第12話 ![]()
あの日 イ・ウォノを斬り殺した仁祖(インジョ)
その仁祖(インジョ)の剣に刻まれていた紋章が ヨンの胸に刻まれている
コンガルは… いや 伝説の刺客イ・ヨンジェは知ってしまった
ヨンこそが イ・ウォノの息子イ・ギョムだということを…!
必死にヨンを介抱するポンスン
ようやくヨンが意識を取り戻すと 出血時にいいからと牛の血をすすめる
『牛の血?!!! おぇっ…』
『男のくせに弱いわね!早く!
工曹判書(コンジョパンソ)宅までもらいに行ったのに』
※工曹判書(コンジョパンソ):営繕 手工業を管轄する官庁の長官
『工曹判書(コンジョパンソ)?』
『明日 倭国に発つから牛を潰すと聞いて行ったの』
工曹判書(コンジョパンソ)イ・シベクについて調べていたヨンだった
倭国に行くという情報について ヒボンから聞き出そうと…
『倭国の船が漂流してきて捕獲されたんだが
偵察船じゃないかと 朝廷が騒いでる
そこで工曹判書(コンジョパンソ)自ら倭国に行くみたいだ』
『期間は?』
『知るかよ 数か月かもしれないし 事の次第では年を越すかも
大量に荷造りしてたぞ』
『明日 発つの?』
『そうらしい』
ピョン・シクは どうしても捕らえられない一枝梅(イルジメ)に苛立ち
シフに警備記録を取りに行かせる
屋敷で記録を渡そうとしたウンチェが 書類の配置の異変に気づく
『もしや あの盗賊を部屋に入れたか?』
『それは… 何をおっしゃるの!』
『お前は 棚の書物や筆の置き場所を常に同じにしている 間違うはずがない』
ウンチェが配置の違いを指摘したのは 天友(チョヌ)会の名簿だった
シフが名簿を開くと そこに書かれている人物は
今回 一枝梅(イルジメ)が狙った屋敷と一致する…!
シフは名簿を持参し 父ピョン・シクのもとへ
『天友(チョヌ)会とは何ですか』
『…天友(チョヌ)会? なぜだ』
『気になることが』
『…王様を即位させた功臣の集まりだ
今は功臣でなくとも権力者なら誰でも入れる それが何か?』
『盗賊が入ったのは いずれも会員宅です』
『何だと?!』
ギョッとするピョン・シク
シフの情報から さっそく天友(チョヌ)会の会員宅を見張ることに
羅将(ナジャン)であるシフの指示に従うなんて!とシワンは激怒し
張り込み先に妓生(キーセン)を呼び酒を飲む始末
厠(かわや)から戻って来ない妓生(キーセン)に腹を立てていると
突然暗闇から縄が飛んできて 縛り上げられてしまう
井戸の上に吊るされたシワンを屋根の上から見ている一枝梅(イルジメ)
『助けてください!どうかお助けを!』
『キャ~!!!』
厠(かわや)から戻った妓生(キーセン)の悲鳴に
近隣で張り込んでいた役人たちが集結する
明らかに酒を飲み衣服が乱れているシワンを一瞥し
一同は一枝梅(イルジメ)が逃げ去った方角へ…!
屋根を飛び 塀を乗り越え逃げる一枝梅(イルジメ)を追うシフ
先日の斬り合いで腹に負傷している一枝梅(イルジメ)は動きが鈍い
シフはまたしても一枝梅(イルジメ)の足に傷を負わせた
通りかかった輿を襲い 女性に扮して逃げ切る一枝梅(イルジメ)
縛られている女性を発見したシフたちは 輿を追跡する
中から止めろと合図され 輿を運ぶ下僕が停まったところへ
ようやく追いついたシワンが調べるが 中には誰も乗っていない
輿が停まった場所の真下には 氷庫へ続く排気口があった…!
