
先ずは『海よりもまだ深く』

邦画界きっての安定感を誇る是枝裕和監督の最新作

『歩いても歩いても』と同じく、阿部寛さんに樹木希林さんがメインなので、何だかいい香り

真木よう子さんにリリー・フランキーさん、それに小林聡美さんも出ているから、いやが上にも期待が高まります

さて、如何なもんでしょうか…
いやァ、やっぱいいわァ。
何度も云ってますが、是枝作品は「空気がうまい」。私の云ってる事、観ればきっとわかります。
演技は勿論の事、ロケ地に舞台美術、そしてキャストの衣装に到るまで行き届き、恐ろしくリアル。正に、微に入り細を穿った演出。
そんな中、主役の阿部寛さんの〈小さい男っぷり〉が、とてつもなく素晴らしい

『アバウト・シュミット』のジャック・ニコルソン、並びに『サイドウェイ』のポール・ジアマッティに比肩する程の小さな男っぷりに、ただただ脱帽
(←いずれもアレクサンダー・ペイン作品
必見
)真木よう子さんは健気な女親っぷりを披露しててキュンキュンするし、リリー・フランキーさんは矢張り凄く狂気的だし、小林聡美さんはナチュラルを超えたナチュラルで魅了するし、キャストの方々が本当にお見事

…そして圧巻は、樹木希林さん。
『あん』の時が特にそうでしたけど、登場しただけで観客を物語に引き込むのですから…
どの役者さんも…て云うか、パフォーマーはみんなそうなんですが、樹木希林さんを見ていると、演技を超えた〈自身の部分〉と云うものの大切さを、いつも痛感させられます。
余談ですけど、樹木希林さんの世の中を達観した様は、タモリさんと通ずるところがありますね。
劇中で、響いた台詞は…
「そんなに簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いなんだよ」
「誰かの過去になる勇気を持つ事が、大人の男ってもんだよ」
あと「女(の恋)は、油絵
上に塗るだけで消えてはいないから、上書きとは違う」ってのも納得
今、結婚して子供が出来た身だから、余計に響く気がします。10年前だったら「いい映画だね」なんてな感じで、知った風な思いを抱いていたと思います。
人としての大事な部分を柔らかく教えてくれたりする作品です
是非観てください

続いて『団地』

〈阪本順治監督&藤山直美主演〉と云う『顔』コンビの作品

さて、如何なもんでしょうか…
いいなァ、此のゆる~い感じ

藤山直美さんをはじめ、岸部一徳さん・石橋蓮司さん・大楠道代さんと、一筋縄ではいかない方々の怪演を観てるだけで幸せを感じたのは、私だけぢゃないでしょう

藤山さんと岸部さんの丁々発止が、とても心地好い
これぞ達人
平日(月曜日)の昼間に2本立てを観るのにも、穏やかな幸せを感じるなァ…噺家で良かった


(←「もっと良かったと感じる事があるだろ
」のツッコミ、有難うございます
)