王冠 第2話 王冠

瀕死のチャミョンを救い出したのは 技芸団のチャチャスンと妻のミチュ

馬車の手綱を握るのは チャミョンの義兄イルプムだ

『早くして!王女様が死んでしまう…!』

『とんでもないことを言うな!とにかく早く急ごう!』

一方 自鳴鼓(チャミョンゴ)を引き裂いたラヒ王女は

祖国を裏切るという自らの行動に震え おののいていた

ひとり酒をあおり ホドン王子の肖像画に語りかける

『乾杯しようか

望みどおりにしたわ 太鼓も裂き チャミョンも殺した』

今や 自分を理解してくれるのはホドン王子ただひとり

しかし 飲み干した盃を 肖像画に叩きつけるラヒ…!

『私もつらかったのよ! 
いくら憎い女でも 嫉妬に狂ったとしても…

いくら腹違いの妹にしても! 殺したくはなかった』

シクシクと泣き出すラヒ

『ホドン… なぜ私を惨めな女にするの ひどすぎる… 
どうして私を愛さないの

そんなあなたを… 愛するしかないなんて…』

すでにチャミョンは死んでいると… 自分が殺したんだと思っているラヒだが

チャミョンは かろうじて生きていた

チャチャスンとミチュの解毒治療が始まる中 もうろうとした意識の中を彷徨う

(父上 自鳴鼓(チャミョンゴ)を守れませんでした

これで楽浪(ナンナン)はどうなりますか…

すみません 父上が苦労して建てた国なのに…)


それは ラヒとチャミョンが生まれる前の

楽浪(ナンナン)国が建国される前の時代


漢の武帝が 檀君王倹(タングンワンゴム)が建てた朝鮮を滅ぼし

昔の朝鮮の地 楽浪(ナンナン) 臨屯(イムトン) 真蕃(チンバン)

玄菟(ヒョント)に 漢四郡が置かれて120年を越えた

楽浪(ナンナン)郡の王 ユ・ホンは 極悪な人物で

朝鮮の民の不満は怒髪天を衝いた

沸き立つ時代状況と関係なく 命は生まれ また死んでいき

この時 チャミョンは チェ・リの正妃モ・ハソの胎内に

またラヒは 次妃ワン・ジャシルの胎内にいた

清楚で美しいモ・ハソ

奔放で妖艶なワン・ジャシル

2人の夫人の胎内に 同時に宿った命

ワン・ジャシルの思いは 格別に強かった

『私は第2夫人であっても この子は将軍の長男になる

何があってもモ・ハソより先に産む』

モ・ハソは 無事に我が子を産めるようにと ひたすらに祈祷する

『天帝の息子様 私たちの祖先 檀君王倹(タングンワンゴム)

チェ・リの妻モ・ハソが願います

7歳で婚姻し 25年の歳月が過ぎても 息子を残せませんでした

この体で 夫に健康な子供をお与えください たとえ娘を産んだとしても…

この体が娘を産めば ジャシルに息子を与え 夫に喜びをお与えください』

あまりに違い過ぎる2人の妻は それぞれの場所で出産の時を待っていた

そんな中 暴君ユ・ホンに耐えかねた臣下と民が 反乱を起こす

水害による被害に加え 楽浪(ナンナン)郡に内乱が起きたことは

高句麗(コグリョ)の王 無恤(ムヒュル)にも ウナル将軍から伝えられた

『今は 反乱は問題ではない

この機会に ユ・ホンがあの2人を殺してほしい』

『2人とは 左中郎将チェ・リと 右中郎将ワン・ゲンですか?』

『チェ・リは知将で ワン・ゲンは勇将だ

頭と剣が力を合わせれば 高句麗(コグリョ)には都合が悪い』

『それはそうとしても 現在はユ・ホンが問題です』

『昇る日は熱いが 沈む日は熱くない ユ・ホンの破滅は時間の問題だ

ユ・ホンが滅び 高句麗(コグリョ)が楽浪(ナンナン)を得るためには

チェ・リとワン・ゲンは 必ず討つ必要がある

ホドンにはこの意味が分かるか?』

無恤(ムヒュル)は 幼い我が子ホドンを視察に同行させていた

ホドンは 父を見上げながら…

『“夷を以て夷を制す” 敵に敵を討たせることです 父上 “漁夫の利”

父上が貝を拾うように 楽浪(ナンナン)を拾うことです』

あまりにも賢い答えに無恤(ムヒュル)は大満足の笑みをこぼす

ホドンは 学問の師ウルドゥジに向かって ペコリとお辞儀をした

その頃 沸流那(ピュリナ)族の首長ソン・オックは 愛娘の帰りを待っていた

大武神王 無恤(ムヒュル)の妃となった娘メソルスが 久々に帰郷するのだ

メソルスは 宮殿の暮らしのつらさを口にする

王が問題なのではなく 原因はすべてホドン王子にあると…

『私が枕元を争う敵は 後宮でもなく 美しい侍女でもなく… ホドンです

前妻の息子と暮らすとは思いませんでした! 不幸な運命です』

『息子を産め 老いて持った子は可愛いものだ

高句麗(コグリョ)の次の王には 私の孫がなるのだ』

『私ひとりで産めますか! 部屋に来ても…』

それ以上のことを口にすることはできないメソルスだった

 

無恤(ムヒュル)は ホドンの母親を心から愛していた

次妃として メソルスと婚姻はしたものの 徹底的に無視し続けているのである

楽浪(ナンナン)郡では…

内乱を起こした周辺部族を粛正するため ユ・ホンはチェ・リとワン・ゲンを呼ぶ

なぜ民が反乱を起こしたのか… と苦言を呈するチェ・リ

お前がこの国の王なのかと 激怒するユ・ホン

たとえ殺されても… と思いかけたチェ・リだったが

言われるままに 自分は朝鮮人ではなく漢人だと言い切り 土下座する

危うく命を落としかけたチェ・リは帰宅し 神殿で…

『私が良心を曲げたのは 死を恐れてではありません

犬死しても 朝鮮の民を救えないからです

この体は死のうと生きようと 骨の髄まで 血の一滴まで… 朝鮮人です!

