ダシール・ハメットの『ガラスの鍵』(光文社古典新訳文庫)を読みました。
賭博師ネッド・ボーモントが、市政の黒幕であり友人でもあるポール・マドヴィッグを救う為に奔走する…ってな物語。
ハメット、お名前は知っておりましたが、読むのは初めて。
有名な『血の収穫』や『マルタの鷹』、そして本作を含め、長編を5作しか書いていなかった事は知りませんでした。
謎解きよりも、豊潤に描かれた登場人物を味わう小説でした。
主役のボーモントが、かっこいいものの、割と人間臭い時もあったりして、そこも含めていいなァと。
訳者の池田真紀子さんも記されておりましたが、ボーモントが知り合いのジャックから…
「ま、あんたのことだ、何をするにしても、ちゃんとわかってやってるんだろう」
…と云わせてるところが、ボーモントの魅力であります。
響いた台詞は…
「何の苦労もせず勝つことに慣れきっている、だからいざ窮地に陥るようなことがあれば、たちまち理性を失うか、狼のように残忍な人間に豹変するだろう」
…と云うもの。
これまたハメットがボーモントにそう云わしめてる事も、ボーモントと云うキャラクターを深いものにしております。
「俺は何も信じません。
ただ、骨の髄まで賭博師ですからね、いろんなことに意味を見出だそうとしがちではあります」
…豊潤なのに、乾いた味わいなのが素敵です。良ければ是非☆