この野郎!とばかりに 怒り心頭のシワンは氷庫へ乗り込む
しかし 中に入った途端に扉が閉められ中に閉じ込められてしまう
貯蔵されている氷の冷たさに耐えながら やっとの思いで排気口を進み
輿が停まった場所の出口に辿りつく
出ようとした途端 その出口もまた一枝梅(イルジメ)が大きな石で塞いでしまう
シフは またもや一枝梅(イルジメ)が現れたことをウンチェに告げる
ウンチェは 生きていたと喜びを隠さない
『利用されたのが分からないのか!今回も会員宅だ!』
『それは偶然の一致です』
『偶然の一致?いいだろう 奴を捕らえて目の前で明かしてやる』
ヨンは 自宅に戻り風邪と偽って寝込んでいた
心配しながらも セドルは出歩き過ぎだと叱る
『それにしても 役人たちが家を回って男どもの服を脱がすとは』
ケガをしている一枝梅(イルジメ)を捜しだすためだと気づいたヨンは
寝てもいられず 市場の通りに出かけていく
すると前から役人が現れ ヨンはヒマ組のケンカ騒ぎの中に身を投じる
腹も足もまだ痛む体で たちまちやられてしまうヨンを コンガルが見ていた
『まだ寝てろと言ったろうが!!!』
ヨンを守り 次々に悪党を蹴飛ばしていくコンガルの強さに目を見張る一同
そこへ 役人たちがやって来て服を脱げという
何とか注意を逸らしヨンを逃がそうとするコンガルだが
ヨンは逃げる機会を失い もたもたと服を脱ぎ始めるのだった
役人の中にはシフの姿があった
もうこれまでかと思われたところへ シワンが現れヨンに気づく
『ヨン!俺の子分 あれ?お前ケガしたのか?』
『あ…あぁ実は… あいつらとやり合って!!!』
『お前ら!!!』
ことのほかヨンを可愛がっているシワンを利用し ヨンはその場を切り抜けた
シワンについて屋敷に来たヨンは 出かけようとするウンチェに声をかける
一枝梅(イルジメ)の無事を祈りながら ウンチェはヨンを毛嫌いする
2人が同一人物だとは夢にも思わずに…
ピョン・シクのもとを訪れているのは 清の勅使チョン・ミョンス
『先日 息子がお嬢さんに無礼を働いたとか お訪ねして謝罪すべきでした』
『…いえいえ 花を素通りする蝶などいませんから あの… これを』
『何ですか』
『少しばかりの誠意です 清国と朝鮮の橋渡し役として
心強く思っておりますので… そうだ 世子(セジャ)殿下はお元気ですか』
『皇帝は世子(セジャ)殿下を高く評価しておられます ところで…
王様は大清帝国への服属を認めたくないためなのか
それとも私に悪意をお持ちだからか…』
『あ…悪意ですか?』
『三田渡(サムジョンド)で降伏した屈辱を 私のせいだとお考えのようで』
『いえいえいえ… とんでもございません!』
『それなら幸いです とにかくいい気分です
数日前は 傲慢なキム・イッキ殿がいらして
今日は兵曹判書(ピョンジョパンソ)様がお見えに』
『キム・イッキ? 何の用で…』
『清から何か知らせはないかと』
結局ヨンは 山の中の隠れ家で傷を癒すしかなかった
それにしてもあのコンガルの身のこなしと武術は…
さっそくコンガルに取り入り 武術を教えてくれと頼み込むヨン
そのヨンをボーっと見つめているポンスン
女将シムドクに恋煩い?と聞かれ 照れて逃げていく
二度もシフに斬られたヨンは どうしても強くなりたかった
シフもまた 何としてでも一枝梅(イルジメ)を捕らえたかった
父ピョン・シクの手紙を渡しにに来たシフは王の護衛武士サチョンの
武芸の強さを目の当たりにし指導を乞う
雨が降りしきる中 コンガルは旅立とうとする
ヨンが イ・ウォノの息子イ・ギョムだと知った以上
ここに留まるわけにはいかない
しかし 行く手にヨンが立ちはだかる
自分を強くしてくれる人物は他にいないと確信したヨンは
全力でコンガルを引き止める
『なぜ習いたい』
『それは… やるべきことがある
だから絶対に死ぬわけにはいかないんだ!!!』
シフもまた 何としても一枝梅(イルジメ)を捕らえたい気持ちを必死に訴える
『なぜ捕らえたいのだ』
『僕が人間らしく生きられる唯一の道です
頂点に上りつめるための最速の道なのです!』
ヨンの熱意に負け コンガルはヨンと一緒に旅立つことに…
市場の野菜売りの娘ヤンスンに 桃色の髪飾りを渡し
ヨンはしばしの別れを告げた
自分を未来のの夫と慕う幼いヤンスンを ずっと可愛がってきたのだった
