『たけしのテレビタックル』での子供手当て問題

12月20日の『たけしのテレビタックル3時間スペシャル怒りの直談判』を見た。

子供手当てが槍玉にあがっていた。子供手当てが子供のために使われていない。サラリーマンのインタビューでは、サラリーマンが子供手当てのおかげで小遣いが増えたといって喜んでいた。スタジオ参加の50人の一般人からも、子供手当てのために配偶者控除を廃止するのはおかしい、という意見が多かった。

パネラーの何とかいう若者が、「配偶者にお金をあげるのがいいのか、子供にお金を上げるがいいのか、みんなどっちなんですかね。」と言った。すると、「子供です。」とどこかから返事が返ってきた。「だったら、それでいいんじゃないですかね。」と、それでこの話はおしまい。あっという間に、民主党の子供手当てが正当化されてしまった。

私は、「えーっ?」という感じだった。子供手当ての問題が「配偶者と子供のどっちにお金をあげたほうがいいか」という問題にすり返られてしまった。あきれた。一般論としての配偶者と子供のどっちが大事かという話ではない。サンタクロースがどこからかお金を持ってきてプレゼントするのなら、一番先に子供にあげてもいいのだが、財源がなく、それを困窮家庭への増税でまかなうというから悪いと言っていたのではなかったか。

子供手当ての問題は2つあったはずだ。一つは、増税される側の生活困窮度の問題、もう一つは経済効果の問題だ。子供手当てはどちらにとっても悪い効果しかないから批判されているのである。この2つの問題を理解するカギはどちらも限界消費性向にある。

経済効果の問題

配偶者控除を廃止すると増税になる。これまで一般家庭の消費性向は0.7と言われて来たが、今年の不景気ぶりはこれまでにないひどいものである。年収300万円くらいの家庭ではとても貯蓄する余裕などない。今年は消費性向を0.8くらいに修正する必要がある。限界消費性向も消費性向の近似値なので0.8、初項を0.8、公比を0.8として乗数効果を計算すると、乗数効果は4.0である。だから、増税によりここからお金を回収すると、マイナス4.0の乗数効果が生じる。これに対して、子供手当てをもらった家庭では、今年の夏くらいの世論調査で、半数の家庭が貯蓄に回すと言っていた。けだし実際だろう。すると初項の限界消費性向は0.5、以後の限界消費性向を0.8とすると、発生する乗数効果は2.5である。-4.0+2.5=-1.5だから、配偶者控除を廃止して子供手当てに回すと、回した金額の1.5倍のGDP押し下げ効果がある。回した額を1兆円とすると、GDPが1.5兆円下がるということである。子供手当ては経済にダメージを与えるということである。

生活困窮度の問題

配偶者控除の廃止により増税になった家庭の限界消費性向が0.8で、子供手当てをもらう家庭の限界消費性向が0.5ということは、前者のほうが生活が困窮しているということである。困窮しているほうの家庭をますます困窮させて良いわけがない。困窮家庭からお金を取って、余裕のある家庭に回すなどは、話がアベコベである。今後もこのような「配偶者と子供のどっちにお金をあげたほうがいいか」といった、幼稚な弱者擁護のすり替えが民主党支持者から多く出てくるだろうが、裕福な家庭の子供は困窮家庭より弱者とは言えないということを頭に入れておこう。

また、配偶者控除については、配偶者控除が女性の自立を阻害するという意見があった。しかし、だから、配偶者控除を廃止して増税するというのは暴論だろう、どのような理由であろうと、現在の経済状況下で困窮家庭に対する増税は良くないのである。配偶者控除が女性の自立を阻害するなら、配偶者の存在を理由としない基礎控除を配偶者控除の分だけ上乗せすれば、増税にならないで、しかも、女性の自立をうながすことが出来るはずだ。どんな理屈を付けようとも、民主党の言い分は、自らの間違ったマニュフェストに基づく、子供手当ての財源確保のための困窮家庭への増税の正当化にすぎないのであって、こじつけであるのは明白だ。民主党のきれいごとに騙されないようにしよう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(文責・零細応援)

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