「ヘイトスピーチ」という英語(カタカナ語)を使わず「国籍や人種に基づく不当な差別発言」へ | 産経新聞を応援する会

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 【国家を哲学する 施光恒の一筆両断】

「ヘイトスピーチ」

■レッテル貼りの恐れは

 法務省は今月から、民族差別的な言動「ヘイトスピーチ」を防止する啓発活動を強化しました。「ヘイトスピーチ、許さない」をスローガンとするポスター掲示やリーフレットの配布、インターネット広告の掲載などを進めるそうです。これまで公的機関のリーフレットなどには使われていなかった「ヘイトスピーチ」という言葉を前面に押し出すということです。

 私は、法務省が「ヘイトスピーチ」という言葉を積極的に用いることは望ましくないと思います。「ヘイトスピーチ」という英語(カタカナ語)を使わず、「国籍や人種に基づく不当な差別発言」、あるいは「憎しみを顕(あら)わにする攻撃的発言」という具合に日本語で正確に表現したほうがよいと考えるのです。

 「不当な差別発言」という言葉を用いた場合、「何が不当なのか」「在日朝鮮人・韓国人と日本人との間での不当ではない公正な関係性を作るにはどうすればよいのか」などの問いが自然と浮かんできます。また、「憎しみを顕わにする攻撃的発言」と称した場合、「憎しみはなぜ生じているのか」「解決や融和をもたらすためにはどうすればよいのか」という方向に考えが向くはずです。

 「ヘイトスピーチ」という英語をそのまま用いてしまえば、よほど英語の感覚が身に着いているごく少数の日本人以外、このような思考が働きません。結果、この言葉が独り歩きしてしまい、単なるレッテル貼り以上に議論が展開しない恐れが高まるのではないでしょうか。

 また一部報道によれば、法務省の啓発活動は、具体的なヘイトスピーチの内容は例示しない意向だとしつつも、「ジャパニーズ・オンリー」(「日本人のみ」)などの掲示を行うことはよくないことだと知らせる内容になるとのことです。私は、法務省が「ジャパニーズ・オンリー」を差別の事例として挙げることに関しても、この言葉が独り歩きしてしまわないだろうかと懸念を覚えます。確かに、賃貸住宅などの入居の場面で貸主が「日本人のみ」などの掲示を掲げたり、条件をつけたりするのはよほどの合理的理由がない限り慎むべきでしょう。しかし国籍の有無を正当な基準とすべき問題も多々あります。

 例えば、外国人地方参政権の問題です。私自身、国政レベルでも地方レベルでも、参政権は国民固有の権利であり、外国人地方参政権は認めるべきではないと考えます。あるいは外国人に対する生活保護をどの程度認めるべきなのかということも、最近しばしば議論になります。地方参政権や生活保護受給権を日本国民に限定すべきだという立場自体は、不当でも何でもないはずですが、法務省が「ジャパニーズ・オンリー」はヘイトスピーチの事例だと掲げてしまえば、印象が変わってきます。地方参政権などを日本人に限るべきだという主張を展開する側に、いわれなき心理的ブレーキをかける効果を持ちかねません。

 人権や表現の自由の問題は、非常に重要なので、事態を正確かつ丁寧に見つめながら話を進めなければなりません。商品宣伝のキャッチフレーズとは違うのです。「ヘイトスピーチ」といった新奇な言葉ではなく、日常感覚と結びついたわかりやすい言葉で議論を進め、解決を模索していくべきです。