アメリカの友人 | 七代目 三遊亭円楽のブログ

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パトリシア・ハイスミスの『アメリカの友人』(河出文庫)を読みました。

『太陽がいっぱい』『贋作』に続き、トム・リプリーシリーズの第3作目。

トムは、会った時にちょっと嫌な対応を受けた男ジョナサンを、ジョナサンのあずかり知らぬところで勝手にヒットマンの候補として紹介するが…ってな物語。

その為にジョナサンはえらい迷惑を被るんですが、巻き込んでおいてからのトムの行動に、おかしくも歓喜しちゃうんですヨ☆

ジョナサンが窮地に立った時、思いもよらぬ処でトムが登場するんですが、其処で読者は必ずや快哉を叫ぶでしょう♪…多分(←「必ずや」ちゃうんかい)。

随所に、トムのサイコパスっぷりで笑っちゃうところがあるんです。

例えば、取っ捕まったマフィアがトムに命乞いをする場面…



「『こっちは片手しか使えないんだ』彼は金切り声を発した。

しゃべり方がナポリの貧民街の住民のようだ、とトムは思った。

ミラノかもしれない。

が、トムには知識がなかった」



…を読んだ時、思わず吹き出しながら、心の中で「知識ないんか~い!」とツッコミを入れちゃいました♪

あと、同じマフィアを薪で殴った場面…



「続いて今度は薪で殴りつけた。

殴りながら、力を手加減した――

マダム・アネットが磨いている床をこれ以上血を流したくないという思いが頭をよぎったのだ」



…にも「オイオイ、こんな時に家政婦に気ィ遣ってどないすんねん!」と、爆笑でした♪

「唾を吐きかけられた」ラストに、パトリシア・ハイスミスの真骨頂を感じました。何といびつなカタルシス。

此の乾いた(冷めた)感じが堪らず、だからこそ彼女の作品は魅力的なんでしょう。

本作を映画化したヴィム・ヴェンダースのパトリシア・ハイスミス評が素晴らしく、それが此方…



「ちょっとした無邪気な嘘から、あるいは心地良い自己欺瞞から、徐々に邪悪な物語が生じてくるのだ。

…こういうことは、誰の身に起こってもおかしくない。

だからこそ、彼女の書く物語はあれほどまでに真実味を帯びるのであり、フィクションであるにもかかわらず、まさに真実が語られているのだ」



…至言です。そう、だからトム・リプリーに…パトリシア作品に惹かれてしまうのでしょう。

今は、トム・リプリーシリーズから一旦離れ、短編集『女嫌いのための小品集』(←タイトル!)を読んでます~☆