日高市‥「太陽光発電設備」の規制条例

市長の同意が必須。

・事業区域が規制区域にある場合、市長は同意しない。

●太陽光発電事業を行う「TKMデベロップメント株式会社

・事業計画地は、規制区域内。

・市の条例を「違憲」「無効」と訴え訴訟。

・「条例は憲法で保障された営業の自由、土地の所有者や地権者の財産権を侵害」

「市長の同意を得ずに発電事業をさせるべき」

⇒●さいたま地裁、TKMの訴えを却下。

・再エネ特措法に基づく認定事業者であっても、関連法令の要件を満たす必要がある。

・TKM社はまだ林地開発許可を受けていない点などを指摘。

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太陽光発電所の規制条例をつくる市町村、規制を強化する自治体

2022年4月23日時点で太陽光発電設備の設置を規制する条例は、全国で189

うち都道府県条例は5、市町村条例は184

自治体も町も。。動いていた。。

●2021年4月~2022年2月までに起きた太陽光発電設備をめぐる事故は全国で計435件

大雨で土砂が流出したり、架台などが壊れたりした件数は計33件。

●再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度

それを支える再エネ特措法が急ごしらえだったこともあり、

金儲けができればよいといういいかげんな太陽光発電事業者が増加。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/e8ef22e93200cad2e1e3c063bed852323180c885

