言うまでもない。
日本では毎年100万人が新規でつみたてNISAを始め、RL360やITAなどのオフショア積立を契約する物好きは1万人も居ないのだから、1,000万口座にも届きそうところまで成長した積立投資市場の主役は間違いなく政府推奨のつみたてNISAであり、その陰でオフショア積立市場は消滅しそうな勢いだ。
今更、ITAやRL360といったオフショア積立をやった方が良いという熱弁を振う気にはなれないが、そもそも日本円でしか収入のない若者達がつみたてNISAだろうがオフショア積立だろうが、20年以上の長期積立投資を今からやるべきかどうかという根本的な疑問に触れたいと思う。
長文になるが、特に20~40歳くらいの方々が、これから積立投資、特に今からつみたてNISAを始めようとしているなら読んで欲しい。
まだ日本にはつみたてNISAの影すらなかった15年くらい前の歴史を振り返ってみると、当時小さなブームとなったフレンズプロビデントなどオフショアの積立投資を始めたひとのモチベーションは、年平均10%の運用を期待して得られる超絶な複利効果と、税金を取られないタックスヘイブンでの蓄財という、夢に満ちた?部分に牽引されていたように思うが、運用結果はドル建てで10年経ってもプラス10%、良くて20%程度だし、OECDによるCRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)の普及により、タックスヘイブン(租税回避地)の資産もガラス張りになり、利益確定時の課税居住国における徴税からは逃れられないという夢のない現実に今や晒されている。
2018年1月から、英国のISA(Individual Savings Account)を元に、日本でもつみたてNISAという非課税枠を持った積立投資プラットフォームが上市されたが、それまでは海外レベルのまともな積立型年金プラン(Savings Plan)というものはヤミで流通していたオフショアセービングプラン=オフショア積立くらいしかなかった。
そのつみたてNISAにおいても、「毎月5万円を30年間積みたてれば1億円も夢じゃない」的な、いつかどこかで聞いたような宣伝を見かける。
15年程前に某投資顧問会社がやっていた海外ファンド積立の宣伝文句と同じだ。
最近の証券業協会と金融庁による、「つみたてNISA普及活動」の内容は、ほぼ15年前にネットワーカー達が中心となって口コミでフレンズプロビデントのプレミアというオフショア積立を普及していたときの誇張表現とさほど変わらないが、なにせ政府のお墨付きなので信頼できそうに思えるところが怖い。
もちろん、年10%の利回りを複利で計算すれば可能な数字だが、10年以上前にオフショア積立を始めたひとは、その「複利マジック」が今のところ実現していない現実を知っている。
これは、オフショア積立の手数料が高かったからではない。
むしろ、ファンド単体で見れば手数料は安かったにも関わらず、世界の株式市場、特に新興国のファンドの伸びが悪かったからに他ならない。
簡単に言えば、米国株式ひとり勝ちの状況だった。今後はどうなるかしらんが。
スイッチングのできないNISAで、オルカンやS&P500を買い続けていた場合でも、その途上では必ずマイナス運用があり、それ故ドルコスト平均法が効いてくる。
そして、ファンドで保有している限り、NISAでも一緒だが毎年保有分をスイッチングか売却で利益確定し続けない限り、ファンドの価格は年単位ではプラスだったりマイナスだったりする訳なので複利計算は机上の空論化する。
免税の部分では、金額の上限はあるものの、つみたてNISAが提供してくれているので、「別につみたてNISAでいいじゃん」となっても不思議はないのは理解できる。
ただ、つみたてNISAの場合、投資元本で年120万円まで総額で1,800万円までという免税範囲ギリギリまで使って月10万円のつみたてを15年して、最終利益が200万円くらいあったとしてもたかが40万円くらいのショボい節税にしかならない。
新NISAになって、免税投資枠は拡大されたものの、それでもこの投資金額の上限設定は明らかに富裕層向けではない。
運用益に関しては、免税の上限設定はないので、元本が倍になろうが3倍になろうがキャピタルゲイン税はかからない。
