王冠 第39話 裏切り 王冠

 

『キム・チュンチュと新羅(シルラ)兵を 残らず斬れ!!!』
『チュンチュ公を守れ!!!』

 

キム・ボムミンは 弟インムンに 父を連れて逃げろと叫ぶ!
今は 父チュンチュの命を守ることこそが先決であった

 

逃げようとするチュンチュに気づき ヨン・ゲソムンが自ら馬を駆る!
ボムミンは 無謀にも ゲソムンに挑みかかる…!!!
力の上では 雲泥の差があるとしても 父を守りたいという気概では負けていない

 

そこへ キム・ユシンの軍勢が到着し 一気に形勢は逆転する!!

 

『私は 新羅(シルラ)のキム・ユシンだ!
チュンチュを害そうとする者は この私が斬る!!!』

『よし! 私の手でチュンチュとユシン 新羅(シルラ)の2つの柱を斬ってやる!!!』

 

『やめろーーーっ!!!』

 

一騎打ちをしようとする2人の間に チュンチュが割って入る!
一触即発の状況で チュンチュは決して逃げようとはしなかった

 

『ユシンと莫離支(マンニジ)は 将来 三韓をまとめていく人物だ!
私は どちらも失いたくない!!!』

 

※莫離支(マンニジ):高句麗(コグリョ)の政策を総括する最高官職
※三韓:新羅(シルラ)・高句麗(コグリョ)・百済(ペクチェ)のこと

 

『チュンチュ 莫離支(マンニジ)を斬らねば 我らは新羅(シルラ)に戻れぬ!』
『いいや 莫離支(マンニジ)が雅量を示し 道を開いてくださる!』

 

『黙れ! お前たちを逃がしたら 私と高句麗(コグリョ)は天下の笑い者になる!』

 

もはや戦いは避けられないという状況下でも チュンチュは諦めず
ここで 誰か1人でも血を流せば 唐の思う壺だと断言する…!

 

『唐の目前で 新羅(シルラ)と戦争をする気ですか!!!』

 

三韓の分裂こそが 唐に付け入る隙を与えることだと ゲソムンにも分かっていた
それは 両国にとって最も望まない事態であると 誰もが承知している

 

『私をこのまま新羅(シルラ)に帰してくだされば
ヨン・ゲソムンは 君子の名声を得るでしょう どうされますか!
新羅(シルラ)と戦争するか 君子の名声を得るか!!!
すべては莫離支(マンニジ)の選択次第です! ご決断を!!!』

 

チュンチュの言葉に ヨン・ゲソムンは 決断を迫られた
というよりは チュンチュを無事に返すしか道はなくなったのであった

ファシ率いる百済(ペクチェ)の軍勢が チュンチュの命を狙っている…!

ゲソムンは 自らの兵に チュンチュの命を守り国境まで送るように命じた

 

『莫離支(マンニジ)のご恩は 決して忘れません』
『私の気が変わる前に早く行け!』

 

安全な国境の村に来て チュンチュとユシンは ようやく安堵して語らう
なぜ あの場で対決を止めたのか… それにはチュンチュの深い洞察があった

 

『莫離支(マンニジ)なくして 高麗(コグリョ)は唐を防げぬ
もし唐が高句麗(コグリョ)を征服したら 次は新羅(シルラ)を狙うだろう
今の新羅(シルラ)には 唐の攻勢を止める力はない
我らが力を養うまで 高句麗(コグリョ)を唐の攻撃を防ぐ盾にするのだ』

 

そこへ ピダムが兵を率いて現れ チュンチュを捕えると言い出す…!
チュンチュには 大逆罪の疑いがあるというのだ!

 

『チュンチュ公は ヨン・ゲソムンに忠誠を誓い
新羅(シルラ)朝廷を欺く密約を交わしただろう!
さもなくば 放免されるはずがない』

 

チュンチュが口を開く前に ユシンがたまりかねて言い放つ!

