к 風の国 第10話 к
深夜 テソ王のもとに呼ばれたのは
トジン メングァン 無恤(ムヒュル) マロの4人
『殺すべき反逆者がいる』
『誰ですか?』
テソ王も財部皁衣(チェブジョイ)サグも その名を明らかにはしなかった
何かが変だと感じる無恤(ムヒュル)
自分たち黒影(フギョン)を使うというのに
外使者(ウェサジャ)タクロクの姿がない
※黒影(フギョン):敵国の王や太子の暗殺を企てる秘密部隊
タクロクはテソ王に謁見していた
狩りの途中で賊に襲われたテソ王を心配し すぐにも駆け付けたタクロク
しかし テソ王はすぐには謁見を許さなかった
サグから 暗殺を企てたのはタクロクだと報告を受けていたからだった
テソ王は 句茶(クダ)国に遠征中の上将軍(サンジャングン)の仕業だと話し
反乱軍討伐には左将軍(チャジャングン)を送るが
タクロクには私兵を差し出せと命じる
またタクロク本人には 自分のそばで警護してほしいと…
※句茶(クダ)国:朝鮮古代の部族国家
※上将軍(サンジャングン):全軍に権限を持つ 将軍の最上位者
※左将軍(チャンジャングン):首都防衛軍を指揮する将軍
タクロクの私兵が城外に出た後 サグはトジンたちに密命の内容を明かす
『奴の兵は城の外に出た 家の守りも手薄だ 一族を皆殺しにせよ』
『本当に外使者(ウェサジャ)が陛下を狙ったのですか』
『さよう』
『信じられない… あり得ません!』
『ヨン隊長!しっかり部下をしつけよ!
命令とあらば肉親でも殺すのが黒影(フギョン)だ!』
サグに対し 怒りの感情をあらわにするトジン
逆賊の子とはいえ トジンは王族である
『王命に背くのですか?』
『陛下にお会いしたい 真偽のほどを確認します それまでは出陣しません』
直接テソ王に謁見し話を聞くトジン
しかし 刺客の持ち物からタクロクの文が発見されていると聞かされる
『行ってタクロクを殺せ 奴がお前を息子のように育てたのは知っている
だが タクロクは反逆者だ 早くタクロクを殺して わしへの忠誠心を示せ』
トジンを待つ無恤(ムヒュル)たちは…
ただ命令に従えばいいと割り切る ヨン隊長とメングァン
無恤(ムヒュル)は黙り込み マロは1人反対の意見を主張する
『外使者(ウェサジャ)様は俺たちの命の恩人です! なのに殺すなんて…』
しかし無恤(ムヒュル)は 命令に従おうと言い出す
『テソ王がそう決めたなら もう終わりだ
俺たちが命令に背けば 俺たちも外使者(ウェサジャ)様も殺される』
『ヨンお嬢様も殺すのか?!』
『……』
『どうしたんだ まるで別人だぞ!』
『俺たちで… お嬢様を救う 黙って従ってくれ そうしてこそお嬢様を救える』
迷うことなく命令に従うヨン隊長とメングァン
タクロクの娘ヨンを救うべく 命令に従おうとする無恤(ムヒュル)とマロ
そこへ戻ってきたトジンもまた テソ王への忠誠心のため心を同じくする
黒影(フギョン)の1人が サグの怪しい動きをタクロクに伝える
自分の知らない所で テソ王が黒影(フギョン)を動かすということは…
すべてを察したタクロクは まず娘ヨンを城外に逃がす
急な使いを頼まれ 何も知らずに出て行くヨン
タクロクは 今生の別れになることを知りながらも ただ静かに見送るのだった
手薄な見張りを倒し 5人はタクロクの部屋に向かう
途中 無恤(ムヒュル)とマロは ヨン救出のため別行動をとる
外使者(ウェサジャ)タクロクは トジンと2人だけになり話し始める
『私はもう 陛下の信頼を失った 命令に従え
お前の身分を取り戻せなかったのが残念だ
陛下や扶余(プヨ)に忠誠を尽くし
お前の亡き父や 家の名誉を取り戻すのだぞ
最後にお前に頼みがある ヨンを頼んだぞ あの子は…生きるべきだ
あの子を見つけて 守ってやってくれ!』
『そうします 必ずや… ヨンを守ります』
『ありがとう さあ 任務を果たすがよい』
『……』
『お前が遂げてこそ 陛下に認められる さあ!』
執事に付き添われ城外に使いに出たヨンは 方向が違うことに気づく
執事は 観念したようにタクロクからの書状を渡す
“お前がこれを読む頃は 父は死んでいるだろう
愚かにも 自分の危機に気づかなかった
今 陛下は 私を暗殺犯と誤解している
ヨン お前は生きてくれ 扶余(プヨ)を去ったらすべてを忘れなさい
扶余(プヨ)への憎しみも 陛下への恨みも持つな
憎しみや恨みで人生を潰してはならん お前だけは幸せになっておくれ
父親なのに お前を守り切れず本当にすまない”
涙にくれるヨンを急かし 一刻も早く逃げましょうと言う執事
しかし間もなく追っ手に囲まれ 執事は殺されてしまう
ついにはヨンに向かって剣が向けられようとしたその時…!
