右肩下がりが止まらない百貨店業界。図体がデカくて環境の激変に対応できず絶滅した恐竜に例えられます。復調がみられるのは、大手百貨店の都心一等地に立地する償却を終えた少数の店舗に限られ、地方百貨店に至っては惨憺たる有様。ごくわずかな優良店を除き、まさに消滅の危機。

 

いよいよ暮れも押し詰まった昨年末、地方百貨店3社の大事変が報道されました。

 

1.大沼(山形県山形市)ファンド支援で再建へ

2.天満屋(岡山県岡山市)役員から創業家一族が総退陣

3.ヤマトヤシキ(兵庫県姫路市)姫路店閉店、建替えに

 

初代大沼八右衛門が山形市七日町で1700(元禄一三)年に創業した荒物屋をルーツとする「大沼」は、1611(慶長一六)年創業の松坂屋、1673(延宝元)年創業の三越に次ぐ歴史がある。

 

 

本格的な百貨店としては、1956(昭和三一)年11月20日に現在の店舗開業したのが始まりとされる。代々当主は八右衛門を襲名。現在の社長はJR東日本出身で、大沼八右衛門特別顧問の娘婿。

 

 

キャッチフレーズ「大沼は楽しいお買い物の散歩道」

 

現在、関連会社は建装関連の大沼クリエーションサービス。過去にはオーヌマホテルを経営していたが、業績不振のため外部に売却。その後も業績が改善しなかったため2008(平成二〇)年3月30日営業を終了している。

 

大沼山形本店は、1960年代後半から70年代前半にかけて、次々と進出してきたライバル大型店との競争では善戦。1972(昭和四七)年3月には、急激に進んだモータリゼーションに対応した大型パーキングを開設。

 

しかし、近隣に立地していた山形県庁が、1973(昭和四八)年に移転してしまっため来街者が減少。

 

 

90年代後半以降、郊外に大型ショッピングセンターの開業が相次ぎ、中心市街地に立地する商店街の地盤沈下が急速に進み業績が低迷。

 

国鉄の新宿貨物駅跡を再開発し、1996(平成八)年10月4日にタカシマヤタイムズスクエアが開業した時に伊勢丹新宿本店長を務め、新宿高島屋を返り討ちにした実績を持つS氏を取締役相談役に迎え再建を図り、一時は業績が回復。

 

しかしながら、相次ぐ郊外への量販店進出やインターネット通販の普及により、2017年2月期決算まで4期連続で経常赤字を計上。

 

ピーク時の2000年に山形本店と米沢店合わせて200億円近くあった売上が、直近では80億円台にまで減少。

 

 

今年1月末にJR山形駅前の十字屋山形店が店舗を閉鎖を予定しており、県内唯一となってしまう百貨店灯を消したくないとの思いから、姫路市のヤマトヤシキや盛岡市の旧中三盛岡店(現ななっく)などの事業再生を手がけるマイルストーンターンアラウンドマネジメント(MTM・東京都千代田区)から出資を含む経営支援を受けることを決断。先月25日に覚書を交わしている。

 

 

今後、人員の削減は実施せずに山形本店、米沢店の営業を継続し、大規模な店舗改装を実施、再生を目指すとしている。

 

この報道の3日後、昨年12月29日にMTM傘下で経営再建中のヤマトヤシキの姫路店が閉鎖されると報道された。

 

◇データー

・2015年度

大沼 本店

山形市七日町1丁目2番30号

TEL023-622-7111

通常営業時間=10時~18時30分

売場=本館B1~7F

売場面積=11,952平方メートル

年商=6,283百万円(2015年度)

172/210(2015年度百貨店店舗別売上ランキング)

ホームページ やまがた大沼デパート【山形本店】

 

◆参考文献

『流通・消費2015勝者の法則 日経MJトレンド情報源』 日経MJ(流通新聞)編 日本経済新聞出版社 発行