 

『それ以上 チュンチュを侮辱したら この場で血を見るぞ!』
『ユシン公も 朝廷に無断で国境を越えた罪を問われるだろう』
『何だと?!』

 

ユシンが剣を抜いたその瞬間!
花郎(ファラン)たちが 一斉に剣を抜き ピダムの兵も応戦の剣を抜く!
朝廷の兵に剣を向ければ それだけで大逆罪になると 必死に止めるチュンチュ!
ユシンは 懸命に堪え 剣を収めた

 

『大王陛下と朝廷の前で 潔白を明かす! 先導しろ!』

 

朝廷の場で 善徳(ソンドク)女王は怒りに満ちて抗議する
チュンチュが抑留されても救おうとはせず 無事に戻ったら大逆罪に問うとは
あまりのことだと 朝廷の要求を突っぱねた

 

『陛下 チュンチュが竹嶺以北の返還を約束せずに 放免されるはずがありません!
王室と朝廷の許可なく 領土の返還を約束することは 明らかに大逆罪です!』

 

チュンチュは 莫離支(マンニジ)が許可したゆえ戻っただけだと答える
そしてユシンは 挙兵したのではなく 王命を受けて迎えに出向いただけだと言い放つ
礼部令サジンが もし高句麗(コグリョ)が攻めてくれば すべてチュンチュの責任だと
言い終わらないうちに 善徳(ソンドク)女王が立ち上がり激怒する!

 

『黙らぬか!!! チュンチュを罪に問うことは 命令を下した余を責めることだ!
そちたちは 余を罪に問うつもりか!!!
余に 皆の前で謝罪しろというのか! 一体 誰が君主で誰が臣下なのだ!!!』

 

『大王陛下 私は 恥ずかしくて顔を上げることが出来ません
国運をかけて敵地に入り 九死に一生を得た忠臣を 慰労するどころか罪に問うとは
大王陛下の権威に挑む行為です! 面目次第もございません!!!
陛下 朝廷の全臣僚を罷免してください!!!』

 

こう切り出したのは閼川(アルチョン)だった
臣僚の不忠を厳しく罰し 朝廷の綱紀を正してくださいと言う閼川(アルチョン)
これにより ピダムは一転して 王の権威に挑んだ不忠の臣僚となった

 

一件が落着し チュンチュはようやく王の前で報告することが出来た

 

『高句麗(コグリョ)と唐の戦争は避けられないでしょう
高句麗(コグリョ)に 新羅(シルラ)を攻撃する余力はありませんが
百済(ペクチェ)の攻勢が激しくなることが予測されます
陛下 百済(ペクチェ)の 党項(タンハン)城攻撃を止めるよう唐に要請してください
唐は高句麗(コグリョ)出征を控え 新羅(シルラ)の要請を拒めぬでしょう』

 

チュンチュは 自らの目で高句麗(コグリョ)の兵力を見てきた
高句麗(コグリョ)で内乱でも起きない限り 唐に負けることはないと断言する

 

『敵国ではあるが 王室と朝廷が結束した高句麗(コグリョ)が羨ましい』

 

『陛下 ご安心ください 私とチュンチュが朝廷を立て直し
陛下の治世を輝かせてみせます!』

 

善徳(ソンドク)女王が チュンチュとユシンを擁護し
閼川(アルチョン)までが迎合したことで 朝廷の立場は危うくなった
礼部令サジンは憤慨し ピダムの怒りも頂点に…!

 

『大王陛下は 誰のおかげで即位出来たか お忘れのようだ
チュンチュとユシンが倒された後も 大王が
私の前で声を張り上げられるのか しかと見届けてやる!』

 

ヨムジャンは あらためてチュンチュの帰還を祝い 宴を開いた
これを受け 皆の前で乾杯の音頭を取るチュンチュ

 

『高句麗(コグリョ)にいる間に 多くのことを見て感じた
さすが句麗(コグリョ)には 数百年間 中原と対峙してきた国だ
幼い子供も剣を刺し 乗馬や剣術を習うほど武芸を重んじていた
しかし 高句麗(コグリョ)を富強に導いた力は
槍剣ではなく 高句麗(コグリョ)人だという誇りだった
我らも 新羅(シルラ)人だという誇りを持たなければならぬ
我が花郎徒(ファランド)が 新羅(シルラ)人の誇りを高め
新羅(シルラ)再興と 三韓一統の先鋒に立つのだ!』

 

※花郎徒(ファランド):花郎(ファラン)に仕える貴人の子弟

 

一時は 生きて帰れるかも分からない事態に陥ったチュンチュは
心から宴を楽しみ 花郎徒(ファランド)たちもまた しばし戦いを忘れ楽しんでいる
しかし この場にボムミンの姿はなかった
宴に興じるより 一刻も早くヨナに会いたかったのだ