運用期間も制限がないので、運用が更にプラスになるのを寝かして待つこともできるが、数年後には逆にマイナスに転じる可能性も十分にあり、利益がマイナスで解約したら免税のメリットは当然ない。
このように考えると、毎年単位で利益を確定していかなければ、おそらくNISAで免税のメリットを最終的に得ることは難しいだろうと考えられるが、もっとも多くの人が解約するタイミングがマイナス運用の時であるということを考えると、素人が利益確定し、NISAの節税のメリットを享受することはほぼ不可能なのではないかと思う。
一方、オプショア積立の場合は、ファンドのスイッチングによって解約しなくても利益確定や損切りが可能な柔軟性が有り、満期時に確定した利益に関してはNISAのような免税ではない代わりに積立金額の上限もない。圧倒的に富裕層向けのプロスペックだ。
オフショア積立を10年以上日本のクレカでコツコツと続けててきたひとにとっては、運用成果は当初の目論見に届かなかったかもしれないが、ドル建てで積みたてていたのであれば、今高くなっているUSドルをドルコスト平均法で買ってきた事になるので、為替差益だけでプラス30%くらい出ているだろう。
そして、これは解約したり引き出しをしなければ利益は確定していないので課税されない。
今後まだまだ円安が進めば更にこの為替差益は大きくなる。
このように、オフショア投資の過去の15年くらいを振り返ってみると、ドル建ての運用では大した益が出ていなくても、円建てで見ればほぼみんなが得をしている。
今後10年のドル円為替をを平均すれば、今より円安なのか円高なのか?が問題であり、その要素の方が運用がどうなるかよりも遙かに重要なファクターとなってしまっているところに、今後オフショア積立をやるべきかどうか?また、やっていけるのかかどうか?の難しさがある。
しかし、日本に住む殆どの人たちが、今後これ以上円安は進まないだろうと楽観している点は非常に興味深い。
日本円という通貨のヤバさは、地震が来て津波も来ているのに、誰も警報を出さず、さらに津波なんて来るわけがない根拠のないデマが溢れ、結果として誰も逃げてないから私も逃げる必要ないと思って逃げないのと似ている。
少なくともインフレがまだ進むことは間違いないが、であれば特定の通貨でのインフレ率を超える利回りが、その通貨での期待できなければ、その通貨の価値はどんどん下がることになる。
持っているだけで腐っていく(えんぴつ街のプペルに出てくる)ゲゼル通貨のようなものだ。
長続きするとは思っていないが、日経平均がバブル期以降34年ぶりに最高値を更新するくらいの株バブル状態でもある。
基本的に円安が進めば、海外輸出の多い大企業の円建て利益が増えるので株高の傾向となる。
そして株高になると民間の投資欲は刺激され、投資をするひとが増えてさらに株高になるが、円安度合い(インフレ率)を上回る株バブルが延々と続くことはない。
弱まっていく日本円という通貨で、日本円建ての投資をするということは、それだけでもハンディが大きすぎて、長期に渡るほどリスクは増大する。
今、国民ひとりひとりにとって最優先されることは、たとえ周りの人が誰も逃げようとしていなくても自分だけは逃げるという行動だろう。
極論をいえば、ありったけの日本円資産を今すぐかき集めて、海外にUSドル建てで移転することだ。
資産フライトに関しては、既に国民の1%似も満たない超富裕層の資産は海外に移転が完了している。
だれも逃げていないように見えても、一部の金持ちは既に避難完了状態なのだ。
こんな状況下で、政府が推奨し、みんながやっているからと深く考えずにつみたてNISAを始めるというのは、相当リスクが高いといわざるを得ない。
特に、20代30代の若い世代の方々にとって、もし一括で投資に回せる余剰資産が無ければ、積立投資しか選択肢がないものの、殆どの若者は使い切れないほどの年収を稼ぐひとか親がよほど金持ちでもない限り、貯金などそれほどないのが普通だろう。
NISAや、つみたてNISAでも、オルカンやS&P500などを海外ファンドやETFをポートフォリオに組み込んでいる場合が多いようだが、同じS&P500であってもドル建てでITAなど海外の積立口座で投資するのと、円建てで日本国内に上場している円建てのETFで投資するのでは、一見同じように思えるが、運用結果は異なるし、何よりも最終的に手にする通貨が弱まっていく日本円だというところが致命的だ。
