山友会クリニックには、ほかの医療機関とは少し違った特徴があります。

 

それは、保険診療を行っていないため、本名や正確な年齢を伝えることに抵抗がある方でも、匿名や仮名、おおよその年齢で受診できるという点です。

 

来所される方の中には、これまでに人に言えないような経験や、数多くの困難を抱えてこられた方がいます。そうした方々にとって、「名前を名乗る」「自分のことを話す」というのは、とても大きなハードルになるのです。

 

実際、山友会クリニックを受診することが、誰かと話す唯一の機会となっている方も少なくありません。路上で暮らす方やご高齢の方の中には、携帯電話もなく、社会とのつながりをほとんど持っていない方も多くいらっしゃいます。

 

だからこそ、私たちは「話したくない」という思いを無理にこじ開けることなく、ゆっくりと、少しずつ信頼関係を築いていくことを大切にしています。

 

あるボランティアの医師は、初診の方や初めてお会いする方にこう尋ねます。

 

「ご出身はどちらですか?」

 

お金がなくても、家族と離れていても、「生まれ育った場所」は誰にでもあります。

 

現在のことを話すのは難しくても、出身地での思い出や景色を語ってくださる方は多いのです。

学会や出張で全国を飛び回る先生は、各地のことに詳しく、どの地域の方ともすぐに心を通わせてしまいます。

 

心を開くきっかけは、医学の知識や治療方針といった専門的な話だけではありません。

 

「どこで生まれたんですか?」

 

その一言が、人と人との心の距離をぐっと縮めることもあるのです。

 

どんな背景の方にも、敬意をもって、興味をもって関わる。

 

それは私たちスタッフにとっても、大切にし続けなければならない姿勢です。

これからも山友会では、“対話”を大切にしながら、関係を「細く、長く」続けていくために、一人ひとりと丁寧に向き合っていきたいと思います。

 

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