 

『ご無事で安心しました』
『そなたがこうして 私のために祈ってくれたおかげだ』

 

ボムミンは ヨナを巡り 今度こそピダムと決着をつけると誓う

 

『お気をつけて ピダムはボムミン様だけでなく お父上や伯父上も狙っています』
『心配するな いくらピダムでも 父上や伯父上を害すことは出来まい』

 

その夜 ボムミンは 父チュンチュと差し向かいで酒を飲む

 

『ボムミン お前の抱負は何だ 何を成そうと思っている』
『私は 三韓の民を救いたいと思っています
貴賤の差別のない 太平の世を築きたいです!』
『…それは本心だな?』
『天に誓って 少しの偽りもありません!』

 

爽やかな目で 真っ直ぐに父親を見つめるボムミン
しかしその思いはまだ 実感を伴わない綺麗な演説のようなものだった
今のボムミンにとって大切なのはヨナであり 最大の敵はピダムなのだ
チュンチュもまた そんな息子の想いを見抜いていた

 

『ひとりの女人のために生きるのも悪くはない
しかし大義を成すためには 恋慕の情などは断たねばならぬ』

 

大義を成すためには 憎き敵を許す雅量を示し 愛する人を手放す強さが必要だと
息子のために熱く語るチュンチュ…!

 

『ボムミン 父の言葉を肝に銘じてくれると信じる…!』

 

その頃ヨナは 自分に暴力を揮うピダム本人から 傷の手当てを受けていた
それでも恨みはしないというヨナに 心から望むならボムミンのもとへ行けと言う

 

『大の男が 己に気のない女を抱くことは出来ぬ お前を放してやる』
『私を捨てないでください 私は ピダム公がまいてくれた水で花を咲かせたいのです』

 

あっさりと手放されては困る
ヨナは 永遠にどちらの手にも落ちない存在で 2人の間に亀裂を生まねばならない
しかしそれも ピダムには見透かされているようだ

 

『お前の魂胆は何だ! 実の母を追い出した私への復讐か?!
ピヒョン郎の恨みを晴らしたいのか?! それとも!!!
私とチュンチュに 殺し合いをさせたいのか!!!』
『……』
『よかろう 思う存分復讐するがよい
お前に倒されるようなら 私に天下を取る資格はない!』

 

それでもヨナは そばにいさせてほしいと懇願する
そばにいるためなら 何でも言う通りにするというヨナだった

 

それからしばらくして 善徳(ソンドク)女王の国書が聞き届けられ
唐の皇帝から 百済(ペクチェ)のウィジャ王に対し
交易を続けたくば 党項(タンハン)城への攻撃をやめよという国書が届く

 

はらわたが煮えくり返ろうとも ウィジャ王になす術はない
そもそも党項(タンハン)城を得たい目的は 中原との交易なのである
それを断つと言われては 攻撃する意味が無かった

 

きっとこの策は キム・チュンチュの考えたものに違いないというウィジャ王
チュンチュさえ亡き者にしていれば起きなかったことだと…!
将軍ユンチュンは チュンチュを暗殺すべく 自らが動くと進言するのだった

 

新羅(シルラ)では これで一件落着したかに見えたが そうではなかった

 

唐は 善徳(ソンドク)女王の望みは叶えたが この程度の問題を解決出来ないのは
新羅(シルラ)王が女性だからだと言い出したのである
そして 唐の皇族を派遣し 新羅(シルラ)の王に据えると…!

 

『この屈辱を どう晴らせばよいのか…!』

 

『陛下 治世の成否は 君主の聖徳だけで評されるものです
唐の皇帝が何と言おうと 新羅(シルラ)の君主は 大王陛下だけです
かような時ほど お心を強く持ち 新羅(シルラ)の綱紀を正し
民生の安定にお尽くし下さい』

 

ピダムの大胆な野心に愛想を尽かした閼川(アルチョン)は
朝廷側から 善徳(ソンドク)女王の側についていた

 

ピダムもまた 唐の言い分に激怒する!