また、スイッチングが可能だというポートフォリオの流動性を考えても、つみたてNISAをするくらいならRL360のRSP(Regular Savings Plan)をドル建てでやったほうが遙かに良いとは思う。
もちろんこの場合、最低でも月にUS500ドルくらいの拠出金は必要であり、円安が進んで1ドル=200円になることを想定すれば、円建ての拠出額は月に10万円となってしまうが、それくらいは払い続けられる収入がなければアウトだ。
1ドル=110円が、1ドル=140円になるくらいではインフレがまだ感じられにくいかもしれないが、1ドル=200円を超えてくれば、政府の発表するインチキ物価指数はともかく、体感できる物価高感は今の倍くらいになってくるだろう。
仮に、実感できる物価が倍くらいになれば、当然給与も倍くらいになっていなけければ生活できないひとがたくさん出てくるので、給与は倍にはならなくても円安が進んで物価が上がればその分は上がらなければならない。
しかし、これは現実に物価が上昇するのが先で、給与が上がるのはその後になる。
それでも、物価が上がれば給与は上がらざるを得ない。
なぜなら今まで通りの給与で働くひとが居なくなるからだ。
既に外国人労働者は日本に出稼ぎに来るメリットをもう感じてはいない。
腐っていく通貨でしか給料の貰えない国にわざわざ出稼ぎに来る理由がないからだ。
これらの状況を考えても、若者たちが何か将来の為に比較的リスクの低く、20年30年先の未来には相応のリーターンが見込める投資商品としては、「積立投資しか選択肢がない」というのがシビアな現実であり、もしそれを始めるとすれば、つみたてNISAだろうが、オフショア積立(Offshore Savings Plan)であれ、今から20年30年の長期に渡り「たとえ何があっても続けることができる自信と覚悟」があるならばやれば良いのかもしれない・・・いや、やった方が良いと言うべきなのだろう。
どんな状況であろうが、積立投資の最大のリスクは「積立を継続できないリスク」に違いない。
それ以外は良いことばかりと言っても良いくらいだ。
ドルコスト平均法しかり、税の繰り延べや、複利効果など、何にどのようにどの通貨で積立てるのかにもよるが、基本的には長期に渡るほどリスクは分散され、時間を味方につけることで確実に資産を増やすことが可能な優れた投資手法であることは言うまでもない。
しかし、積立投資における唯一最大のリスクと言っても良い「つみたてを継続できないリスク」は、政府が推奨していて周りのみんながやってるという安易な理由でつみたてNISAを始める多くのひとたちには想像もできないくらい高く、まさか殆どの人が継続できないもの代物だとは夢にも思っていないだろう。
つみたてNISAには、契約期間が決まって居らず早期解約のペナルティーはない。
つまり、いつ止めても解約してもそのことによるペナルティーとしての早期解約手数料はかからない。
このことから、つみたてNISAはそもそも「長期継続ができない」前提で作られている商品だと考えられる。
このことの意味を良く理解することは重要だ。
早期解約のペナルティーがないということは、そのプラットフォームを提供している金融機関にとっても、いつ止められても損がない商品ということであり、むしろ、解約と再契約を繰り返してもらった方が手数料が儲かる構造になっている。
契約者サイドからみれば、利益確定して免税のメリットを得るためには、持ち分の解約をしなければならず、その後その資金をNISAの枠内で再投資する為には、その資金を成長投資枠(一括NISA)の枠内で新たに何か買い付けるしかない。
わたしなら、毎年プラスが出ている時に一旦解約し、マイナスが出ている時には解約しない。
もし今後つみたてNISAを始めたひとが、10年間一度もプラスが出なかった場合には解約して利益確定するチャンスはないが、一般的にはマイナスが続くと逆に解約して損を確定してしまうひとが圧倒的に多い。
RL360やITAなどで、25年の契約をしているにも関わらず、5年も待たずに脱落していく人たちを見ていると、如何に積立を継続していくことが難しいかは明らかだ。
これは、早期解約のペナルティーがあっても解約していくのだから、ペナルティーのないつみたてNISAの場合なら、運用のマイナスが出始めると解約の嵐になることだろう。
そして、それが運用を更にマイナスに向かわせるという悪循環に陥る可能性が高い。
