神様の悪戯 | なんやかんやあって最終的にYouTuberになった人のブログ

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ここではその情報やなんか適当にぺぺーいと記事書きますよ

 別れ話は何度経験しても慣れるものではない。こんなもに慣れる人間は精神的にどこか壊れているはずだし、別れたくて別れる人はいない。
 こうして目の前に座る彼も同じ想いでいるに違いない。

「いらっしゃい」

 二人で何度も訪れた行き慣れた喫茶店。ヒゲのマスターはいつもと変わらない笑顔で声をかけながら水を持ってきてくれた。

 ガチャン!!

 お盆から持ってきた水のコップが落ちた時、フラッシュバックのように思い出がこぼれ落ちてきた。
 彼を見ると笑顔でそこに座っていた。

(あぁ…覚えていたんだ)

 彼との出会いは町の小さなファミリーレストランだった。
 当時私がバイトをしていた頃、席についた彼に水持っていき、今のようにお盆からコップを落としてしまった。思い切りぶちまけてしまったコップの水は事もあろうに彼のズボンを濡らしていた。

「申し訳ございません!」

 慌てた私は手に持っていた布巾で彼の濡れたズボンを一心不乱に拭き続けた。

「だ、大丈夫だから!」

 その声に冷静になり拭いていた先を眺めると、私の手は彼の股間付近にあった。

「ご、ごめんなさい…」

 後から聞いた話によると、私は顔を真っ赤にし足早に厨房へ帰っていったそうだ。それが彼との出会い。

「僕たちは、何か忘れていたんだね」

「…そうだね」

 マスターの落としたコップが私達をあの頃の気持ちに戻してくれたのだろうか。

「さようなら」

「さようなら」

 何もなければ、悲壮感が詰まった別れの挨拶だったかもしれない。

 神様の小さな悪戯はあの頃の気持ちを思い出させ、私達を笑顔で送り出してくれた。