病気になったら病院へ、
病気になりたくなければ鍼灸を。
群馬県前橋市を拠点に出張専門鍼灸を開業している、
ささき ひでかず
(本名・佐々木秀和)
です。
今回は精を取り上げます。精は気血津液とともに生命活動を維持するための基本物質のひとつです。人体を成長させて器官や組織を作る働きがあります。誕生から発育、生殖、老いに到るまで人間の一生に深く関わりがあります。
先天の精と後天の精
精とは気血津液とともに生命活動を維持するための基本物質であり、最も根本的な物質であるといえます。先天の精と後天の精があり、先天の精は父親の精と母親の精とが合体した特別な精です。後天の精は飲食物から生成された水穀の精微と自然界の清気とが合体した精です。腎に蓄えられた先天の精と後天の精が合わさったものを腎精といいます。また、精は各臓腑に配分されて臓腑の精となりますし、腎精は生殖に関与する作用を持つ精(生殖の精)を含んでいます。
腎精は成長に関わっており、飲食物の不足や脾胃の不調があると後天の精が生成出来ず腎精が減少します。発育の遅れや二次成長の遅れ、老化現象が生じます。
成長と生殖の重要な作用だけでなく、人体の器官や組織を滋養する働き、必要に応じて気、血に変化する働き、神(生命活動)の機能を保つ働きがあります。
参考までに。身体の仕組みは気の類(精、気、神)、形の類(臓腑、五主、五華、五官)、経絡類(経脈、絡脈、経穴)から成り立ちます。

精と天癸
こちらでは成長とともに重要な生殖に触れていきます。生まれてから腎の生理機能が徐々に盛んになり一定程度まで充足すると、生殖機能の成熟を促す物質である天癸が産生され、生殖能力が備わります。
生・長・壮・老・死と分けて考えると、生は誕生から7歳頃までの幼児期、長は16歳頃までの青年期、壮は17歳〜33歳頃を指し、それ以降は老の時期になり、老化現象が生じ死に至ることになります。
生…継続的に腎精を産生するため、歯が生え、身長や髪が伸び、目覚ましく成長していきます。
長…女性は7年周期、男性は8年周期で生理的な変化があるとされます。テレビCMで見聞きした方もいらっしゃるはずですね。女性は14歳頃、男性は16歳頃になると天癸を腎精から生成します。女性は初潮が起こり妊娠が可能になり、男性は精液を作るとされます。
壮…生長がピークに達し、生命力、生殖能力などが充実した最も頑強な時期になります。
老…徐々に腎精や腎気の生成が減少し、女性は49歳になると閉経を迎え、男性は56歳になると生殖能力が衰えていくとされます。以降、白髪や脱毛、物忘れ、失禁、足腰が弱るなどの老化現象が生じ、死に至ります。

精と気血津液との関係
精と気の関係…精は気を生じます。精は腎に貯蔵され、絶えず原気を生み出します。原気は各臓腑に行き渡り、臓腑の気として各臓腑の作用を発揮させます。気は精を生じ、固摂します。気が充足することにより臓腑の機能も正常に働きます。また、気は精の化生を促進するだけでなく精を固摂(漏れ出さないようにする)してます。固摂されることで精は充実し、過度に消耗することもありません。
精と血の関係…精は血に変えます。精の一部が脈中に入り、血の構成成分となります。一定の血量を維持しているのは必要に応じて精から血を補充しているからです。また、血は精に変えます。全身を巡っている血は臓腑に精を補充します。血が充足し、臓腑を滋養することにより精に変わることに寄与してます。
精血同源とは、精と血はいずれも水穀の精微より形を変え、精は血を生じ、血は精を生じるという相互転化の関係にあることをいいます。滋養や神の維持などの共通作用があります。
精と津液の関係…精と津液はともに水穀の精微から形を変え、身体を潤す特徴があります。どちらかが不足するともう一方も不足します。