厚生労働省の「介護保険事業状況報告」の月報(暫定版)を基に集計すると給付費は20年度に10兆2260億円に達し、制度が始まった00年度の3兆2400億円から3倍以上に膨らんだそうな。
要介護・要支援の認定者数は5月時点で約685万人と、制度開始当初の3倍程度になった。
政府の推計では、団塊の世代が75歳以上になる25年度に給付費は15兆円規模まで膨らむ見通しだ。
いまさら何を言っているんだろうか?
今回のコロナ問題で、医療や介護という制度自体が破綻していることが明るみに出たが、実はコロナ問題が大きくなる以前に、そもそも制度は破綻していたというのが実態だと思われる。
統計を見ても、20年で3倍に膨れ上がって今や10兆円超えの介護保険給付金というのが“政府にとって予想も付かなかった事”でないのは明らかだ。
ここでは介護保険にメスが入っているが、医療保険も年金も同様な問題を抱えており、その未来は統計上予測可能なものだ。
医療保険に関しては、仮に破綻しても自由診療が一般的になれば、金持ちの医療はカバーできる人員や医療体制はあるように思うが、介護に関しては、介護保険制度への依存度が高すぎるせいか、介護従事者や介護ヘルパーの絶対数が足りていない。
つまり、いくらカネがあっても介護を頼める人が居ない状況なのだ。
年金は単に国の財政(カネ)の問題だが、財政は周知の通り大赤字であり、財政が破綻すれば年金もクソもなくなるが、これに関しても金持ちにとっては問題ではない。
介護サービスの問題は、介護保険制度というカネの問題が根底にあるわけだが、その足りていない介護保険に依存し、ぶら下がっている介護サービス提供業者や介護従事者自体が、その仕事のキツさに反して儲からない為か人材が集まらないのだ。
別の言い方をすると、介護保険制度によって定められる業者やヘルパーの資格要件が足を引っ張って人材の確保ができないのだ。
要介護認定を受けた人などが介護サービスを受ける場合、所得などに応じて1~3割が自己負担となる。
残りが給付費で、半分を40歳以上が支払う介護保険料、残りの半分を公費で賄っている。
政府は介護保険制度の持続性を高めるため段階的に利用者の負担を増やし、今年8月には1カ月あたりの自己負担の上限額を引き上げた。
一定の所得を超える人の負担上限額は最高で月14万100円と従来の4万4400円から3倍以上になる。
引き上げの対象になるのは、介護サービスの利用者か世帯内に年収約770万円(課税所得380万円)以上の65歳以上の人がいる場合など。
従来の上限は世帯当たり月4万4400円が最高だった。
8月からは所得に応じて上限額9万3000円、14万100円の区分をそれぞれ新設。
厚労省の推計ではおよそ3万人が対象だ。
これとは別に、8月からは低所得の人が介護保険施設やショートステイを利用した際の食費なども一部で自己負担が増えた。
例えば年金収入などが120万円を超える人が介護保険施設に入所した場合、1日当たりの食費負担額の上限はこれまでの650円から1360円になる。
しかし、これらの負担増による給付費の抑制効果は単純な試算で給付額全体の1%に満たず、焼け石に水だ。
では一体何の為に根本的な解決策にならないこのような政策を打つのか?
今後も段階的に所得の高い人の負担を増やしていく布石なのだろうが、そもそも十分なお金のある富裕層はお金的には老後の心配はない。
要は誰が面倒をみてくれるのか?が問題なのだ。
介護問題に関しては、カネの問題だけでなく、人材の問題も含めて制度そのものを見直す必要がありそうだ。