「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」中国人民解放軍「北部戦区」(旧「瀋陽軍区」)の実態とは | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)5月20日(土曜日)
       通算第5299号 <前日発行>
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 中国人民解放軍「北部戦区」(旧「瀋陽軍区」)の実態とは
  たしかに北朝鮮有事には備えているが、増派報道は疑わしい
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 旧満州に山東省を加えた地域をカバーする中国軍は、旧瀋陽軍管区のことであり、習近平の「軍事再編」によって、いまは「北部戦区」と呼ばれる新区に編入された。

 

 

この北部戦区は内モンゴル、黒竜江省、吉林省、遼寧省に山東省(旧「済南軍管区」)が加えられた。

 四月末に、北朝鮮国境付近で人民解放軍は実弾演習を含む大規模な軍事演習を展開し、多くのチャイナ・ウォッチャーは、北朝鮮有事に備え、戦力を増強させたという情報を信用した。
ところが、中国軍は、この噂を否定した。

 従来から中国は北朝鮮を緩衝地帯と位置づけてきた。
北朝鮮の体制崩壊を防ぎ、金正恩が、あまり中国に非協力的かつ傲慢に振る舞おうとも、北朝鮮の崩壊は、地域の安定を損ない、ましてや難民の流入を防ぎたいゆえに、国際社会の制裁圧力を呑むようなふりをして、実態に中国は北朝鮮の延命に手を貸してきた。

 

 

 石炭輸入は中断しているものの、原油ならびに食料供給は続行している。制裁強化は口だけである。

 別な視点に立脚すれば、旧瀋陽軍区の軍人は、失脚した薄煕来と周永康の人脈に繋がり、習近平には面従腹背、ましてや北朝鮮との取引はかれらの利権である。

 

 

中央政府の指令は行き届いていないと考えるのが適切であろう。

 

 

 トランプ政権は、その中国の不誠実を認識しているから、制裁の強化手段として、在米の中国系銀行で不正輸出に手を貸した妖しげな貿易会社に融資し、マネーロンダリングに手を貸したところを制裁するとした。

 中国軍の配置は、国際環境と地域防衛を目的としており、地図を睨めば明らかになるように、東部戦区は主として台湾向け、南部戦区は南シナ海、西部戦区がインドへの抑止とイスラム国家群のテロ対策であり、中央戦区は首都・北京の防衛。

 

 

したがって北部戦区の役割は、北朝鮮ばかりか、ロシア国境、モンゴル国境への抑止である。

 こうみると、北部戦区に配置されている中国人民解放軍は内蒙古駐屯部隊がモンゴル国境、チチハルから満州里にかけてと、黒竜江省の東側はスイフェンガを基軸にロシア国境である。吉林省の東側も上に重なる。


 ▼歴史の教訓は山海関争奪戦の再来防止にある。。。。。。。

 「北部戦区」には、もう一つ重大な任務がある。それは山海関防衛である。

 

 

 遼寧省の錦州が拠点の部隊は渤海湾、黄海を睨みつつ、陸上では山海関防衛が主任務となる。

 

 

 1644年に清は山海関を突破して北京に入城し、明王朝は崩壊した。歴史的体質として、中国の軍隊は、この山海関防衛を重視する。
 拠点は錦州である。
戦前は、この町にも日本人が多く居住し、仏教寺院が建立された。

毛沢東と蒋介石の国共内戦も最大の激戦となったのは「平津戦役」だった

 

 

山海関をめぐる地政学上の戦闘だった。ちなみに錦州には平津戦役記念館があり、北京の軍事博物館へ行くと、日本人の大半が興味のない、この平津戦役に関して特大の展示コーナーがある。

 

 

鴨緑江にのぞむ丹東にある「抗美援朝戦争記念館」の展示も朝鮮戦争のことばかりか、平津戦役のことがでてくる。

 

 

 それゆえ、共産党の軍隊は、この要衝防衛に心血を注ぐのだ。

 1950年代の朝鮮戦争は鴨緑江から38度線の戦いで、中国の「義勇軍」をソ連空軍が制空権をめぐって中朝を支援した。

 

 

 1960年代には中ソ対立の激化があり、ダマンスキー島(珍宝島)とウスリー島をめぐっての軍事衝突があった。中国軍は大同、東寧、ハイラルなどを拠点化した。 

 この対ソ防衛重視という中国軍の戦略方針は、1973年まで変更がなかった。軍事力は旧態依然、もとの地点に張り付いたままだった。
 
軍の効率的編成替えに着手したのは、じつに2015年になってからで、同時に軍管区の重要度はかっての瀋陽軍区優先方針が劇的に変わって、(1)東(台湾)、(2)南(南シナ海)。(3)西(インド)についで四番目となったのだ。

 

 

 優先順位が下降すれば、装備も設備、人材も後回しにされるから、北部戦区が中央軍事委員会への不満が昂じさせるのは必然的な流れである。

 
 ▼黒竜江省は穀倉地帯にくわえてシベリア出稼ぎの拠点

 近年、こうした基礎的条件に加わってきたのが「経済ファクター」である。

 

 

 黒竜江省は穀倉地帯でもあるが、人民公社が改組された「農業会社」があって、「社員」と呼ばれる農業従事者が無数に田畑を耕し、この極寒の地に麦、米、コーリャン、蕎麦、一部にコメも栽培している。

 

 

そのうえ、黒竜江省の農民は、中国資本がおさえたシベリアの農地にも出稼ぎに行き、ロシアを神経質にさせている。
 
大慶では石油、チチハルなど全域で石炭が産出するうえ、ロシアとの国境では輸出特別加工区、くわえてロシアとの貿易の町スイフェンガは、ロシア人の買い付け部隊が大きな荷物をかかえて鉄道で運ぶ。

 

 

中露観貿易は650億ドル(2016年)、さらに重要なのは北部戦区の中に、天津、唐山、青島、大連という重大な港湾をカバーしていることだ。

 

 

 旧満州(東北三省)の人口密集地は大連、瀋陽、長春であり、いずれも北朝鮮に近い要衝の地に位置している。

 北部戦区司令は宋晋選(陸軍出身)。政治委員は氾騎駿(空軍出身)。宋は陸軍大学学長から北京軍管区司令。氾は第十五空挺団から空軍政治委員を歴任した。

 

 

 このような経済的環境の変化の中で、さらに北部戦区は師団、旅団、部隊の編成替えを行っており、これまで勇猛部隊とされた第十四集団、第三十九集団などが再編、他部隊への再編入の過程にある。
 
 そのうえで北部戦区の最大の関心事は、米軍の作成した「OPLAN 5029」(北朝鮮有事の際の軍事行動、作戦シナリオ)を睨みながらも、北朝鮮高層部の権力闘争の解析ならびに対応と、有事に予想される難民対策にある。

 

 

 増員はされておらず、国境警備の補完に人民武装警察が動員されているようである。
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