 

朝廷を意のままに牛じようとしている今
唐の皇族などが王座に就いては水の泡であった
それは 国が無くなるに等しい事態なのだ

 

『すべては大王が朝廷を無視し!
チュンチュやユシンばかり擁護するから起きた騒ぎだ!
今すぐ朝廷を刷新せねばならぬ!
閼川(アルチョン)公のような 骨のない臣僚を追い出し
一致団結して 大王の意思を阻める強い朝廷を作るのだ!!!』

 

善徳(ソンドク)女王が 高句麗(コグリョ)の結束力を羨むのも無理はなかった
自ら頂点に立ちたいピダムが 王を差し置き君臨しようとして
朝廷を 王室と敵対させている限り 王室と朝廷の結束は無理なのだ

 

野心を燃やすピダムに 礼部令サジンが 優秀な人材がいると耳打ちし
ヨムジョンという男をはじめ 何人かの人材に引き合わせる

 

『天文と地理の知識は誰にも負けず 文才は新羅(シルラ)で2番目と自負します』
『2番目?ならば1番目は誰なのだ?』
『同門のチャドゥの文章が 私より上です』

 

チャドゥという男は ヨムジョンの後方に控えていた
頭巾を被ったチャドゥの頭には 大きな角が生えている…!

 

『この角のような頭には 人の相を見抜く慧眼が入っています』

 

そう言うとチャドゥは ピダムの相を読み解いていく
官職に恵まれる相だと言われ ピダムは呆れて笑い出す
すでに新羅(シルラ)の朝廷を牛耳るピダムに対し あまりに無礼な言葉だった

 

ピダムは やはりヨムジョンが気に入り阿飡(アチャン)の官位を与えた
チャドゥに対しては 反骨精神が強すぎて朝廷には向かないと判断する
ピダムの威勢を知りながら 敢えて相を見抜くと言い無礼を口にする気概を
参謀としては良しとしなかったのだ

 

チャドゥも 自分がどう評価されるのか承知していた
どうやら田舎に帰るしかないようだと笑うチャドゥ

 

『弱気なことを ピダム公が才能を買ってくださるはずだ』
『妓楼で推薦されて朝廷に出仕したくない
用心しろよ ピダム公は天運で権勢を手に入れたが
あごが鋭いゆえ その権勢は長続きせぬだろう』

 

なぜチャドゥが 真実の相を話さなかったのか
それは ピダムの未来がしっかりと見えたからに他ならない

 

同じ時

 

ヨナは 密かにチュンチュを呼び出していた
涙ながらにボムミンへの想いを訴え どうかつき合うことを許してほしいと懇願する
卑しい妓女の身でも この愛だけは真実だと…!

 

しかし ピダムと同様に チュンチュもまた 女の涙に惑わされるような人物ではない
もしその心が本物なら 骨品を与えるという女王の申し出を断るはずがないという

 

※骨品:王都内部での氏族の序列

 

『成人した息子の 恋心まで変えることは出来ぬ
だがもしお前が ボムミンを害そうとしたら この私が許さぬ! 覚えておけ!!!』

 

田舎に帰るはずのチャドゥは チュンチュの屋敷を訪ねていた

もどったチュンチュは 見知らぬチャドゥの訪問に戸惑う

 

『この角の中には 千変万化の策が入っています
私を起用してくだされば その手に三韓を握らせて差し上げます』

 

『私は三韓を手に入れたいのではなく
三韓一統の大義を 三韓の民の胸に植え付けたい
私の後ろ盾で朝廷に出仕するつもりなら 見込み違いだ
田舎に戻り その角で土を耕して暮らした方がよい…!』

 

その答えを聞き チャドゥはその場に土下座してひれ伏した
生涯を捧げるべき主君を ようやく見つけたと…!

 

そして チュンチュが望むと望まないとに関わらず 勝手に主君!と叫び
一生涯 変わらぬ忠誠を誓うと宣言するのだった
チュンチュの足元に取りすがり オイオイとむせび泣くチャドゥに
お茶を持って来たムニは微笑み チュンチュも どうすることも出来なかった

 

一方 ボムミンは ピダムの前に立っていた

 

ヨナを巡り 真剣で勝負を挑み 自分が勝ったらヨナを放免しろと息巻く!
ピダムは 半ば呆れながら ここで斬り殺したらチュンチュに恨まれると笑い出す

 

『卑しい女のために命を懸けるとは 実に無謀だな』
『誰が死ぬかは 勝負すれば分かる!』

 

真剣を手に 夢中で振り回すボムミン!
ピダムはそれを軽くあしらい すべてみね打ちで交わしていく
何度斬りかかっても 無様に転がされるボムミン!

