『グレッグのダメ日記』を読んだら再読したくなり、J・D・サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)を読みました。
青春小説の金字塔である『ライ麦畑でつかまえて』を村上春樹さんが訳したものですが…
皆さんは、此方を読んだ事がありますか?
タイトルだけ知ってて、何となく抱かれてるイメージがあるとしたら、それがキレイにぶち壊れます。いい意味で。
先ず、主人公であるホールデン・コールフィールドの毒舌っぷりに、はなからしまいまで爆笑させられます。爽快なまでに毒舌。
例えば…
「感じやすいだってさ。僕はぶっとんだね。
モロウのやつの感受性なんて便座並みのものなんだからさ」
「マーティーはまるでダンスホールじゅう自由の女神像をひきずって歩いているみたいな具合なんだ」
「こいつは、相手の手の指を四十本くらいぼきぼきと折ってしまわないような握手じゃないと女々しいと考えるような、よくいるタイプの一人だった」
…なんてんで、会う人会う人みんなをぶったぎるのが堪りませんし、絶大なる共感を生みます。
小供の頃、ホールデンのように感じた事が、きっと皆さん、あったんぢゃないかしら?
「俺は、こんな事思った事もなかったなァ?」と云う方は、此の小説を楽しめないと思います。
そんな意見をホールデンが聞いたら、それこそ「これにはほんと参っちまったよ」「ひっくりかえっちまうじゃないか」と云う事でしょう。
鋭い感受性のホールデンならではの真理も出てくるんですヨ。
俗っぽいナイトクラブ〈アーニーズ〉のアーニーが弾くピアノを評して…
「彼の演奏を聴いているのはたしかに素敵なんだけど、それでもときどき君は、そのろくでもないピアノをひっくり返してやろうかと思ったりもするわけだ。
それはときとして、彼の演奏の中に、大物じゃないかぎり君とは口もきいてくれないような人間が聴きとれるからじゃないかと僕は思うんだよ」
…ってんですが、此の「人間が聴きとれる」って表現素晴らしく、また、こういう事ってどこにでもある事ですよネ?皆さん、聴きとられてもいい人間性を持ちましょう。くわばらくわばら。
…からの、店に入ってアーニーの演奏を聴いた後のお言葉…
「とにかく演奏が終わって、みんなが気も狂わんばかりにわあわあ拍手をすると、アーニー先生はピアノ椅子に座ったままくるりと振り向いて、すごくインチキくさい謙虚な一礼をした。
まるでわたしは最高のピアノ・プレイヤーであると同時に、とびっきり謙虚な人間でもあるんですぜ、みたいな感じでさ。
それはすごく嘘っぽい代物だった—つまりとんでもない俗物なんだよ、こいつは。
でも変な話だけどね、演奏が終わったとき、僕はアーニーのことをいささか気の毒にさえ思ったんだ。
この男には自分がまともな演奏をしているのかいないのか、それさえもうわからなくなっているんだろうってさ」
…凄くないですか?裸の王様の皮肉り方が。
あと、カールとバーで会う前に観た映画について語った(←此の映画のぶったぎり方、痛快!!)…
「インチキくさい映画を見ておいおい泣いているやつなんてさ、十中八、九まで実は根性曲がりのカスなんだ。嘘じゃないぜ」
…と云うお言葉に、激しく頷いてしまいました。嘘じゃないぜ。
舌鋒鋭い傍ら、幼くして亡くなった弟の事について触れる場面が、大変瑞々しく、殊に〈詩が書かれた野球ミット〉の描写は、胸を熱くさせられます。メソメソせずにサラリと書かれているだけに、感動が深い。
行き場を失ったホールデンが、恩師のミスタ・アントリーニを訪ねるんですが、その先生のお言葉が実に良く、どのくらい感銘を受けたかと云うと、10年以上前にその言葉を書き留めて、今でもそれを持ち歩いているくらい…そのお言葉は、是非ご自身で♪
ホールデンの放つ青春の咆哮に、耳を傾けてください☆
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6月7日(月)~13日(日)
各日全席指定… 4,500円
会場…東京芸術劇場・シアターウエスト
※初日のみ、親子三代落語会!
ご予約・お問い合わせ…夢空間
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