デビューアルバム「懺悔」の中に、寺山修司さんが書かれた作品「ふしあわせという名の猫」という楽曲を録音したことをきっかけに(私は寺山修司さんの大ファンでもあります)、寺山さんの奥さまでいらした九条今日子さんとホテルオークラでお目にかかりお話しをして、「演劇実験室」の高名を拝借し、「音楽実験室」という名をうったライヴを毎月やっていました。





どんどんとマニアックなことになっていき(私はマニアックだとは思わなかったのですが)、数々の作品を歌っていた今では思い出のライヴです。





シャンソン、クラシック、ジャズ、ロシア民謡、クルトワイル、武満徹、端唄から果ては軍歌から御詠歌まで。





魅力的と思った作品を片っ端から歌うライヴでした。






それは私にとって勉強でもありましたが、どんどん尖ってゆくような気持ちになってしまい、ある時を期にもう辞めようと思ったのです。





あまりに音楽が私の中で鋭く尖ってゆくような気がして…。





あれから9年ほどたちますが、少しポピュラリティとコアな楽曲の交わるツボみたいな場所がちょっとだけわかってきたような気がします。





ポピュラーも大事、でも佐々木秀実には、そのちょっと尖ったような楽曲も大事なのです。





そんな作品をチラリとグレコでは出せるような気がしています。





甘い林檎を剥くときのナイフの怖さ、頬ずりしたいほど美しく咲くバラの棘にドキリとする、あの感覚に似ているな…と。





大劇場では出さない楽曲をグレコでは出せるのです。





毎回、全国各地からいっぱいに集まって下さるようになり、それはとても幸せなことと心から感謝しています。






さて、今回は何を出してみようかしら。





色褪せた楽譜を取り出しながら、悩みながら、楽しい時間でもあります。