誓ってこのチェ・リは ユ・ホンを殺し楽浪(ナンナン)郡を滅ぼして

檀君王倹(タングンワンゴム)が建てられた朝鮮を取り戻します!

その証しに チェ・リの血を捧げます』

ユ・ホンは やはりチェ・リを生かしてはおけないと憤慨が収まらない様子

しかし 兵を率いるチェ・リとワン・ゲンは 今はまだ利用価値がある

 

そこへ 天文官チャムクから星の動きに反乱の兆候があると報告が入る…!

『チェ・リの2人の娘が楽浪(ナンナン)を滅ぼす?

間違いなくチェ・リの2人の娘が危険なのか?』

『私の首を賭けて確信します

明日 陽が昇るまでに チェ・リに逆謀の2人の娘が産まれます』

チャムクの予言通りと言えるのかどうか…

ワン・ジャシルに続き モ・ハソが産気づいた

チェ・リの血の誓いにワン・ゲンが賛同し 2人でユ・ホンを倒そうと誓う

4500の兵のうち 3000は朝鮮兵 1500は漢軍

ワン・ゲンが漢軍を連れ回している間に チェ・リが朝鮮兵を率いユ・ホンを討つ

ただひとりの妹ジャシルが チェ・リの次妃になっている

義兄弟である2人の絆は固く結ばれていた

相談がまとまったところへ ユ・ホンの使いとして丞相オブギと太傳ホゴクが来る

まだ生まれてもいない2人の赤子は娘であり

楽浪(ナンナン)を滅ぼすから 生まれたら直ちに殺せというのだ

『陛下がこう言われた

“チェ・リが意を奉じなければ チェ・リの家の者は1人も生かすな” と!』

チェ・リの中に 誓いを立てた自らの言葉がよぎる

ユ・ホンを討ち取るためには… ユ・ホンを討ち取るためには…!

『陛下 謹んで命を奉じます

私の子供が娘なら 臣の手で首を絞めて殺します』

はじめに産気づいたワン・ジャシルが出産する

取り上げた侍女チソは青ざめた…!

産まれた子は娘だったのだ

しかしジャシルは 産後にもかかわらず派手な化粧と身支度で
ホゴクの前に…

そして 生まれたのは息子だったと言い切るのだった

ホゴクを納得させると ジャシルは産室に戻らず 天文官チャムクに会いに行く

『ここへ来た理由は分かるが 戻りなさい』

『私の夫には 息子はないと言いましたね』

『運命に逆らうことは 2本の足で歩く者にはできません チェ・リに息子はない』

『娘は死ぬ運命ではありません』

『む…無理はやめて 娘を渡しなさい』

『赤い日を抱いて生まれた子です

生まれてすぐ 首を絞められて死ぬなら 私の体を借りません!

太陽を抱いた子の運命は 安易な死ではありません! 私は信じません』

『ユ・ホン大王の血筋でなければ誰も!太陽を抱いて生まれてはならない』

『運命は変えられません!』

『産んですぐ子を失う 夫人の立場が気の毒なので

今の話は聞かなかったことにします』

どこまでもどこまでも ワン・ジャシルは諦めずに嘆願する

そしてとうとう… 産後の体を 妖艶にくねらせてチャムクに預けるのであった

一方 モ・ハソはいまだに出産していなかった

生まれてすぐに奪われる命なら 生みたくはないと…

すでに頭が見えていながら モ・ハソは苦しみに耐えいきまないようにする

乳母タルゲビは モ・ハソを叱る このままでは母子ともに死んでしまうと…!

いっそ2人で死ぬ方がいいと泣き崩れるモ・ハソだった

夢の中で 女の子が自分の前に立ち 一緒に生きてもいいかと聞いてきた

そしてその子は 自分に抱きつき 体の中に溶け込むように入って来て消えた

あれは我が子だと確信していた

あれは自分の娘なのだと…

言葉を失うチャムクに なおも体を押しつけるワン・ジャシル

 

『少なくとも 私の娘を助けてください』

『私にそんな力はない』

『大使令様だけに可能です チャムク…

私の婚礼の時に あなたが私を見た あの目の光… 私は覚えています』

『それは… 男なら誰でも…』

チャムクの手を引き 自らの胸にあて そっと抱きしめる

『こ…この年寄りをからかわないでください やめて…

私には これ以上夫人を拒否する力がありません』

『子を産んだばかりの体でなければ 私のすべてを差し上げられますが

今 私に出来るのはこれしかありません』

その口に酒を含み チャムクの口に流し入れるジャシル

チャムクは 恍惚とした表情でジャシルに身を任せる

その時 陶器の割れる音が夜の闇に響き渡る…!

音の方向に ジャシルの目がギロリと動いた

 
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