日本だけでなく世界中の先進国が同じ人口問題に直面しているが、子供の日に総務省によって発表されたデータによると、2022年4月1日現在の日本における子供の数(15歳未満人口)は、過去最少の1,465万人で41年連続の減少となった。総人口に占める子供の割合は11.7%で、48年連続で低下したそうな。
また、米SNS大手ツイッターの買収で合意した電気自動車大手テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏(50)は、日本の出生率の低下に「いずれ日本は消滅するだろう」とツイートし、加速する日本の人口減に警告を鳴らし話題となっている。
果たして、イーロン・マスク氏の言うようにいずれ日本は消滅してしまうのだろうか?
確かに、出生率が死亡率を超えてこないことには、人口はどんどん縮小し、計算上いずれは消滅してしまうのかもしれないが、イーロンマスク氏が言っているのは単に国民の人口が減っていくということだけでなく、高齢者の平均寿命も延び続けており、高齢者だらけの社会になり、日本という国が文化的に滅んでしまうということだろう。
出生率の低下は、種の保存原則でみれば人類という種やその文明が終末期に差し掛かっているというサインと捉えることもできるが、もしかすると人類滅亡までに科学技術がシンギュラーポイントに達し、人類が死を乗り越える不死の時代が来るかもしれない。
未来のことは分らないが、出生率の低下は人類という種として純粋に憂うべき事実であり、高齢者の寿命が延び続けてどんどん死ななくなったり不死が実現でもしない限り人類の未来は明るくはないだろう。
人口問題、食料問題、環境問題、エネルギー問題といった最近流行のSDGsに関わる問題は、全てが相互関係にあり、人口がこれからも増加していく前提ではどうしても解決しなければならない問題だが、人口が減少し人類滅亡に向かっているのであればその解決努力は無意味とも思える。
さらに、継続的経済成長に依存する資本主義社会体制が地球規模の富や資源や生活環境の平等化という目標には矛盾し、特に高齢化の進む先進国や(テスラのような)特定の巨大企業に富が偏っていることが、これらの問題の解決をより難しくしていると思われる。
日本だけを取ってみれば、人口問題の深刻さは極めて明確であり、人口を減少させない為に少子化対策と移民の受け入れ政策を、人口減少が防げるレベルで抜本的に行わないことには日本の未来はないというのはマスク氏の言うとおりだろう。
逆に言えば、人口対策が成功すればかろうじて未来は描けるということなので、国にとっては全てに優先されるべき火急の課題であるとまで言ってよいかもしれない。
しかし、残念ながら日本で行われている人口対策は、今のところお飾りのようなもので現実的な効果を期待できるものではない。
その足を引っ張っているのは失速している経済だろう。
簡単に言えば、票になる高齢者にカネを使いすぎて経済が回らなくなり、予算も枯渇して人口問題に手が付けられない状態だ。
たとえば、ウクライナから移民を100万人くらい受け入れれば、昨年減少した64万人の人口を一挙に補うことも可能だが、資産もなく戦火から逃れてくるウクライナ人を受け入れても税収が見込めないばかりか、相当な支援予算が必要となるだろうし、現実問題として未だ収まらぬコロナ渦や急速に進行するインフレで明日の生活に不安を感じている日本国民にはそのようなきれいごとを受け入れる余裕もない。
国民の声を聞くという岸田首相は、国民の声を聞きすぎなのか、国としてやるべき事を強引に押す進める力は感じられない。
日本という国の危うさは、そういった優先順位のはっきりしない国策そのものにあるように思われる。
新型コロナ感染対策にしてもそうだ。
やるなら徹底してやった方がいい。
止めるなら、そのリスクを国民にちゃんと説明した上で、一定のルールを決めて解放すればいい。
タイなどは、もうほぼ何の規制もないフリーダム状態だが、そうしなければ観光に依存する国の経済が持たないから仕方ない。