 

『負けを認めるか?』
『まだ終わってない!!!』

 

みね打ちでなければ 今頃ボムミンは即死である
それでも負けたとは言わないボムミンに ピダムは…

 

『お前の恋慕の情が 私の剣に勝った
よかろう 約束通りヨナを放してやる』

 

ピダムは 宿敵の息子とはいえ 若いボムミンを簡単に殺したりはしなかった
しかし 勝ったと言われても決して納得しないボムミンだった

それでも ピダムはヨナを放すと言った
ボムミンは ただそれだけで歓喜し 自分の中の誇りも無視し ヨナのもとへ走る!!!

 

ヨナは 自由になったと伝えても ただ涙を流すだけだった
さぞ喜ぶだろうというボムミンの期待に反して さめざめと泣くヨナ…

 

『この世の貴賤は 誰が作ったのでしょうか

ある者は 生まれた時から貴族で ある者は一生 賤民でいるしかないとは
天が恨めしいです いっそ… この命を絶ちます!
そして生まれ変わり ボムミン様と添い遂げます』

 

ヨナによれば 父チュンチュが 今度息子に会えば許さぬと言ったと…
それを聞いたボムミンは 父親への怒りに震える!
ようやくピダムが放免するというのに まさか父親が妨害するとは思ってもいなかった

 

チュンチュは 次男インムンと共に チャドゥの様々な策に聞き入っていた

 

王室や朝廷の言葉は難解で 民にはほとんど伝わっていないというチャドゥ
中原の言葉を広め また民が字を覚えれば 国への誇りが生まれるという
チュンチュは チャドゥの案にすっかり魅了されていた

 

『将来 三韓の民が皆 読めるようにならねばならぬ

お前のような人材が埋もれていたとは…
その角の中には 森羅万象の知恵が入っているようだ』

 

チュンチュは感じ入り チャドゥを強首(カンス)と呼び
主君がそう呼ぶなら…と 今後は自らを“カンス”と名乗ることに…

 

そこへ 怒りに打ち震えたボムミンが飛び込んでくる!!!

 

『私と別れるよう!ヨナを脅したのですか!!!』
『何?!』
『兄上!何を言い出す!』

 

ボムミンは ヨナへの想いだけで何も見えなくなっていた
三韓の民を救おうとする者が か弱い妓女を傷つけるのかと叫ぶ
たったひとりの女性も愛せずに 三韓の民を守れるはずがないと息巻く!
何を言ったところで ボムミンの中に大義などは存在していない
ヨナを遠ざけようとする者は すべてが敵に見えるのだ たとえそれが父であっても!

 

『私は家を出ます!!!』

 

ムニは 息子の言葉に驚き 何とか止めようとする
このように父親に反抗する息子を 初めて見たムニだった

 

『父上と縁を切るというのか!』
『親不孝を… お許しください!!!』

 

必死に我が子を止めようとするムニ
しかしチュンチュは 止めるなという

 

『今は心が乱れ 誰の言葉も耳に入らぬはずだ
ボムミン 覚えておけ ヨナの微笑みではなく眼光を見るのだ
人の心を読めねば 甘言に惑わされ大事な道を踏み外す…!』

 

それではまるで ヨナが甘い言葉で騙していると言っているようだ…!
ボムミンは 敵意の目で父親を睨み付け 言葉もなく飛び出して行く
チュンチュは そんな息子を 今はただ放っておくしかない
言い聞かせてどうにかなるものでもない ボムミン自身が自ら気づかねば…

 

ピダムは ヨナを放免した
反対する父親とも縁を切った
あとはヨナと2人 どこへでも行けばいいのだ

 

胸を躍らせて妓楼へ迎えに行くボムミン!
すると ピダムと談笑するヨナの声が…

 

『お前がチュンチュ父子の仲を裂けば 将来 国をも滅ぼす妖婦になるだろう』
『ピダム公がお望みなら たとえ火の中へでも飛び込めます』
『そうか? ハッハッハ…』

 

そこへ ボムミンが飛び込んでくる!!!

 

ピダムは 余裕の表情で選択はヨナに任せるという
当然 自分のもとへ飛び込んでくると思っていたヨナは ピダムを選んだ…!

 

すべてを捨てて迎えに来たボムミンは いたたまれなくなって飛び出して行く!!!

