12月1日より実施している「2018年 冬の募金キャンペーン」。

 

今回の募金のテーマは、

 

『わかりあい、認めあう。その先に“あなた”の望む未来がある。』

 

です。

 

山友会は、ホームレス状態といういわば最も社会的に孤立した状態にある人々に、様々な活動を通して、つながりをつくり、コミュニティを築いています。

そして、ホームレス状態という同じ経験があるとはいえ、十人十色の人生を歩み、異なる考えや価値観を持った人々が日々集っています。そこでは、ときには衝突することがあっても、喜怒哀楽をともに分かち合う時間を丁寧に、あきらめずに積み重ね続けることで、それぞれの違いを受け入れ、わかりあい、互いに大切な存在へと変化していく物語が日々紡がれています。

 

 

今回のテーマには、活動を通して育んできた、こうした「寛容さ」や「他者への愛情」に満ちた文化が、違いや過ちを避け、否定する心にむしばまれつつある現代社会にとっての希望であってほしいという願いを込めています。

 

2018年冬の募金キャンペーンの特別記事として、山友会らしい「わかりあい、認めあう」文化や物語をスタッフ・ボランティア、おじさん達に語ってもらいます。

第一回は事務局スタッフの高木です。山友会と関わることになったきっかけや、山友会の中にいて感じたことや気持ちの変化などについて聞いてみました。

 

 

高木 真奈美(たかぎ まなみ) 

福島県出身、二児の母。NPO法人山友会の事務局で2014年から非常勤スタッフとして勤務。

 

”ズラーッと椅子が並べられて、平日の昼間からおじさん達が座ってお茶を飲んでいて、見たことのない風景でした。”

 

●まず、高木さんの仕事内容を教えてください。

 

事務局で、おもに会計や法人管理などの事務を担当しています。

それと、山友会の窓口として、寄付者の皆様やボランティアの方からのお問い合わせへの対応や、連絡事項があるときに直接やりとりをさせていただいています。

ほかにも、消耗品や炊き出しの備品の発注、故障品の修理手配などの総務、職員の労務などなど、山友会の活動の影で何でも屋として働いています。

 

 

●山友会との出会いについて教えてください。

 

福島県の高校を出てから、東京の学校に進んで、その後、東京で結婚しました。

子育てをしながらいくつかパートの仕事を経験してきたんですけど、どこも自転車で通えるような近所の職場でした。

子どもが大きくなって、ちょっとだけ遠出してみたくなって、電車で通う職場を探していたんです。

 

そんなとき、ハローワークで山友会の求人を見つけました。

条件がぴったりで、これだ!と思って。

自宅の最寄り駅の沿線上にあり、時間帯も都合がよかったし、事務の仕事というのも希望通りでした。

 

業務内容の欄には「データ入力・事務」とありました。

実際に仕事が始まると、全然それだけではなかったんですけどね。

約束がちがう(笑)

 

 

●いろいろと、頼られてしまったんですね(笑) 最初に山友会へ来たときはどんな印象でしたか?

 

山友会の前にズラーッと椅子が並べられて、平日の昼間からおじさん達が座ってお茶を飲んでいて、見たことのない光景でした。

 

「なんだ、こりゃ?」というか、不思議な感じでしたね。

 

 

 

“福島で生まれ育った私は、山友会に来るまで山谷の歴史はおろか、地名すら知りませんでした”

 

●ホームレス・生活困窮者支援団体に対して、何かイメージを持っていましたか?

 

実はその頃、私は、NPOが何なのか、福祉の仕事ってどんなものなのか、まったくわかりませんでした。

 

昔、町のフードコートでアルバイトしていたんですけど、そこへ身なりの乱れた人が来て、その人に求められて食べ物を差し上げたことがありましたけど、ホームレスの方の記憶といったらそれだけです。

他には、新宿には路上生活をしている方が多くいるということを知っていましたけど、福島で生まれ育った私は、山友会に来るまで山谷の歴史はおろか、地名すら知りませんでした。

 

だから、知人が私の再就職先を知って、「危ないんじゃない?」とか「小さい頃に山谷に行っちゃいけないと教わったよ」と言うので驚きました。

私は今の山谷しか知らないし、山友会にいるおじさん達はみんな親切で穏やかだったから。

その後、山谷の歴史や背景を知ることになるのですけど。

 

 

●偏見や先入観がなかったから、スッと入れたのかもしれませんね。

 

事務局にいると、相談室やクリニックのように当事者の方とやりとりする機会は少ないんですが、一緒に食事をしたり、世間話をしたり、ちょっとした相談にのったりといった交流があります。

 

勤め始めたころは、おじさんがごみや煙草をポイ捨てするのに対して、“ここは山谷だから仕方がないんだ”という空気があることにどうも納得がいきませんでした。

社会のルールがあるのに、と思ったりして。

 