飢えて死ぬよりはリスクを取るしかないとタイ政府にも国民にも分っている。
一方、お隣の中国は相変わらずゼロコロナ政策を徹底して行っており、経済を犠牲にしても都市をロックダウンし続ける政府の根性には驚かされる。
中国がゼロコロナ政策に拘る背景には、なにか隠された(中国だけが知る)理由があるのかとも思われるが、一説では単に習近平のメンツを維持するためとも言われている。
ただ、この2年間のゼロコロナ封鎖政策によって、中国人民は海外にも行けず、海外から外国人も殆ど中国に入ってこないにもかかわらず中国の経済は取りあえず回っている。
以前にお話ししたように、「えんとつ町のプペル」のようにコロナウイルスという煙で国を意図的に遮断したかのようにも思える。
案外、新型コロナウイルスはそういう目的のために開発された「ミノフスキー粒子」のような間接兵器だったのかもしれない。
恐らく、ロシアと国境を共有する周辺国や、EUのNATO加盟国や世界の警察であるアメリカ合衆国とその同盟国以外の国にとって、いま重要なのはウクライナ問題ではなく、未だ新型コロナ問題だというのが現実なのかもしれない。
少なくとも中国にとってはそのように見えるし、政府はコロナ対策に全力を注いでいる。
果たして日本にとっては、何がいちばん優先して解決すべき課題なのだろう?
次々に世界を揺るがす事件が起こり、問題が上書きされて、何がより自分たちにとって重大な問題なのかが分らなくなってしまうことは危惧される。
それでも、国としては対策のできることと、できないことがあり、できることの中で最も優先されることを徹底的にやるのが効果的だと思われる。
そしてそれを遂行するのが国のリーダーの役割だと思うが、それができない日本という国は国際的にも弱い立場に追いやられても仕方ない気骨のなさだ。
岸田首相は5月5日、英国・ロンドンの金融街であるシティで、自らが掲げる「新しい資本主義」の講演を行い、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資をしてほしい。Invest in Kishida!(キシダに投資を!)」と強く訴えて失笑を買ったようだが、このような方針の定まらない日本という国に投資しようと思う人は海外には居ないだろう。
このまま日本円の価値=日本の価値が下がり続け、日本の大バーゲンセールが来たら株や不動産を買いあさるハゲタカファンドが爆買いに来るかもしれないが。
日本は、今のままでは本当にヤバいのかもしれない。
しかも、その日本に住む日本人の大半が、この期に及んでまだ日本は大丈夫だという根拠のない自信?に満ちあふれているところが最もヤバい感じだ。
改めて人口問題に言及すると、仮に出生率を今すぐ改善できたとしても18年間は投票権がないし、何の生産性もない単なる金食い虫が増えるだけなので、移民受け入れ政策は人口対策に絶対に不可欠だ。
にも関わらず、移民政策は進まない。
大量の外国人移民を受け入れる条件は、安価な労働力となる奴隷的人材か、沢山のお金を持ってきてくれる富裕層かの二択しかないだろう。
前者の場合、労働基準法の問題もあるし、日本人の底辺の労働者の職が奪われるという問題も発生する。そして治安が悪化することも予想される。
以前香港でもあったような、投資家ビザのようなものを発行して差別的に金持ちだけを移民させた場合、中国人が大量に入ってくるだろうという問題もあるし、移民数が稼げないのと、移民の年齢が高齢化するという問題も起こる。
いずれにしても、人口減少を補えるレベルの移民の受け入れは、時間経過と共に日本人としての文化やアイデンティティーの喪失に繋がる可能性は高い。
このように、一筋縄ではいかない人口問題について、統計から将来どうなるかが分っていたにもかかわらず問題を先送りにし続けたツケが回ってきているに過ぎないが、そんな日本という国がこのままでは消滅してしまうという警鐘を、人間の雇用を縮小するであろうAIやロボットを開発しているイーロン・マスク氏に鳴らされるというところが日本という国のまことに情けなく残念なところだ。