毎月の積立金額が1万円や2万円であれば継続できるだろうと考えるかもしれないが、決してそんなことはなく、むしろ金額が小さい人ほど継続率が低いとも言えるくらいだ。
それだけ投資慣れしていない一般人の心は「長期積立投資」というゲームに対して弱く、そしてそのゲームを甘く見ているとしか思えない。
これだけ多くの人がやっていて、オルカン(全世界株式)とかeMAXIS(S&P500)とか似たようなものにみんなが投資をしている投資ゲームで、最終的に勝ち残れるひとはどれくらい居ると考えているのだろうか?殆どのひとがやっている投資では殆どの人が負けるということを考えると将来膨大な数の犠牲者を生み出すことになりそうだ。
この数年間の間に数百万人もの20代30代がつみたてNISAの新規契約をしているようだが、今年から始まった新NISAの追い風に乗ってこの勢いで契約数が積み上がってくれば、向こう数年の間につみたてNISAの総口座数は間違いなく1,000万口座以上になるだろう。
この国策というか、政府主導キャンペーンは今のところ見事な成果をあげている。
ただでさえ税金と税と既に同質化している社会保険料の負担に加え、国民が自己責任で枯渇する年金資金を補填するべく株や投資信託に毎月積立てていかなければならないという、冷静に考えれば極めて理不尽なロジックを常識化することができているのは何らかの呪術としか言いようがない。
この先数千万人にもなるかもしれないつみたてNISA契約者の殆どが積立を継続できなかった場合、想像を絶する悲劇が待ち受けている。
激増していく高齢者層に食い潰されて、医療も介護も年金も破綻していく中、なけなしのしかも腐っていく通貨でつみたてNISAをやっていたものまで腐ってしまった場合、いったい何に頼ればよいのだろうか?
積立を止めてしまう理由は諸々あるが、主に以下のようなものだろう。
1)運用が振わず増えていない
2)収入が増えず(或いは減って)生活が苦しい
3)他に支出が増えて生活が苦しい
今後、収入が増え続けていかなければ、インフレ要因も含めて支出は増える一方だろうから、積立が継続できない可能性は高い。
もし、それらのネガティブ要素を忘れさせるほど運用がクソほど良かった場合には、継続のモチベーションは高まるだろうが、年単位で見ればクソほど運用が良い年があるとすれば同時にクソほど悪い年もあり、なかなか平均して株価が上がり続けることは予想しづらいし現実的では無い。
日銀やGPIF以外に、国民が株や投資信託を買い続ければ当然価格は上がってくるので、NISAなどの口座数が増えている間には株価は比較的堅調に推移するかもしれないが、口座数がピークに達して、その後解約で現象に転じ始めると地獄のように株価が暴落していくかもしれない。
いつそれが起るかは分からないが、早ければ5年以内、少なくとも10年以内にはそのような現象は起るような気がしている。
気付いた時には、元には戻せないほどに元本割れしているかもしれないが、その時に救済される手立てはない(自己責任ですから)。
結局つみたてNISAは、日本経済の延命策のひとつに過ぎなかったということになるのだろう。
そんな泥船に乗ることを、将来のある若者たちに勧めることはとてもできない。
今年1年だけをみれば、eMAXIS Slim(S&P500)の一点買いでもプラス10%以上出るかもしれないので、プラスのうちにさっさとやめてしまえば良い。
たいしたカネにはならないが、少なくとも損をする事はないだろう。
同様な観点で、20代30代が、つみたてNISAの代わりにITAやRL360のようなオフショア積立をやるというのも、つみたてNISAやiDeCoをやるくらいなマシとは思うが、継続できないリスクは同じなのでそれが分かっていて勧めるべきかどうかは悩ましい。
この年末年始に、これからの積立投資について、特に若い人たちがどのように考えてやるべきなのかやらないべきなのかを模索してみたが、いまだポジティブな良い答えが見つけられない。
少なくとも、貯金が100万円もなく、手取り年収が300万円もないようなカネのないひとがやるべきものではないだろう。
もし、可処分所得が500万円以上あり、今後もそれ以上の収入を得られる自信があれば、月に5万円~10万円くらいの積立は理論上は可能だと考えられる。
積立投資のメリットのひとつは、若い人ほど長期の積立が可能だという点であり、貯蓄のあまりない人であっても収入とそれが得られる職業さえあれば、20年以上の長期に渡って働いて得る収入から積立に回すことが理論上可能となる。
