3. 放射線被ぱくについての情報

(1)サポーターの認識不足は本人の不勉強か、NHKの指導不足か?

番組の中で作家の室井佑月さんをサポーターとして一般市民の代表の様な立場で登場させていますが、鎌田キャップや西脇デレクターとの対談の中で、彼女は「正しく知って正しく怖がるためには、情報が必要、情報が上がってこないのが問題です」と言っています。しかし、放射線被ぱくに関する情報は沢山のインターネットサイトや専門家が執筆した本も沢山出ています。例えば、インターネットサイトでは消費者庁の「食品と放射線に関するQ&A」、日本保健物理学会の「暮らしの放射線Q&A」、放射線総合医学研究所の「放射線被ぱくに関するQ&A」、放射線影響研究所の「福島原発関連」などに専門的な情報、一般市民にも分かり易い情報が膨大にあります。その中でチェルノブイリ原発事故のような放射線被ばくによる影響も述べられています。サポーターとしては少なくともそれらの事を勉強するべきであり、NHKもそう指導すべきです。不勉強か、もしくは初めから虚構の結論ありきの番組制作であったと言えます。

(2)NHK番組制作者はまず正しい知識の勉強を

細野環境大臣兼原発事故担当大臣は自ら「低線量被ぱくのリスク管理に関するワーキンググループ」を主宰して国内外の多くの専門家の見解、提言を公開ヒヤリングし、また7回の会議は全て動画で公開しています。更に1222日にその報告書が大臣に提出され、それも公開されています。NHKにおかれてもこの様な国民に大きな影響を及ぼす重要な番組を企画される場合は、まずは正しい知識を勉強されることが必須です。

(3)客観的な事実と正負両面の公平な報道をすぺし

この放送番組の他にもNHKの放射線に対する最近の報道は、私達から見ると非常に偏見に満ちたものが多く国民の放射線恐怖症をいたずらに煽っていると強く感じます。例えば本年15PM7:30からの「親子でナットク・イチからQ!」という番組では放射線を悪魔に見立てた生々しい道具立てで、人間の体に当たると癌になると説明し、母親と子供の恐怖を煽っていました。我々高等生物は、自然放射能下で進化してきたために、生来放射線被ばくによる遺伝子の損傷における修復や修復失敗した細胞の自殺(アポトーシス)の能力を備えていて、直ちに癌にはなりません。放射線に関しては負の面と合わせて、日常生活における自然放射線や医療などの放射線被ばく線量、日本人の死因の30%はがんで 4

あり、例えば、1000人の人が100mSvの被曝を受けた場合、癌で死亡する人が300人から305人となる程度であること、放射線の性質を利用した癌の診断、治療をはじめシリコン半導体製造、自動車のタイヤや電線ケーブルの強化、造船工場や橋・ビルの非破壊検査、医療器具の滅菌と消毒、農業における品種改良や害虫の駆除、放射光や中性子等による最新科学研究など人のために役立っているなどなどの客観的な事実や正の面も説明することが公平公正な報道であります。

4. 要望

(1)指摘した事項につき厳正な調査をお願いしたい

まず、今回のNHK番組にっいて上記にて指摘した事項を、貴社において厳密なる調査を行うことを要望いたします。

(2)事実誤認等が判明した際には、公式に改めていただきたい

そして、事実誤認の報道がなされたことが判明したら、直ちに過ちを改めるのが正しい報道のあり方です。更に、報道で意図した主張内容の殆どが事実誤認もしくは根拠薄弱であることが明らかになったら、それらの福島県民ならびに全国民への悪影響に鑑みて、番組自体の撤回をするのも国民の受信料で経営をしている公共放送であるNHKの責務であると思います。

(3)慎重な番組制作と公正公平な報道に努めていただきたい

さらに、このような一般視聴者に放射線の恐怖のみを煽るような"風評加害者"的報道は今後止めるよう強く要望します。

5. 最後に

NHKの上記番組の放送内容は放射線の健康影響は被ばく線量に依存するという科学的常識を無視して、統計的根拠も示さずに癌や難病が増加した原因を極めて低線量の放射線被ばくの可能性に起因すると決めつけた非論理的、非科学的な事実誤認の報道であると思われます。

現在福島県の周辺市町村の除染についてはようやく環境省主体の体制が動き出しつつあります。そして、いよいよ今年から本格的な除染を行おうとしているところです。

この様な時期に今回のNHK報道は、わが国における汚染地域の放射線防護の基盤を根底から覆す倶れのあるものであり,そのことは,環境修復や避難民帰還のハードルを著しく高めることになり,既に伊達市や相馬町などで除染を行っている地元の方々、指導しているアドバイザーの方々の苦労を無にしてしまう恐れがあります。結果として年間放射線量が20mSv未満の区域に今なお住み続けておられたり、あるいは除染が済んで20mSv未満の避難指示解除区域になったら避難先から帰ろうと考えておられる福島県の住民自身を一層不安に陥れ、復帰を断念させることを大変危倶します。また、放射線への恐怖が、医療現場での放射線診断を拒否し手遅れになるという可能性もあります。 5

以上、私どもの考えを率直に申し述べました。NHKは民放には真似のできないような良質な番組が多く、それが国民の信頼の基となっています。それ故に今回の様な多角的な視点や定量的な説明を抜きにし、また事実を無視した番組を放映すると視聴者を欺き、信頼を失うことになりますので、NHK内部でも危機意識を持っていただきたいと願うものであります。

私どもの考えを貴殿ほかNHK関係者各位にご理解いただき、冒頭でお願いしましたように、私どもの見解や疑問、要望に対し、1月末日までに貴殿側から誠意あるご回答をいただきたく、よろしくお願いします。

なお、この抗議文は我々3団体のホームページに掲載し、広く一般に開示しますのでご了承願います。

敬具

2012112