日高市メガソーラー訴訟「地裁で却下」の重大背景

記事抜粋 東洋経済

さいたま地裁は5月25日、メガソーラーの建設を計画した事業者が埼玉県日高市を相手取り、

市の条例を「違憲」「無効」と訴えた訴訟を却下した。

森林を伐採し太陽光パネルを敷き詰めると豪雨時に災害を誘発する」との懸念を背景に、

全国で規制条例をつくる市町村が続き、この1~2年は規制を強化した自治体も目立つ。

国も適正な導入・管理をめぐる検討に乗り出した。

「山の斜面の太陽光発電」に向けられる目は厳しさを増している。

 訴えを起こしたのは、太陽光発電事業を行う「TKMデベロップメント株式会社

(本社=東京・渋谷区)(以下、TKM社)と事業用地の地権者ら。

2020年9月、「太陽光発電設備設置事業の権利確認等請求事件訴訟」を提起した。  

日高市の「太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」とその施行規則は、

森林保全区域、観光拠点区域などからなる特定保護区域と保護区域を指定し、

事業者は届け出を行い、市長の同意を得なければならない。

事業区域が特定保護区域または保護区域内にある場合には市長は同意しない、

と条例は明記している。

 訴状のほか、原告が裁判所に提出した書面によると、TKM社は日高市高麗本郷の

約15ヘクタールの土地に総発電出力1万1298キロワットのメガソーラーの建設を計画し、

2018年11月から地元説明会を始めた。

9回目の地元説明会を終えた直後の2019年8月、日高市議会臨時会が開かれ、

条例案を可決し、同日公布・施行となった。  

TKM社が再生可能エネルギー特別措置法(再エネ特措法、再生可能エネルギーの

固定価格買い取り制度を支える法律)に基づき認定を受けた事業の計画地は、

太陽光発電事業が一律に禁止されている特定保護区域、保護区域内にある。

このため、原告は「条例はTKM社が事業を実施できる法的地位・権利、

憲法で保障された営業の自由などを侵害し、土地の所有者や地権者の財産権を侵害

している」と主張。「市長の同意を得ずに認定を受けた発電事業を行うことができる」

ことを確認する、という形で条例が「違憲であり、無効である」との裁判所の判断を求めた。

さいたま地裁第4民事部の倉澤守春裁判長は5月25日午後、「却下する」と判決を言い渡した。

判決は、「当該事業を実際に実施するためには、再エネ特措法に基づく認定事業者であっても、

(林地開発許可を定めた森林法など)関連法令の要件を満たす必要がある」としたうえで、

TKM社がまだ林地開発許可を受けていない点などを指摘。

「TKM社には本件事業を実施できる法的地位があるとは言えない」

「判決により法的地位があると確認をすることが必要かつ適切であると考えることはできない」

とした。

 裁判で原告側は「林地開発許可を得るための手続きに入る手前で、

条例により手続きを進めることが阻害される。そのような条例自体が違憲

と主張していたが、判決は条例と法律の関係や条例の内容の是非に踏み込まずに、

訴えを門前払いした格好だ。  

判決を受け、日高市は「本市の主張が認められたものと受け止めております」とする

市長コメントを発表。原告側の錦織淳(にしこおり・あつし)弁護士は

「判決の内容を見て検討するが、9割9分控訴する」と話した。

TKM社のメガソーラーの事業計画地は、曼珠沙華の群生地として知られる「巾着田」

からもよく見える。日高市は、「遠足の聖地」として巾着田や里山や丘の林の風景を

「売り」にしており、計画は波紋を広げた。

また、予定地の山の向かい側には大きな住宅団地があり、住民たちは

「ふだん眺め、癒しになっている景観が損なわれる」と反対の声を上げた。  

一方、反対運動の中心となった「高麗本郷メガソーラー問題を考える会」が

2019年5月に埼玉県知事や日高市長に送った要望書は、「土砂災害が起こるリスク

を真っ先に掲げている。

斜面の林地を伐採して太陽光パネルを並べることは、「土砂災害リスクを増大させる」

と訴えた。

山の斜面の林を伐採して太陽光パネルを敷くことと土砂災害のリスクの関係については、

関係者の理解が遅れた。例えば、今から5年前の2017年、群馬県みなかみ町で

山の上のゴルフ場跡地へのメガソーラー建設をめぐる住民たちの懸念に対し、

町長は町議会で「大雨の際にも太陽光パネルの間から雨水は地面に落ちて吸い込まれるので

問題ない」という趣旨の答弁をしている。

山の斜面に設置された太陽光発電設備が土砂災害を引き起こすメカニズムについて、

群馬大学の若井明彦教授(地盤工学)に聞いた。

「降った雨は、その一部が林の木の枝葉に捕捉されて日射によりもういちど蒸発して

空に帰る。伐採で裸地になると、雨が100%下に落ち、地面への浸透量が増える」

「保水力のある木々がなくなり、地表に到達する雨水の量が増えるが、

地面を覆うパネル沿いに、いっぺんに雨どいを伝わるように水が落ちる

地表に側溝を設けるなど排水路を十分に整備していないと、どこかが浸食して土砂が出てくる」

 若井教授が説明したのは、まず、パネル設置前に林を伐採した影響。

次に、地表面でパネルを設置すると同時に側溝や排水路などの手当が十分でない場合のリスク。

また教授は「水はけが悪い山の地層の場合、降った雨が地下に浸透する速度がゆっくりなので、

どんどん雨が降ってくると浸透することが間に合わなくなり、表流水が増える」

最近の気候変動の影響で、本来それほど雨の降らなかった地域でも雨が大量に降る可能性

がある」点も考える必要があると話した。

太陽光発電事業者と地域住民の紛争を受け、発電設備の「適正」な建設のほか、

自然や地域社会との「調和」を求める自治体の動きは2014年ころから始まった。

一般財団法人・地方自治研究機構によると、

2022年4月23日時点で太陽光発電設備の設置を規制する条例は、全国で189。

うち都道府県条例は5、市町村条例は184にのぼった。

長野県富士見町は、今年2月に町議会臨時総会で条例の改正案を可決し、

3月18日に施行された改正条例により、町内全域が抑制区域となった。

埼玉県川島町は、2021年1月1日施行の条例と施行規則により、町内全域を抑制区域とした。

川島町を含む埼玉県比企郡は、2017年ころから太陽光発電設備の建設ラッシュに見舞われた。

今年4月、比企郡の小川、越生、滑川、嵐山、鳩山、ときがわの6町では、

太陽光発電設備の設置を規制する条例を施行した。

このうち小川、越生を除く4町も、町全体を抑制区域に指定した。

そもそも、地域住民と事業者間の紛争多発は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度

とそれを支える再エネ特措法が急ごしらえだったこともあり、金儲けができればよい

といういいかげんな太陽光発電事業者が跋扈したため、ともいえる。

こうした事態に、政府は4月、経済産業、環境、国土交通、農水の4省が事務局を務める

「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」を発足させ、

法制度の改善を検討し始めた。  

検討会に提出された資料によると、経済産業省は2016年には再エネ特措法改正(施行は2017年)

を行って自治体条例を含む関係法令順守を認定基準として明確化し、

違反した事業者に対する認定取り消しを可能にした。

これまで条例に違反したことを理由に認定が取り消された例はない。

 また、この法改正では認定事業者に対し、標識と柵塀の設置も義務づけた。

台風や大雨など緊急時に連絡を取れるよう、また、適切な保守点検や維持管理を促すためだった。

「標識が見当たらず、何かあったときに対応してくれるのか不安」という住民からの

通報などにもとづく指導件数は、2021年度中に1052件にのぼり、

うち395件はまだ改善が確認されていない。  

豪雨時に山や丘の斜面の太陽光パネルが崩落する恐れは、2018年7月の西日本豪雨により

一気に現実化した。兵庫県などで山陽新幹線沿いの斜面の太陽光パネルが落下したり、

山の中腹から大量の太陽光パネルが崩落したりした。

 同じような事故は続く。経済産業省によると、

2021年4月~2022年2月までに起きた太陽光発電設備をめぐる事故は全国で計435件

大雨で土砂が流出したり、架台などが壊れたりした件数は計33件だった。  

このため国の検討会では、

「悪質な法令違反があった場合、認定時に決まる電力の買取価格が下がるなどの

仕組みを作れないか」などの意見も委員から出ている。

 太陽光発電設備の設置をめぐる現在の法制度が、多くの問題を含んでいることは明らかだ。

4省庁による検討が、現実に起きている地域での紛争や混乱がなくなるような制度改善や

より抜本的な制度の創設につながるのか。

あるいは、小手先の制度の手直しで終わるのか、今はまだ見えない。

河野 博子 :ジャーナリスト

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