そして、長期の積立ほど、毎月の積立額は少額でも最終的な積立元本を大きくすることが可能となる。
いま、これから20年を超える長期積立を契約することを勧めにくい最大の理由は、日本のみならず世界経済の先行きの不透明さであり、今がちょうど今までの価値観の転換期のように思える点だろう。
例えば、ドル円の為替だけをみても、円安であることは周知であろうが、はたして日本円の価値は世界的に見てどの当たりが適正なのか?今の物価における自分の労働価値は日本円でもしくはUSドル建てでいくらくらいのものなのか?普通のひとにはさっぱり分からなくなってきている。
貨幣の価値が不明瞭でかつ弱含みな時に、その通貨で投資するリスクは想像を絶する。
しかも長期に渡れば、そのリスクは増大する。
つまり、いま円建てで最終的に円で受け取ることになる長期積立投資(つみたてNISA)をすることはあまり良い考えとは思えない。
仮に、日本のインフレ率が10%に達し(或いは10%円安になり)、円建ての投資利回りが10%を超えてくるのであれば話は別だが、まだ1%にも満たない日本円の定期預金金利を考えると、よほどハイリスクの投資を行わない限り10%を超える利回りを実現することは難しいだろう。
だが、USドルであれば、海外の金融機関で運用すれば5%程度の利回りは普通に期待できる。
しかも、日本円が弱まるとすれば、相対的にUSドルは強くなっていくので、USドルを持っているメリットはさらに大きくなる。
為替に関しては、色々な専門家が真逆の意見を展開しているので一般人には予想も付かない。
円高に戻るかもしれないし、このまま円安が進むかもしれないが、いずれにしても変動しながらどちらかの方向に進むのだろう。
ただ、日本円という通貨が、世界的にみて円安であることのメリットのほうが大きくなっている気はする。
観光的にも、今まで高いイメージがあった日本での買い物は大バーゲン状態だ。
そして、日本政府にとっても実は円安が進んだ方が借金が圧縮されて良いという側面も否めない。
そして当然だが今のところ円建ての株価も上昇してきている。
物価の番人である日銀にとしては、円安によって引き起こされるハイパーインフレはどうしても避けなければならない事態だが、金融を引き締めるために金利を上げると国債の価格は下がり利払いの負担による日銀の信用不安がおこればそれによる更なる円安を引き起こし、それがハイパーインフレのトリガーになりかねない。
なので日銀による金融引き締めは、必要だと認識していても金利を上げることはできない。
すでに日銀の金融政策は詰んでいるといっても過言では無く、それに期待しているのはメディアボケしている日本人くらいだろう。
そもそも為替に関しては財務省の管轄であり、日銀が最終的に守らなければならないラインは中央銀行としての信用の確保であり、物価の安定だが、ゼロ金利+円高の設定が崩れるとそれも危うい。
そのような不安定で国際競争力を失っている国の経済下にある金融機関で、弱まっていく円という通貨はなるべく持たないことが正解だろうと私は思っているが、政府の情報操作が功を奏したのか国民の殆どはそんな悲観的な展望は持っていない。
いま政府日銀がもっとも恐れている事は、取り付けとキャピタルフライト(資産疎開)によって国民の資産が海外に流出することなので、もしそれが少しでも加速していればどんな手を使ってもそれを阻止したであろうと思われるが、いまのところその必要もなさそうだ。
もし、政府にとって都合の悪いほどのキャピタルフライトが発生すれば、間違いなく銀行からの出金規制(預金封鎖)が行われるだろう。
ATMや窓口での現金の引き出しに制限を設けることは、いとも容易く明日からでも可能だが、その時になって慌ててももう遅い。
積立投資というものが流行る背景には、やはり販売する金融機関にとってそれが売りやすい商品であるという点は否めない。
住宅ローンが組めなくて、キャッシュでしか家が買えなければ、殆どの人は住宅を購入する事はできないのと同じで、積立投資はローンではないが、資産のない若者達が長期に渡って少額の支払いを継続し続ける事が出来なければ確実に損をする金融商品なのだ。