でも、新参者の私がおじさんに注意することで、山友会へ来る足が遠のいたり、山友会の活動の妨げになっちゃいけないなって思って、それはできませんでした。

それが、数年おじさん達とともに過ごし、さまざまなことを伺ったりする間に、私とおじさん達の距離が縮まったようで、そんな気遣いは無用になっていきました。

今では、知っているおじさんがポイ捨てしてたら「だめよー!」って言えるようになりました(笑)。

少しずつですけど、関係性ができてきたのかな、と感じています。

 

 

“困った人の困った言動に対して、普通だったら、怒ったり失望したりするのに、山友会は、その人と一緒に答えを考えながらも、悲観しないで、笑い話にしてしまう。そんな懐の深さが本当に山友会らしいと感じます”

 

●今回の募金キャンペーンには、「寛容」や「受け入れる」、「許しあう」「認めあう」といったテーマが込められていますが、山友会にそういった寛容さ等を感じますか?

 

山谷には、一癖も二癖もある人がたくさんいます。

お酒やお金の問題を抱えていたりする人もいれば、時には腹の立つようなことを言う人もあります。

 

そんな、困った人の困った言動に対して、普通だったら、怒ったり失望したりするのに、山友会は、その人と一緒に答えを考えながらも、悲観しないで、「しょうがねえなあ」とか「どうしょうもねえなあ」とか「おもしれえなあ」と笑い話にしてしまう。

 

そんな度量の大きさ、懐の深さが本当に山友会らしいと感じます。

 

それと、山友会には、ボランティアに参加してくださるおじさん達がたくさんいらっしゃいますけど、入ったばかりの頃は、ボランティアさんとそうでないおじさんの違いがわからなくて迷っていたら、ジャンさん(※山友会の代表)が「わからなくて大丈夫、それでいいんだよ」と言ってくれて。

 

その後からは、「ボランティアの」や「おじさんの」と分けずにお名前で呼ぶようになりました。

 

 

●寛容、受け入れるといったテーマにおいて、かつてと今の自分で変化したと感じるところはありますか?

 

私は小さいときからあまり自分に自信がなくて。今もそうですけど。

だから、自分のようになってほしくないと、ついつい子ども達に自分の価値観を押しつけて、子どもの考えを否定したり、頭ごなしに叱ってしまったりといったことがたくさんあったような気がするんです。

 

山友会に来てから、たくさんのおじさん達と出会い、これまで知らなかったたくさんのことを見聞きしました。

実にさまざまな理由で社会に受け入れられず、排除されて、山谷にいらっしゃるという方も少なくないことを知りました。

 

私自身や子ども達が無事に育ち、巣立ち、健やかに生きるということは、決して当たり前ではないことにも気づかされました。

 

だから、人が生きていく上で自分の個性や考えをしっかりと受け入れてもらったり、認めてもらったりする経験って、何よりも大切なものなんじゃないかなって考えるようになりました。

 

“お互いに認めあうことを幸せと感じられる人が増えていけば、私たちの未来にとって、とても希望があることなんじゃないかなって思うんです。”

 

●「受け入れ」、「許しあい」、「認めあう」ことで、社会はどんなふうに変わっていくでしょうか?

 

絶対にだめだと思うことを許してはいけないと思うんですけどね。

 

でも、その人や自分が持っているものを、おもしろいと捉えて子育てをしたり、人と付き合ったりすることで、お互いに認めあうことを幸せと感じられる人が増えていけば、私たちの未来にとって、とても希望があることなんじゃないかなって思うんです。

 

 

●このブログや、冬の募金キャンペーンの記事を読んでくださる方へメッセージをお願いします。

 

ご覧いただきありがとうございます。

 

事務のパート先という形で山友会と偶然出会い、そこから山谷という街を知り、今は一緒に働く同僚、忙しい中来所してくださるボランティアの方々、山友会に集うおじさんたち、そして寄付者のみなさまと出会い、この年にして、たくさんの経験をさせていただきました。

その中で、山谷が抱える問題は、私の友人や家族、私自身も、何かをきっかけに同じように抱える可能性がある身近な問題なのだと感じています。

 

ぜひ山谷という街から、何かを感じていただけたら嬉しいです。

 

 

 

【2018年 冬の募金へのご協力のお願い】

殺伐とした風潮を際立たせる冬の寒さ。

ホームレス状態といういわば最も社会的に孤立した状態にある人々に、つながりをつくり、コミュニティを築いていく私たちの取り組みが、ホームレス状態にある方々だけでなく、私たちの心にやさしさと希望を灯すことができるように。皆さまのご支援をお願いいたします。

(募金受付期間:~2019年1月31日)

 

 

 

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