「南京事件」広めた本 著者の豪人記者は中国からカネ貰って執筆した…そんな本が「百人斬り」脚色、裁判をも影響 4/7
1938年に出版されたティンパリーの著書『戦争とは何か(WHAT WAR MEANS)』。
同書は旧日本兵による放火、強姦(ごうかん)、殺人といった数々の暴虐行為を記すが、伝聞も多く含まれる。
「4万近くの非武装の人間が南京城内や城門付近で殺され、うち約30パーセントは兵隊になったことのない人々だ」
「少なくとも中国中央部の戦闘だけで中国軍の死傷者は30万人に上り、ほぼ同数の民間人の死傷者が発生した」
これらはティンパリーが南京で自ら見聞きした内容ではなく、自身は当時、上海にいた。
執筆材料としたのは、南京にとどまっていた匿名の欧米人や南京安全区国際委員会の報告で、それらをまとめ、「編著」の形をとった。
後に分担執筆者の一人と判明した米国人、マイナー・ベイツは国民政府の「顧問」でもあった。
日本孤立狙う
日中戦争の発端となった盧溝橋事件(1937年7月)勃発後、中国・国民政府のトップ蒋介石は国際宣伝の強化を図った。
同年11月に設置された国際宣伝処は翌年2月に国民党中央宣伝部に移管されたが、実態は蒋の直属組織だった。宣伝の狙いは国際世論を味方につけ日本を孤立させること。
対外宣伝工作を取り仕切ったのは、米ミズーリ大でジャーナリズムを専攻後、米国の新聞社で記者として経験を積み、上海で英字紙の編集長を務めた経歴を持つ董顕光。蒋の英語教師を務めたこともあり、蒋の信頼が厚い人物だった。