日曜日のBS松竹東急で流れている「江戸川乱歩の美女シリーズ」。

今回は、「赤いさそりの美女」。

結論から言うと、普通に見ていたら、どんな展開になっているのか分からない。

ネット上の解説サイトを確認しつつ見ても理解できない。
つまり、ドラマ作りの「文法」が、45年前だと今とではずいぶん違うことが理解できた。
今のドラマだったら、もう少し何回も状況説明をしてくれている。
たぶん、あまりチャンネルカチャカチャを想定していない時代の作りだったのだと思う。

さて、すべてを見終わった後、何遍か解説サイトを読んで、やっとストーリーが入ってきた。

まあ、こんな感じ。
三組の恋人同士がいて、うち二人の男女は兄妹でそれぞれ恋人あり。
映画の主演女優のコンテストがあり、妹はコンテストに出るが、出来レースで別の人が優勝し、妹は準優勝。
その女性と恋人関係にある男性がまず殺される。
そして、妹とその恋人の男性も殺される。
それから、もう一人も殺される。

その他、さそり、幼虫、火事による焼死、バラバラ死体、略取誘拐等々、ありとあらゆる犯罪が繰り広げられる。
おまけに、女性のヌードが二回も出てくるのである。
こちらもエログロナンセンス全般である。

さて、ネタ晴らし等には触れず、感じたこと。

どうも、江戸川乱歩先生、あるいは、明治生まれの戦前ぐらしの人たちは、生死を問わず、身体に対する感覚が、現在とかなり異なる意識があったように感じる。

身体の特別な状況や状態に対し、今とはずいぶん違う驚き方や恐れ方をしているのである。
この対応も事件の発端になるのだが、とにかく今の感覚では信じられない行動をとっている。
これには、驚かされた。

多分、この対応が戦前の感覚であり、今の基本的人権の感覚が浸透しつつある時代には、少し奇異である。
この状況に、戦前の旧民法が覆いかぶさっているとしたら、本当に鬱陶しくも嫌な時代だったと思えるのである。

まあ、多分このドラマで描かれている世界は、その時代を青年の頃、肌感覚で知ってきた人たちが40年後に再生したもの。

それからまた40年以上経って見直している訳だから、訳が分からなくても、仕方がないのである。

特に有名な俳優さんは、出てこない。
荒井注の浪越警部が、トンチンカンな刑事さんをこれまたすんなり何の問題もなくストレートに演じてくれている。
ある意味、稀有な俳優さんだったのではなかろうか。

また、来週も期待である。