梅の木の下で ヨンは亡き父にしばしの別れを告げる
『当分は来られません 父上のように強い人間になって戻ります』
幼い日 ウンチェと登った梅の木の枝を いつまでも見つめるヨン
その後ろの塀をよじ登り そんなヨンを見ているポンスン
『ここに住んでいたんだね』
ヨンの置手紙を見つけ 字の読めないセドルはフンギョンを呼びつける
『読んでくれ』
『科挙の勉強で山にこもると』
『どこの?』
『コンガルおじさんの知ってる所だと』
島に着いたコンガルは 徹底的にヨンの体力改善を始める
そうと知らないヨンは ただただこき使われていると思い激怒するのだった
その頃ピョン・シクは サチョンのとりなしで仁祖(インジョ)に謁見する
『キム・イッキがチョン・ミョンスに?』
『さようです 清から知らせはないかと尋ねたそうです』
『チョン・ミョンスは?』
『何も知らないようです』
『そうか 奴らが焦りはじめる頃だな エサをまけ』
キム・イッキの一派は ピョン・シクがギョムを捜していると知り
先手を打ちギョムを見つけ出し ギョムを打ち立て王を退けようと話し合う
いつの間にか 王を追い出すための片棒を担がされているヨンは
そうとも知らずに 島の酷い暮らしに耐えていた
『近頃 一枝梅(イルジメ)が現れないらしい』
『……』
『俺が思うに 一枝梅(イルジメ)の目的は盗みじゃない』
『盗賊に盗み以外の目的なんてある?』
『何か探し物があるんじゃないかな
盗みは目的を隠すための 一種の嘘(コンガル)だ』
『コンガルはおじさんだろ 嘘ばっかり!』
『違うならいいが 盗めば皆 盗賊だと思うからな』
『犬が聞いて笑うよ』
『人生万事 “犬”翁が馬 犬のように騒がず生きよう』
薪割り 焚き木拾い 拭き掃除 水汲み…
その合間に 始終飛んでくる雑巾
コンガルは 雑巾をかわせるようになったら武術を教えてやると言い放つ
そんな島の暮らしに ポンスンが現れる
ご馳走を持って現れたポンスンは 酷い扱いを受けているヨンをかばい
父コンガルに激怒する
代わりに教えるというポンスンを鼻で笑うヨンだが
そのポンスンにすら ヨンはたちまち負かされてしまう
『雑巾をよけても 父さんは簡単には教えないよ』
『お前も習ったんじゃ?』
『独学で覚えたの』
『…どうして武術を?』
『……いるの 復讐したい奴』
『殺すの?』
『当然でしょ …父さんには秘密ね』
そんな2人を 深いため息をつき見ているコンガル
ポンスンが復讐したい相手こそ自分なのだと…
『そうだな 自分の業は自分で始末をつけよう』
いよいよ本格的に武術を教え始めるコンガル
しかしすでに ヨンはすべての基礎が身に着いたも同然だった
これまでの下働きは すべての基礎につながる動きだったのだ
剣術の指導には コンガル独自の信念があった
『剣は防御に使え お前は攻撃するな』
『何だって?!!!』
その頃 シフもまたサチョンの厳しい指導を受けていた
『相手は木ではない 屋根の上を飛び回る機敏な奴だ』
まったく姿を見せなくなった一枝梅(イルジメ)に 民衆の噂は…
『清への亡命説もある』
『自殺したって聞いたぞ』
『斬られて気がふれたとか』
『聞いてないのか?一枝梅(イルジメ)は女だったんだ』
『ほっそりした体だもんな』
『女だって?!まさか』
『何を言う あの徹底した捜索をすべて逃れたんだぞ 女は除外されてた』
『どれが本当だ?』
見違えるように剣術が上達したヨンは 真剣でやろうと言い出す
『剣で殺生はするな』
『何で?』
『かつて俺は人斬りだった 信じる大義のためなら人を殺すのも平気だった
だから女も老人も 子供をも斬った この手でな…』
『おじさんの信じた大義って?』
『さあな 何だったかな 人殺しに大義なんてあるか!
お前の大義が何であれ 人を殺めた瞬間 大義もクソもなくなる
お前も俺と同類になるってことだ!』
同じ頃 サチョンもまたシフに自らの過去を語る
『人は私を殺人鬼と呼んだ しかし私は構わない
阻む者は誰でも斬った 大義のために』
『師匠の信じる大義とは何ですか』
『あの方が私の信じる大義だ』
梅の咲く頃に 置手紙を残し出て行ったヨン
夏と秋が過ぎ 厳しい雪の冬が終わり いつしか季節はひと巡りしていた…
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