池 東旭の賢者に備えあり ~強大国のはざまにある小国の選択 | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

池 東旭の賢者に備えあり ~強大国のはざまにある小国の選択
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ビジネス情報月刊誌「エルネオス」URL:http://www.elneos.co.jp/

11月号巻頭言より

──地政学的宿命

 強大国に囲まれた弱小国の運命は、周辺勢力のバランス・オブ・パワーに左右される。強大国の勢力が拮抗すれば小国も生き残れる。


だが、いったん均衡が崩れると小国はどちらに荷担するかの選択に直面する。「つかず離れず」は2股とされ双方から不信される。負け馬に賭ければ報復される。弱小国は常に風見鶏にならざるをえない。


弱小国が人畜無害の存在なら強大国も無視する。だが戦略的要衝とか資源が豊かであれば放っておかない。


併呑するか自国の勢力圏内に取り込もうとする。弱小国の地政学的宿命だ。

 東洋の古典は弱小国が生き残る方策を事大交隣(大に事=つか=え近隣と交わる)、合従連衡(小国の集団的自衛と強国の切り崩し)、遠交近攻(直接脅威となる隣国に対抗して遠国と連携)、自彊不息(自衛力の不断な強化)と列挙する。


だが合従連衡は脆い。遠交近攻は絶えず摩擦を生む。自彊不息は孤立無援になりがちだ。事大交隣が次善の策だが選択を誤ると致命的だ。

──事大交隣と合従連衡

 大陸と海洋の交差点上にある韓半島は古来大陸の覇者交代の風圧をモロにかぶった。


7世紀、百済は倭国と連合した。新羅は唐と同盟して百済を下し、韓半島を統一した。


唐が衰微すると新羅に代わり高麗が台頭した。元の侵攻を受けた高麗王朝は元皇室と婚姻を結び延命した。


元が衰退して明朝が出現した。明に加担した李成桂は高麗を打倒して朝鮮王朝を創建、明の冊封国になった。


明は豊臣秀吉の朝鮮侵略の際には来援した。40年後、満州で興隆した清は明と対決する一方朝鮮に服従を要求した


それを拒否すると清軍は長駆ソウルに進撃した。国王は降伏して臣従を誓った。

 19世紀末、朝鮮王朝は老大清国と新興日本の間を右往左往した。1876年開国後政変が続き親清、親日、親露政権が目まぐるしく交替した。


1894年に日清戦争で親日派が執権したが、国王はロシア公使館に逃げ込み親露派の天下になった


10年後、日露戦争で韓国は中立を宣言した。だが軍事力も列強の後ろ楯もない中立宣言は無力だ。


戦後、韓国はオランダ・ハーグの万国平和会議に密使を送って独立保全を訴えたが相手にされなかった。迷走の末、韓国は日本に併合された。

──去就に迷う韓国

 太平洋戦争後、半島南北は米ソに分割され、1948年に南北で2つの政権が樹立され、海洋、大陸陣営に組み込まれた。


1949年に中華人民共和国が成立、翌50年の朝鮮戦争で中国軍が介入、3年後に休戦となったが、南北の睨み合いは今も続いている。

 韓国は米日の経済支援でめざましく発展した。1992年、仇敵中国と国交を樹立。韓中経済交流は相乗効果をあげ、今、中国は韓国の最大交易国で両国は密着している。

 崛起(くっき)中華の中国は、米国と対等な強国になり大陸の覇者として睥睨(へいげい)する。


海洋勢力の盟主アメリカは、中東で戦略失敗を繰り返し、同盟国はオバマ政権の指導力に疑念を深めている。


中国は大洋進出を目論み、米国に太平洋両分を持ちかけた。だが米国は中国の膨張を阻止したい。中国は日韓を反目離間させ日米韓安保体制の分裂、無力化を狙う。

 韓国は去就に迷っている。両陣営のバランサー(均衡・調停役)を目指したが、それには必要(中立)かつ十分条件(軍事力)を欠く。


米中と等距離を保ち、双方の力比べの帰趨を見極めるまで時間を稼いでいる。


それが中国の反日路線に同調して反日を呼号する一方、米国が催促するTHAAD(高高度ミサイル防御体系)導入をためらう理由だ。


THAADは中国が対中脅威として強く反対している。北朝鮮も硬軟自在の駆け引きで南を揺さぶっている。


米・中対立のはざまで綱渡りする韓国の真下は地雷原だ。一歩踏み外せば火の海になる。韓半島が東アジアの火薬庫であるのは今も昔も変わらない。

(国際ジャーナリスト=ソウル在住)