無恤(ムヒュル)とマロが現れた
『扶余(プヨ)城へ連れてって 陛下の誤解を解かないと…』
『いいえ もう手遅れです 逃げてください』
『従ってください 外使者(ウェサジャ)様は もう亡くなりました』
声もなく ハラハラと涙を流すヨン
『どこに行っても 必ず見つけます 早く逃げて』
自分の馬にヨンを乗せ 無恤(ムヒュル)は馬の尻を叩いた
走り去るヨンの背中を 見えなくなるまで見送る無恤(ムヒュル)
初めての出会いから ヨンのことが気になっていた
そして今 無恤(ムヒュル)の中にヨンの存在が大きく広がっていくのだった
最も信頼していた家臣タクロクを失い テソ王の心は沈んでいた
一族を皆殺しにと命令しながらも ヨンが逃げ延びたと聞き安堵する
もうこれ以上ヨンを追うなと言うテソ王に サグは不満げな表情を見せる
高句麗(コグリョ)では…
情報総監ヘアプ率いるクェユとチュ・バルソたちが調査し
新国の使臣を殺した功臣タクロクが殺されたと知るユリ王
※新国:王莽が前漢を倒して建てた中国の王朝
『テソ王のそばには 強硬派のサグだけが残りました
対高句麗(コグリョ)政策が強まるでしょう』
※高句麗(コグリョ):ユリの父 朱蒙が建てた国
国境の警備を強化する一方で ユリ王は大加(テガ)たちを監視させていた
それが すべて情報総監ヘアプの指示だと知る最高長老サンガ
※大加(テガ):諸加(チェガ)会議を構成する各部族長
サンガの養子である右輔(ウボ)ペグクは マファンの屋敷に顔を出し
ヘアプを差し出せと命じる
『ヘ…ヘアプと言いましたか?』
その頃ヨジン王子は 宮殿の生活が息苦しいと言い
チュ・バルソをそそのかし宮殿の外へ…
楽しそうに市場を歩き回るヨジン王子
『面白いものばかりだ』
『…もっと面白いものもありますよ』
チュ・バルソは ヨジン王子を女が買える場所へ連れて行く
戸惑った王子が宮殿に戻ると 母ミユ王妃が激怒している
息子を是が非でも太子にしたいミユ王妃は ヨジン王子の軽率な行動を叱る
一方 ユリ王は 娘セリュ姫が嫁いだ旗山(キサン)国の族長が亡くなり
望まぬ政略結婚で遠方へ嫁ぎ 挙句に未亡人となった娘を思い心を痛める
扶余(プヨ)の黒影(フギョン)養成所では メングァンの怪しい行動に気づき
トジンと無恤(ムヒュル) マロが追跡し捕らえた
決して口を割らないメングァンに トジンは殺しかねない気迫を見せる
外使者(ウェサジャ)タクロクの死に関係があるとすれば 許すことは出来ない
逆賊の子と蔑まれていた頃 親同然に可愛がってくれた恩人を
忠誠心を示すためとはいえ自らの剣で 殺してしまったトジンだった
タクロクの死により 黒影(フギョン)養成所の運営は
財部皁衣(チェブジョイ)サグに任された
サグは トジンに新国への長期遠征を言い渡す
王族であるトジンを疎ましく思っての措置だ
すぐにも発つと言うトジンに 無恤(ムヒュル)は大事な首飾りを渡す
『俺の親が遺した唯一の物だ』
『なぜこれを?』
『お前は 兄弟だからさ』
1年という期間の遠征だが おそらく二度と宮殿へは戻れない
そんなトジンとの間に 今ようやく絆を感じた無恤(ムヒュル)だった
トジンが発った翌朝 黒影(フギョン)に招集がかかる
数人の部下を連れ発ったトジンが 仲間を殺し逃走したのだと…!
その頃 高句麗(コグリョ)では
未亡人となって戻ったというセリュ姫をひと目見ようと クェユが佇んでいる
すると ひと目でも会いたかったセリュ姫が隣に…!
『クェユと言ったか?』
『覚えておいでですか?』
『兄の忠僕を忘れたりするものか ヘアプはいるか?
人目を避けて 私の部屋へ連れてきてくれ』
ヘアプとクェユを前に セリュ姫は地図を広げる
それは 黒影(フギョン)養成所の詳細な地図だった
セリュ姫は 旗山(キサン)族の密偵を使い 入念に調べ上げていたのだ
その密偵は 3か月に一度 報告のためにある場所に来ると言う
1か月後の報告時には ヘアプ自らが出向き話を聞くようにというセリュ姫
黒影(フギョン)の養成所で 新入りが密かに抜け出すのを目撃し
無恤(ムヒュル)とマロが後を追う
その先には ヘアプ クェユ チュ・バルソが待っているのだが
無恤(ムヒュル)とマロは何も知らず 新入りを捕らえる
この密偵が 高句麗(コグリョ)に情報を流していたことが明らかになり
テソ王は 高句麗(コグリョ)出身の無恤(ムヒュル)とマロを呼びつける
『お前たちは実戦で手柄を立ててきた
そこでお前たちに 大任を命じようと思う
高句麗(コグリョ)へ行き ユリ王を殺せ』
ひざまずき 宝剣を賜る2人
『この剣で ユリの心臓を刺せ
ユリを殺して戻れば お前たちは扶余(プヨ)の貴族となり
子々孫々まで富と栄華を享受するだろう』

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