またアニメの話か・・・とお思いでしょうが、今回の「銀河英雄伝説」は田中芳樹の原作で読むもまたよしですよ。
あまりにも覚えにくく大量な横文字の登場人物と、その歴史モノ仕立ての複雑な一大叙事詩的構成やストーリーの長さ(外伝を入れると150話以上?)から、この「銀河英雄伝説」を攻略していない方が多いように思われますが、世の中の流れや、ものごとの道理と原則、その中でどのように何を考えてどう戦略的に生きていくかを学ぶ上で、これほどの教材は無いと言っていいでしょう。
オトナが見ても面白いですが、若い人にも見て学んでほしい。
ガンダムなどは、基本男の子向けですが、銀雄伝(ちまたでは銀河英雄伝説を略してこういうらしい)は女子にも登場人物の絵が少女マンガテイストなのでいいかもしれません。
話の内容は至って固いです。
特に、どっちが主人公かわからない帝国軍のラインハルト・フォン・ミューゼル(ローエングラム公)と同盟軍のヤン・ウェンリーがそれぞれの持ち味で展開する戦術論と戦略は見応え十分。
ラインハルトはカリスマ的な魅力を放ち、その戦略はまさに冷静沈着そして天才的。最後まで影のように慕い続けるジークフリート・キルヒアイスをはじめ、帝国の双璧と呼ばれる「疾風のウォルフ」ことウォルフガング・ミッターマイヤーやオスカー・フォン・ロイエンタールなど有能な将校に支えられる。
カリスマであるがゆえに、組織の上層部には疎んじられるが、部下に対しては強力なリーダーシップを発揮し、頂点へと登り詰める。
ガンダムのシャー・アズナブル(キャスバル・ダイクン)がララア・スンに母親の面影を求めるマザコンであったように、ラインハルトも姉であるグリューネワルト伯爵夫人に対するシスコンである。
これは、「リーダーシップ」と「母性」というものが関わりのあることを示しているともいえる。
「リーダーシップ」というものに対して人が期待するものと、母性が持つ包容力と無限の愛情には共通点があるのかもしれない。
一方、ミラクル・ヤンと呼ばれる同盟軍のヤン・ウェンリーは同じく戦略に関しては天才的であるが、ラインハルトと比べると圧倒的に人間的な側面が強く、そもそも軍人や戦争を嫌っている。軍隊をただの道具としてしか見ていない政治家に対しても嫌悪を抱く。
有能であるがゆえに、軍隊の組織にはそぐわず、軍の上層部とは意見が合わない。
カリスマ性もなければ、そういったものを求めてもいない自称「凡人」だが、その戦果と英雄性から、本人の意思とは反対に、政治的には祭り上げられ、利用される。
歴史研究家であり、歴史的知識と考察がヤンの戦略の根底にある。
不敗伝説をもつ魔術師と呼ばれるヤン・ウェンリーの真骨頂は、その抜群の洞察力と冷静な判断力、常に打開不可能と思われる逆境から、一瞬の光明を見出し、危機を乗り切るしぶとさにある。
宇宙戦艦対宇宙戦艦の艦隊戦という、今のところ存在しない仮想戦場の戦略論は非常に興味深く、妙なリアリティーを感じます。
おそらく、作者は過去の地球上での艦隊戦争や戦術の歴史をかなり研究したのではないでしょうか。
バックグラウンドにクラッシックを使用していることから「スペース・オペラ」とも呼ばれるこの作品・・・もしかしたら、あなたの人生とかぶるようなストーリーも見つかるかもしれません。