我が大師匠である六代目三遊亭圓生の『寄席育ち』(岩波現代文庫)を読みました。
圓生を襲名した直後、神田にあった〈立花亭〉と云う寄席から「月イチで独演会をやってください」と頼まれたらしく…
その頃、第1日曜日は五代目古今亭志ん生が、第3日曜日は四代目柳家小さんが、それぞれ独演会を既にやっており「その間の第2日曜日にやってください」との依頼が来ました。
四代目小さんは名人だし、五代目志ん生はワ~っと人気が沸騰してきた頃なので客を呼べたが、当時の我が大師匠はそれ程ではなかったそうで。
蓋を開けてみると、そこそこお客さんは来てくださったものの、自分の独演会にも拘わらず、そんなにお客さんが笑ってくださらない…
「自分で自信のある演目(もの)をひっさげて演って、しかも自分を好きなお客さまが来てくれて、この程度にしか受けないってことは、自分がいかにまずいかってことを思い知らされました」
…と。名人の大師匠にも、そんな時代があったんですネ?(泣)
四代目小さんと五代目志ん生と云う強敵にはさまれながら、新しいネタを仕込みつつ、毎月三席の独演会を2~3年、続けられたそうな。
満州から帰ってきた後、それまでネタを沢山に仕込んでいた大師匠は、昭和30年を過ぎた辺りで開眼されたと云う…
本書は「焦って変な無理をしないで、地に足をつけて、しっかりと稽古をしていれば、きっといつかは花が咲く」と云う事を、実例を以て教えてくれます。
【東横落語会】で、時間が押していた為、急いで口演した『首提灯』で〈芸術祭賞〉を受賞した事に納得されなかったそうですが、コレはその時の『首提灯』に対してではなく、大師匠の普段の名演に対して与えられた賞なのだと思います。
本書の〈芸談篇〉は、若手の方必読!…え、もうとっくに読んでるって?こらまた失礼致しました!(泣)