 

行き場のないボムミンは チョングァムとともに伯父ユシンを訪ねる
ユシンは 兵士たちに交じって柵を造っていた
なぜ将帥である伯父上が柵を?と尋ねるボムミン

 

『国を守る仕事に貴賤があろうか 柵を造るのに将帥も兵卒もない
私の揮下の兵は 将帥と兵卒が一丸となり戦うだけだ
ところで 何用でここまで来たのだ』

 

『徐羅伐(ソラボル)にいると 心が乱れて…
ここで戦いながら 心を鎮めようと来ました』

 

※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ)

 

『徐羅伐(ソラボル)には 父親を狙う者が多いのに… 心配だ』
『父上は一騎当千の強い方ゆえ 心配ご無用です 私はここで戦功を立てます!』

 

まさか 父親と縁を切ってきたなどとは とても切り出せないボムミン
かねてより 甥の動向を心配していたユシンは 何か事情があると気づいていたが
その場は何も言わず 受け入れるのだった

 

同じ時 チュンチュの屋敷には ファシが忍び込んでいた…!

 

もともとファシが 高句麗(コグリョ)でチュンチュの暗殺に成功していれば
百済(ペクチェ)が これほどまでに唐から圧力を受けることはなかった
チュンチュの暗殺は ファシが生き残るための唯一の道なのだ
しかし そういった状況を見極めているチュンチュは いつもの寝台にはいない…!

 

『誰の差し金だ!
私を殺せと命じたのは 百済(ペクチェ)王かピダム公か!!!
刺客ごときが 私の大義を斬れると思うか!!!お前の主君に伝えよ!
数万の大軍でも チュンチュの大義は斬れぬゆえ 無駄なことはするなと!!!』

 

刺客をこの場で斬り捨ててもおかしくない
しかしチュンチュは 刺客をわざと逃がし 自らの意志を伝えさせた
ファシは 身を賭してチュンチュに斬りかかることもせず
ただチュンチュの気迫に怯え その場から去るしかなかった

 

チュンチュの寝所を出たファシを 次男インムンをはじめ兵士が取り囲む!
新たにチュンチュの参謀となったカンスは…

 

『チュンチュ公を狙うとは この場で斬り捨てたいが
チュンチュ公が雅量を示された おとなしく帰れ!
今度ばかりは許すが またもチュンチュ公を狙ったら命はないと思え!』

 

しっかりと主君の思惑を察している参謀カンス
しかし インムンには なぜ父親が刺客を逃がしたのか分からない

 

『刺客を殺せば 敵はまた刺客を放つだろう
生きて帰せば私が徹底的に備えていると知り 二度と刺客を放つことはないはず』

 

今回の件は ピダムではなく百済(ペクチェ)王の仕業であろうと推察するチュンチュ
ピダムであれば 刺客ではなく 朝廷を利用し反逆罪で処刑しただろうと…

 

『私への恨みが深い百済(ペクチェ)王の仕業だろう
ウィジャ王は 聖君の資質を持つ人物なのに
私的な恨みに捉われ 和親を成せぬことが残念だ』

 

翌日

 

チュンチュの参謀となったカンスとは対照的に ヨムジョンはピダムの参謀となった
ピダムは 大王陛下ではなく 自分に忠誠を誓えるかと問う
自分に忠誠を誓うなら この上ない栄華を極めさせてやろうと…

 

『私は ピダム公に この命を捧げて忠誠を尽くします』
『ハッハッハ… 命まで捧げる必要はない 生死を共にすればよい』

 

そこへ 昨夜の騒ぎを部下が報告にくる
チュンチュは刺客を殺さず 生かして帰したと…!
ピダムは すぐさまチュンチュに会い 自分の仕業と誤解していないかと問う

 

『ピダム公なら 朝廷の命令を掲げ 公衆の面前で処刑する方法を選んだろう』
『ああ! 私ならチュンチュ公の家門を大逆罪で滅ぼし!
チュンチュ公の名を 二度と聞くことが無いように 徹底的に踏みにじる!!!』

 

『私の家まで 何用で来た』

 

『チュンチュ公と この国の将来のために 大事な話をしに来た
私の手で チュンチュ公を王座に就け この国に 新しい世を開きたい…!』

 

『…何?!』

 

『チュンチュ公! 私の手を… 握ってくれるか?!!!』

 

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