ITAやRL360などのオフショア積立を既にやっているひとたちの大半は、USドル建てで300ドルとか500ドルとかの支払いを日本で発行されたクレジットカードで支払っている訳だが、一昨年から円安が進んだせいで、クレジットカードで毎月決済される円建ての金額が大きくなり、停止や減額をするひとが増えている。
この先も更に円安が進んで、仮に1ドル=200円くらいになったら、500ドルの積立でカードから落ちる金額は10万円になる。
もともと5万円くらいの積立をするつもりだったひとからすれば円建てで倍の金額が落ちるのでたまったものではないが、今まで積立ててきた分は倍近くに円建てでは増えたことになる。
ここで、減額せずにそのまま頑張って500ドルを払い続けて、仮に1ドル=300円まで円安になれば更に得をするわけだが、殆どの人はそこまでの想像力もなければ財力も無いので減額か停止か解約という道をたどる。
しかし、円建てでつみたてNISAなどに月2万円とか積立てているよりは、ドル建てで海外のファンドに積立てている方が遙かに有益な気はする。
少なくとも、為替に対するドルコスト平均法を活用してやんわりとキャピタルフライトできていることにはなるだろう。
ITAのEVOLUTIONの場合、月にUS100ドル、S&P500であればUS200ドル、RL360のRSPの場合は280ドルから積立は可能なので、1ドル=200円だとしてもそれくらいの金額なら年間可処分所得が400万円くらいあれば支払い可能なばずだ。
過去を振り返ってみると、このオフショア積立てを始めるに当たって、1ドル=100円想定で満期時までの累積元本が3,000万円=30万ドルを想定して25年契約なら月に1,000ドル、複利で25年間平均で年10%で回ったなら1億円=100万ドル・・・みたいなまあまあ無理な計算をしていたわけだ。
今となっては、目標累積元本を円建てで想定するのではなくUSドル建てで設定する必要がある。
今後、円安がどれくらいの速度で進むのか?またハイパーインフレ発生の可能性があるとすれば、それはいつなのか?というのが南海トラフ地震がいつ起るのか予想も付かないのと同じように分からないのがいちばんの問題だが、この可能性を悲観的に捉えた場合、そもそも日本であれ、海外であれ、20年以上の長期積立はやらない方がいい。
その場合は、もちろん相応の預貯金がなければ無理だが、短期で資産移転が可能なサンライフ香港(Sun Life HK)のサンジョイ(Sun Joy)のようなドル建て養老年金保険しか選択肢がない。
月々2万円をつみたてNISAに25年投資しても元本は600万円にしかならない。
仮にミラクルで年10%複利で回ったとしても、1,800万円にしかならず、もし25年後に1ドル=300円だとすれば、それはたったの6万ドルにしかならないことになる。
つまり、インフレを想定すればインフレ率を上回る利回りがなければ、投資をする意味は無くなる。
利回りがゼロでも、為替が25年後に1ドル=50円とかの円高になっていればそれでも良いが、おそらくそんな日は未来永劫来ないだろう。
25年後や30年後には、ドル円に限らず、全ての通貨は今よりも価値が無くなっていると思われる。
経済成長と共にインフレは進み、先進国で健全なインフレ率と言われる2%程度だとしても、徐々に通貨の価値は下がっていく。
そして最悪の場合には、世界的なインフレにより資本主義とUSドルに支配される貨幣経済が崩壊する。
それまでにUSドルを基軸としたデジタル通貨への移行は起るような気はするが、その過程で日本円という通貨がUSドルに対してどこまで安くなるかは分からない。
香港ドルのように、日本円もドルペッグしてもらいたいものだが、この世界的インフレが進み通貨の価値が目減りしていく過渡期において、残念ながら頼れる通貨はUSドルしかなく、投資をするにしてもUSドル建ての投資をしなければ意味がない。
今は日本人にとって火急なことは日本円で投資をすることではなく、海外に資産を移転するか、腐る前に使ってしまうかに圧倒的なプライオリティーがあり、長期に渡るつみたて投資を円建てで日本国内の金融機関で行うのがブームというのは末期的な症状だと言える。
結局のところ、殆どの人がやっていても止めてしまい、新規で始めるひとも殆どいなくなるであろうRL360やITAの積立投資を、あと10年くらいはやり続けたカルト的で変態なひとたちだけが生き残れるのだろう。
この「つみたて生き残りゲーム」は、ほぼ最終段階に入ったような気がする。