潤徳女子高校福祉進学コース2年生の授業に、ゲストティーチャーとしてお招きいただきました。西村先生がつないでくださったご縁です。
福祉進学コースの生徒さんたちは、「虐待」について学んでいるそうです。この生徒さんたちと「地域の子育て支援」「虐待予防」について考える時間にしたいという、西村先生の熱い思いがきっかけで実現しました。
虐待について、「自分の子に虐待するなんて信じられない」「自分で産んだのだから責任もって育てるべき」「虐待するなんて信じられない」と、正義感に燃える意見が多い中、授業が始まります。
まずは生徒さんたちに、問いかけました。
「母親と聞くと何をイメージする?」
「子どもと聞くと?」
では、「育児のイメージは?」
「子ども」と聞くと、かわいい・元気・楽しそう・はしゃぐ・よく寝る…など明るいイメージが多いのに対し、「お母さん」「育児」からイメージするのは、大変そう・疲れる・寝れない・イライラする・思うようにならない…など、マイナスのイメージが多い。
高校生たちは、「育児が大変」「お母さんは大変」と感じているようです。
そして、「赤ちゃんの泣き声を聴き続ける」体験をしてもらいました。
赤ちゃんが泣いている画像を見せつつ、じっと泣き声を聞きます。はじめはクスクスしていた生徒さんたちが、次第に真顔になり、中には涙ぐむ生徒さんも…。
生徒さんたちに問いかけます。
「どんな気持ちになる?」 と。
生徒さんたちからは、
「悲しい気持ちになる」「誰かに助けてもらいたくなる」「泣きたくなる」「苦しい」…素直に感じたままを話してくれます。
さらに問いかけていきます。
赤ちゃんや子供が泣き続けている時に、助けてくれる人がいるとは限らない。
もし、泣き声を聞き続けている時に、疲れていたり、家事が残っていたり、明日の朝が早く、仕事が残っているときだったらどう感じる?
そんな時に、もし隣人から「親なんだから泣きやませろ」と言われたらどんな気持ちになる…?
次第に生徒さんからは、
「逃げ出したい」「イライラする」「泣きたくなる」「たたきたくなる」…と、そんな声が聞かれるようになり、中には自分の言葉に驚きハッとする生徒さんも。
虐待は許されることではない。
でも、虐待をしているのは残虐非道な親ではなく「ごく普通の人たち」で、虐待していないことは十分知っているということ。親たちには、虐待に追い込まれていく背景がある。
決して、
「殺してやろう」「殴ってやろう」と思って生んだ親はいない…。
そして、
子どもを怒鳴っている親や、たたいている親を見かけたら、
私たちに何ができるのかについて話し合いました。
生徒さんたちからは、
「手伝えることがありますか?」と声をかけたい
「笑いかける」
「見守る」
「ちょっとした菓子を差し出す」
「泣いている子をあやす」…
いろんな意見が聞かれました。
子どもを育てるのは親だけではありません。
社会から虐待を減らすために、私たちに何ができるのか…。
まずは関心をもってほしい
そして、追い込まれている背景を想像してほしい。
生徒さんたちは、一生懸命に考えてくれました。
感想文もギッシリ書かれています。
「お話を聴いているうちに、私の考え方や気持ちが変わりました。虐待している親に対して、『ひどい』『子供の気持ちはどうなんだろう』から、『親にも背景があるんだな』『親も子も助けてあげたいな』に変わりました。
また、親に対しても『うるさい』『ほっといてほしい』から、『確かにいつも見守っていてくれて、私の変化に気付いてくれていたな』と変わり、親に対する自分自身の気持ちを振り返ることができました」
「赤ちゃんの泣き声を何分間か聞き続けている時、自分まで泣きそうになりました。赤ちゃんの泣き声はうるさく感じられて、あれをずっと聞いていたら、いらいらしたり、泣きたくなったり、投げ出したくなると思いました。虐待をしている人はごく普通の人で、子どもが生まれた時はとてもうれしくて、大事に育てようと思っている人たちなんだと思いました。一人で育児するのではなく、まわりの人たちに支えてもらいながら育児したいと思いました」
「虐待は絶対やってはいけないということをわかっている。なのに虐待をしてしまったというのは、それくらい精神的に追い込まれていたんだと思いました。限界まで頑張ってきたのに、私はマスコミと同じように『最悪な母親じゃん』とか、『自分が産んだ子なのにありえない』とか思っていたことを謝りたいと思いました。これからは、そのような事件を福祉的な見方をしていきたいと思いました」
「虐待はすごくいけないことだけれど、してしまう親がすごくかわいそうだと思いました。親はすごく頑張って、自分の子供を必死に守ろうとして、でも限界があって、さらにまわりからのクレームも来て、本当にいっぱいいっぱいなのに、テレビや新聞では家族の背景を知ってもらえなくてすごくつらいと思いました。私は妹が生まれた時、近所に住む祖父母に預けられました。もし祖父母がいなかったら今の私はいなかったんじゃないかと思うと、育ててくれた大人がたくさんいて幸せだと思いました」
「今まで、虐待について子供の視点でしか考えたことがなかったのですが、今回親の視点で考えることによって、そうせざるを得ない親の心情を理解することができました。また、子どもが生まれる瞬間は誰もが喜び、子どもを愛していない親はいないと改めて感じました。
虐待はすべて親のせいにするのではなく、今の社会の子育ての状況を国全体で改善していくべきだと思いました。駅のホームで虐待をしている親を見かけたら、子どもにお菓子をあげたり、笑顔を見せてあげたいと思いました」
福祉を学ぶ生徒さんたちの、感受性の豊かさに感動しました。
生徒さんたちの未来が、輝き続けますよう願っています。
校長先生、ご縁をつないでくださった西村先生、ありがとうございました。
しっかり受け止め考えてくれたようすに胸が熱くなりました。