「タッチハンガー」という本の中に、

「人生で一番つらいとき」という見出しを見つけました。

 

吸い込まれるように読んでみると、想像していた内容とは違いました。

 

赤ちゃんの気持ちを代弁している内容だったのです。

 

 

 

 
このように。

 

大変な毎日を過ごしておられる方も多いでしょう。今が人生で一番つらい時だなと思うような時間を過ごしておられる方があるかもしれない。そういう方もあるだろうに何をいまさらと思われるかもしれませんが、人生、幼い時ほどつらいのではないかと思います。

 

(中略)

 

社会人になったら、本当にいやなことはやらなくてもよくなりました。そんなバカな、社会人になったらつらくても耐えなければいけないことは多いし、勝手なことは言ってられないし、やりたくないこともやらなければならないのだとおっしゃる方があるかもしれない。

 

でも社会人になったあなたは、理不尽なことに抵抗するやり方は、できるできないは別にして知ってはいるし、お金のためと思えば我慢の仕方も工夫できるし、最後には「やめる」という手段もあります。家族関係で、お金のことで、大変かもしれない。でもそれを大変と認識できるほどにはすでに大人なのです。

 

人生は、年を重ねるほどにラクになる。大人になるほど、責任も増えるけれど裁量の幅も増える。少しずつ自らを知り他人を知り世界を知ることは楽しいこと…ということを若い人に伝えたい。

 

そう思えば、人生で一番大変なのは生まれてきたばかりのころなのです。

 

赤ん坊のあなたは何もかも分かっているというのに、周囲はあなたのことなど何も理解しようとしない。みんな、あなたは何も分かっていないと思っているし、見えていないと思っているし、聞こえていないと思っている。

 

産道を通ってきて、ああ大変だったと思っているのに、煌煌たるライトにあてられ、知らない人に引っ張り出され、鼻を管で吸われ、苦しくてぎゃあぎゃあ泣いてしまいます。お母さんのにおいのするところにいたいのに、お母さんから離されて、一人のベッドに入れられます。お母さんのおっぱいがいいのに、ゴムの乳首をくわえさせられます。

 

どうせ赤ちゃんだから分からないわよ、と周囲は思う。

あなたは抵抗できず表現できない。

なんてもどかしいのでしょう。

人生で一番大変なのは、やはり幼い時、赤ちゃんのころなのだと思います。

 

私たちは本当に幼いころのことは覚えていない。

 

幼いころ、自分の意思を通じさせることができないことがどんないつらいか、私たちは忘れてしまいます。覚えていかなくてはならないことがたくさんあるから。

 

でも、とてもつらい時期なんだと思えば、赤ちゃんにどのように接すればいいのかおのずと決まってくるように思います。

 

幼い人にほど丁寧に接していたい。

 

ゆったりした気持ちで、優しい手でそっと触れていたい。

穏やかな声で語りかけていたい。しっかり抱きしめて、あなたのことを分かっているよ、と言ってあげたい。大丈夫大丈夫、と語りかけてやりたい。

 

言葉で説明できないってつらいよね、言葉で説明できないから泣きたくなるんだよね、と泣いている子に寄り添ってあげたい。

 

言葉が話せるようになった子の話は、ないがしろにしないで丁寧に聞いてあげよう。たくさんたくさんの思いが、一言に込められているはずだから。

 

 

読んでいたら、涙があふれてきました。

 

いろんなことを思い出したから。

 

「寝かせてすぐに寝つかないと面倒だから、毎日言い聞かせてしつけました。あきらめて一人で寝てくれるようになってラクになりました」と、誇らしげな生後2か月の子のママへ、言葉が見つけられなかったことを。

 

「飲み会に行きたいし、今までのように友だちと旅行へも行きたい。自分の生活が大事なので、母乳を吸わせるのはイヤです」と主張するママにかける言葉を迷い、結局は聴くしかできなかったことを。

 

 

そして、

わたし自身の育児中に、自分のやりたいことを優先したときのことを…。

 

 

大人は、思いを言葉にして表現することができる。

 

「早く眠ってほしい」

「泣かないでほしい」

「たまには休みたい」

「ひとりになりたい」

「ストレス解消したい」と。

 

でも、赤ちゃんはただ泣くしか表現できない。

 

「そばにいてほしい」

「優しく抱っこしてほしい」

「母乳が出なくてもいいから、ママの乳首をしゃぶっていたい」…。

 

もしかしたら、そう言っているのかもしれない。

 

言葉にならない泣き声は、なにを表現しようとしているのだろう…。

 

赤ちゃんの気持ちにも寄り添える人でありたい。

そんなことを思います。

 
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